ケアマネジャーのゆくえ(3)
厚生労働省老健局は8月29日、「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」(田中滋・座長 以下、検討会)の第5回を開きました。
当日は川又竹男・振興課長から、これまでの構成員の「プレゼンテーション」や意見をまとめた「課題の整理(たたき台)」(資料1)の説明が行われ、「第1回―第4回検討会における主な意見」(資料2)が、「便宜上の整理であり、正式な議事録ではない」とのことわりつきで提出されました。また、山際淳構成員(民間介護事業推進委員会代表委員)が提出資料をもとに意見を発表しました。
これまで、「ケアマネジャーのゆくえ」(6月6日更新)、「ケアマネジャーのゆくえ(2)」(7月11日更新)と報告してきましたが、検討会は年内に意見をまとめる予定で、第6回は10月10日とされています。
ケアマネジメント、ケアマネジャーの「調査」
「課題の整理(たたき台)」は、「I.介護保険におけるケアマネジメント」、「II.ケアマネジメントの現状と評価」、「III.保険者の役割」、「IV.個別検討事項」(表参照)の4つにわかれています。
「I.介護保険におけるケアマネジメント」には、「介護保険におけるケアマネジメントに求められる要素は何か」、「介護支援専門員の果たすべき役割と業務の範囲についてどう考えるか」、「介護支援専門員としての職能に求められる知識と技能の内容は何か」という基本的な問いかけが並びます。
ケアマネジメントとケアマネジャーの定義を最初から考え直そうという提案と考えられますが、「II.ケアマネジメントの現状と評価」では「ケアプランの実態等を調査・分析し、現状において不足している知識や技能を明らかにすべきではないか」とあります。
厚生労働省老健局は「2012年度に行う老人保健健康増進等事業」(以下、2012年度研究補助事業)を公表していますが、「介護支援専門員の資質向上とケアマネジメントのあり方に関する調査・研究事業」として、下記の7事業に研究補助金が出されることになっています。
(1) | 介護支援専門員の資質向上とケアマネジメントのあり方に関する調査・研究事業」(学校法人桜美林学園) |
(2) | ケアプランの質的向上を支援する客観的評価指標の開発に関する調査研究事業(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団) |
(3) | 施設サービスにおけるケアマネジメントと介護支援専門員が担う役割に関する調査研究事業(一般社団法人日本介護支援専門員協会) |
(4) | 小規模多機能型居宅介護・認知症対応型共同生活介護のケアマネジメントに関する調査研究事業(一般社団法人日本介護支援専門員協会) |
(5) | 介護支援専門員のスーパービジョン実践としての実習型研修の普及に向けての調査研究(一般社団法人日本ケアマネジメント学会) |
(6) | ケアマネジメントの質的評価のあり方に関する調査研究事業(株式会社日本総合研究所) |
(7) | ケアマネジメント詳細検討結果に基づく新様式(案)等の活用に関する実証事業(株式会社日本総合研究所) |
2012年度研究補助事業の報告がまとまるのは2013年3月までなので、2012年12月までにまとめを出す予定の検討会とタイムラグがありますが、検討会に出ている「ケアプランの実態等」の調査・分析はいつ実施されるのでしょうか。
市区町村の「ケアプラン点検」
「課題の整理(たたき台)」の「III.保険者の役割」では、「保険者機能の強化」が示されています。「IV.個別検討事項」をみると、「保険者」が登場するのは「ケアプラン点検」です。「保険者によるケアプラン点検について『地域ケア会議』の機能を活用するなど、多職種協働の視点を導入すべきではないか」とあります。
“地域ケア会議”は、厚生労働省老健局「2012年度介護報酬改定について」の介護報酬改定関連通知にある「18.地域包括支援センターの設置運営について」に新設された「多職種協働による地域包括支援ネットワークの構築」に登場します。
“地域包括支援ネットワークの構築”をめざし、「例えば、その構築のための一つの手法として、『行政職員、センター職員、介護サービス事業者、医療関係者、民生委員等から構成される会議体』(以下この通知において「地域ケア会議」という。)を、センター(または市町村)が主催し、設置・運営することが考えられる」としています。
“地域ケア会議”の目的は、「個別ケースの支援内容の検討」を通じて(1)高齢者の実態把握や課題解決のための地域包括支援ネットワークの構築、(2)地域の介護支援専門員の、法の理念に基づいた高齢者の自立支援に資するケアマネジメントの支援、(3)個別ケースの課題分析等を行うことによる地域課題の把握などで、「医療と介護の連携に基づく地域包括ケアの構築のためには、在宅医療の関係者との緊密な連携を図ることが望ましい」とされています。
抽象的な表現ばかりですが、「個別ケースの支援内容の検討」を具体的に言うと、「ケアプラン点検」になるのでしょうか。
通知では“地域ケア会議”は「例えば」として示されているだけですが、検討会の構成員からは「地域ケア会議は地域包括支援センターに法定化すべき」という意見も出ています。また、“地域ケア会議”は専門職で構成されるもので、利用者や家族は「サービス担当者会議」に参加しているから、“地域ケア会議”に参加しなくても問題はないとの発言もありました。通知には「個人情報の保護の観点にも十分留意しつつ」と書いてありますが、“地域ケア会議”や「ケアプラン点検」における「個人情報の保護」とはどのようなものなのか気になります。
なお、2012年度研究補助事業では、「ケアマネジメントの実態調査をふまえた保険者の機能強化に関する調査研究事業」として、(1)生活行為向上の支援における介護支援専門員と作業療法士との連携効果の検証事業(一般社団法人日本作業療法士協会)、(2)ケアマネジメントの実態調査をふまえた保険者の機能強化に関する調査研究事業(株式会社日本総合研究所)の2事業に研究補助金を出すことになっています。
「自立支援型のケアマネジメント」とは?
