「利用者」の数え方
厚生労働省大臣官房統計情報部は7月26日、「2011年度介護給付費実態調査の概況」(2011年5月~2012年4月審査分 以下、実態調査)を公表しました。
マスコミでは「介護利用、最多517万人 03年度の1.4倍」(共同通信)、「介護サービス利用者、昨年度最高に 517万人」(日経新聞)、「23年度、前年度を24万5600人上回る」(産経新聞)などの報道がありました。
なお、今年4月の実態調査月報(2012年5月審査分)の公表は10月に予定され、介護報酬改定の全国的な影響をチェックするには、あと3カ月ほど待たなければならないようです(厚生労働省「統計結果の公表情報」より)。
「1度でも利用」と「年間利用」の差は205万人
実態調査では、2011年度に介護保険サービスを一度でも利用した「年間実受給者」は517万3,800人、1年間を通じて利用した「年間継続受給者」は312万3,400人と報告しています。「年間実受給者」と「年間継続受給者」の差は205万400人になります。
実態調査が公表されている2001年度以降の人数は表1のようになり、利用者のうち年間を通じてサービスを利用しているのは約6割になります。病気や障害のため「介護の手間」がかかると判定された人たちですから、医療機関などに入院してサービスを中止したケースや、死亡例もあると思いますが、介護保険関係のデータでは今のところ、具体的理由を確認することはできません。
2006年度は10万人の利用者減
また、介護保険がスタートした2000年度以降、高齢者人口は増え続けていますが、2006年度の「年間実受給者」は前年度に比べて10万人以上減っています。
これは、2005年の介護保険法改正と2006年度の第3期介護報酬改定により、介護認定が要支援と要介護に分かれ、サービスも介護予防(予防給付)と介護(介護給付)に分離され、また施設サービスなどで居住費・食費の自己負担化が実施された影響と考えられます。
「『認定者』と『利用者』」(7月4日更新)では、「要介護認定、初の500万人突破」と報道されたけれど、認定を受けてもサービスを利用していない人が約90万人いることを報告しました。
実態調査もまた「利用者500万人」と報道されていますが、通年利用していない人が約200万人になり、また在宅サービスの利用限度額(区分支給限度基準額)に対する平均利用率は46.8%(要支援1)~62.9%(要介護5)で、利用者も利用率も“増加の一途”というわけではないことに留意したいと思います。
年度 | 年間 実受給者 | 前年比 | 年間継続 受給者 | 前年比 | 年間継続 受給者 の割合 |
---|---|---|---|---|---|
2001 | 287万3,400人 | - | - | - | - |
2002 | 335万1,500人 | +47万8,100人 | 176万6,300人 | 52.70% | |
2003 | 370万6,400人 | +35万4,900人 | 202万0,100人 | +25万3,800人 | 54.50% |
2004 | 413万6,300人 | +42万9,900人 | 216万3,000人 | +14万2,900人 | 52.30% |
2005 | 439万8,400人 | +26万2,100人 | 231万9,100人 | +15万6,100人 | 52.70% |
2006 | 429万5,600人 | -10万2,800人 | 250万6,000人 | +18万6,900人 | 58.30% |
2007 | 437万0,400人 | +7万4,800人 | 260万6,700人 | +10万0,700人 | 59.60% |
2008 | 451万6,400人 | +14万6,000人 | 274万5,500人 | +13万8,800人 | 60.80% |
2009 | 468万7,100人 | +17万0,700人 | 287万2,300人 | +12万6,800人 | 61.30% |
2010 | 492万8,200人 | +24万1,100人 | 296万5,400人 | +9万3,100人 | 60.20% |
2011 | 517万3,800人 | +24万5,600人 | 312万3,400人 | +15万8,000人 | 60.40% |
表2 在宅サービス利用者の利用限度額に対する平均利用率
要支援1 | 46.8% |
要支援2 | 40.4% |
要介護1 | 44.8% |
要介護2 | 52.2% |
要介護3 | 56.5% |
要介護4 | 60.3% |
要介護5 | 62.9% |