ページの先頭です。

どうなる? 介護保険

認知症の人の「医療計画」

 「“病院死”から“在宅死”への提言」(8月15日更新)で、厚生労働省が「地域における医療と介護の連携の仕組みの道筋を早急に付けることが求められる」(提言型政策仕分け)として、“病院死”(医療機関完結型医療)から“在宅死”(地域完結型医療・介護)にシフトするため、厚生労働省内に「連携推進室のようなプロジェクトチーム」を設置予定であることを報告しました。
 一方、「認知症は『2カ月で退院』 国、都道府県に通知へ」(8月8日共同通信)というニュースがありました。「認知症患者の長期入院を解消するため『新たな入院患者のうち半数は2カ月以内に退院する』ことを目標に医療態勢を整備するよう、厚生労働省が都道府県に通知することが8日分かった。都道府県は通知に沿って2013年度からの医療計画を策定する」というものです。
 厚生労働省ホームページには「医療計画」(2013~2017年度)のコーナーがあり、医政局長通知(3月30日)のほか、社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課「精神疾患について」(資料A-3)が掲載されています。

続きを読む

認知症患者の入院期間は調整中
 「医療計画」には「2カ月以内」という文章がないため、社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課に問いあわせたところ、「目標値については現在、調整中だが、8月中には公表する予定」とのことでした。
 また、「2ヵ月で退院」という報道は、厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチーム(以下、プロジェクトチーム)報告「今後の認知症施策の方向性について」(6月18日公表)にある「新たに精神科病院に入院した認知症の人(認知症治療病棟に入院した患者)のうち、50%が退院できるまでの期間を2020年度までに2か月にする(現在は6か月)ことを目標とする」と混同したためだろうという説明がありました。

なぜ、新規入院の半数が「2カ月」になるのか?
 プロジェクトチーム報告は「認知症ケアのゆくえ」(6月27日更新)ですでにお知らせしていますが、「精神疾患に関する医療計画」はプロジェクトチームの「内容を踏まえて作成する」(資料A-3)ことになっています。なお、来年度の「医療計画」から、精神疾患に「血管性及び詳細不明の認知症」、「アルツハイマー病」も含まれる予定で、2008年段階で7万5400人が入院(精神病床51.6%、老人病床16.5%、療養型病床群21.9%)しているそうです。
 「2カ月」という数字は、新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム(以下、検討チーム)「第2ラウンドとりまとめ」(2011年11月29日、社会・援護局障害保健福祉部)に登場します。
 認知症の人の精神病床からの「退院に着目した目標値」として、「当面は、現状の6カ月よりも短くすることを目標としつつ、達成時期までの目標値は、2カ月にすべきである」(「認知症と精神科医療」報告書より)とあります。
 その理由として挙げられているのは、「精神病床全体(認知症以外の患者も含む。)での、1カ月の新規入院患者のうち、50%の患者が退院するまでの期間は、約1.5カ月となっているが、認知症治療病棟の入院患者についてみると、50%の患者が退院するまでの期間は、約6カ月となっている」が、「『居住先・支援が整えば、退院可能性がある』が約6割との調査結果」があるというものです。

精神病床に入院している理由
 ただし、検討チームは認知症の人の退院について「多くの解決しなければならない課題があることも事実である」とも報告しています。
 検討チームの追加調査(2010年9月実施)では、「約9割の患者が、何らかの身体疾患を合併」しています。また、入院の理由は「精神症状が著明となり、在宅医療又は介護施設等での対応が困難となったため」との回答が約7割を占め、「身体疾患を合併している患者が多いことから、精神症状等による抵抗によって、服薬や身体的管理などの医療ケアの継続も困難になっている状況がうかがわれる」と分析しています。また、「居住先・支援が整った場合の退院可能性」は37%で、「約6割」とした先行調査より低い結果になったと報告しています。
 そして、「退院できると仮定した時、適切と考えられる『生活・療養の場』」で多かったのは、特別養護老人ホーム65%、老人保健施設47%、認知症高齢者グループホーム13%の順になっています。
 なお、家族や友人などから得られる支援の程度については、「支援を得られない」24%、「助言・精神的な支援」51%で、「ADLやIADLに関する支援を受けられる患者は約2割にとどまっている」としています。

「医療計画」と“介護保険計画”の連携は?
 認知症の人が在宅や施設で暮らすことが困難だから入院することは明らかなのに、「認知症患者の『社会的入院』が再び繰り返されないようにしなければならない」から入院期間を短縮するというのは、療養病床の転換廃止の議論と似ています。
 2009年に公表された「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会報告書」(社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課)には、「精神病床(認知症病棟等)や介護保険施設等の入院・入所機能のあり方とその必要量等や、介護保険施設等の生活の場の更なる確保と介護保険サービスの機能の充実について検討を行い、適切な目標値を定める」とあります。
 認知症の人の入院期間を短縮し地域での暮らしに移行してもらうには、「介護保険事業計画」(市区町村)や「介護保険支援計画」(都道府県)で必要な受け皿(施設やサービス)を確保したうえで、新規入院期間の「適切な目標値」を提案すべきではないでしょうか。


ページトップへ
プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
メニュー
バックナンバー

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books