検討会の構成員からは、「自立支援型のケアマネジメント」について、「概念が広い」、「内容について確認すべき」、「考え方が混乱している」といった指摘があり、「施設における自立支援型ケアマネジメントは在宅に戻ってもらうこと」という発言もありました。
「課題の整理(たたき台)」には、「自立支援の視点」として、「介護予防の視点」、「リハビリの視点」、「治療優先により改善が可能なケース」という言葉が並んでいます。年内のまとめに向けて、検討会が10月以降、「自立支援型」の具体的な定義を示すことに注目したいと思います。
(1)制度・システム等 | |
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地域包括支援センター | |
「総合相談」の機能強化 | |
「地域ケア会議」の制度的位置付け、多職種協働拠点としての機能強化 | |
地域の介護支援専門員の指導・支援機能 | |
「介護予防支援」(予防ケアプラン)のあり方 | |
居宅介護支援事業所 | |
保険者(市町村)の関与を強める | |
1人事業所など小規模事業所のあり方の検討 | |
事業所の責務と介護支援専門員の専門性の関係に留意 | |
位置付けの考え方 | |
施設の介護支援専門員 | |
ケアカンファレンス等の調整役としての位置付け | |
相談援助業務との関係の整理 | |
地域との連続性を確保するケアマネジメントのあり方の検討 | |
サービス事業者 | |
個別サービス計画に基づくサービス実施の確保 | |
居宅介護支援事業所との関係(独立性)のあり方 | |
利用者等 | |
セルフケアプランの活用 | |
利用者負担の導入 | |
基準・介護報酬 | |
介護報酬上の評価のあり方等 | |
(2)運用・実践等 | |
多職種協働・ケアカンファレンス | |
サービス担当者会議の充実 | |
地域ケア会議など多職種協働による第三者の視点からのケアプランチェック | |
多職種協働のため共通のアセスメント基盤 | |
医療職(在宅医療、訪問看護、リハビリ)との連携の強化 | |
インフォーマルサービス | |
地域資源を積極的に活用する方策の検討 | |
退院・退所時等の調整 | |
リハビリテーションの継続などサービス調整の仕組みやネットワークづくり | |
ケアプラン様式等 | |
アセスメントから課題抽出、ケアプラン作成に至る思考プロセスの明確化 | |
参考プラン(例)などの情報発信 | |
ケアプラン点検 | |
「地域ケア会議」機能を活用するなど多職種協働の視点を導入 | |
(3)資質・能力等 | |
実務研修受講試験 | |
国家資格保持者に限定するなど受講資格要件の見直し | |
受講試験内容、科目免除の取り扱いの見直し | |
法定研修 | |
一定期間の「現場実習(いわゆるインターン)」の義務付け | |
「認知症」「リハビリテーション」の充実など必要な見直し | |
更新研修内容の見直し | |
ОJT・スーパービジョン | |
事業所内の環境づくり | |
介護支援専門員の能力を評価する仕組み | |
地域における実践的な場での学びのできるコミュニティづくり | |
主任介護支援専門員 | |
位置付けと役割の明確化 | |
「更新制」の導入と活動実績の評価 | |
資格のあり方 | |
国家資格化 |