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どうなる? 介護保険

認知症ケアのゆくえ

 6月22日、社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)の第91回が開かれ、厚生労働省老健局(事務局)から(1)「介護従事者処遇状況等調査」(2012年10月実施予定)の調査内容、(2)「今後の認知症施策の方向性」についての報告がおこなわれました。
 (1)は分科会の下に設置された介護事業経営調査委員会(旧・調査実施委員会)の第1回で検討された調査案(2012年度介護報酬改定で新設された介護職員処遇改善加算の取得状況など)の報告になりますから、「第5期介護報酬の賃上げ効果」(5月30日更新)を参照してください。
 (2)は2011年11月29日に厚生労働省の医政局、社会・援護局、障害保健福祉部、老健局、保険局が参加した認知症施策検討プロジェクトチーム(主査:藤田一枝・厚生労働省大臣政務官、事務局:厚生労働省老健局高齢者支援課認知症・虐待防止対策推進室)がまとめた『今後の認知症施策の方向性について』(以下、報告書)の報告で、「新たな『ケアの流れ』」と「認知症の人の精神科病院への長期入院の解消」がメイン・テーマになっています。

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認知症は「介護が必要になる原因」第2位
 認知症の高齢者は、2010年の200万人から2020年には325万人に増えると推計されています(厚生労働省『認知症』より)。ただし、病気としての認知症疾患(血管性及び詳細不明の認知症及びアルツハイマー病)の患者は2008年時点で38万人と報告されています(2011年10月21日、厚生労働省保険局「中央社会保険医療協議会と介護給付費分科会との打ち合わせ会」資料より)。
 いずれにしても認知症は、介護が必要になる原因の第4位(2004年)から第2位(2007年以降)に上昇しています(厚生労働省大臣統計情報部「国民生活基礎調査の概況」より)。
 介護保険制度が認知症に特化しているサービスは認知症デイサービス、認知症高齢者グループホーム、小規模多機能型居宅介護の3サービスで、施設サービスなどでは認知症専門ケア加算、認知症短期集中リハビリテーション加算、若年性認知症利用者受入加算、認知症行動・心理症状緊急対応加算(2012年度から新設)など加算サービスで対応しています。

認知症の人への“適切なケア”の提供 報告書では、これまでの「自宅→グループホームあるいは一般病院・精神科病院」という“不適切な「ケアの流れ」”を“認知症ケアパス(状態に応じた適切なサービス提供の流れ)”に変えるとしています。
 “認知症ケアパス”を実現するには、認知症ケアの基本を従来の「事後的な対応」から「早期・事前的な対応」にしなければならないそうです。具体的な対応策としては下記のような項目が挙げられています。

(1)認知症の状態に応じた適切なサービスの提供
・標準的な認知症ケアパス(認知症の進行状況にあわせた医療・介護サービスの利用)の作成を進めるため、調査・研究を行う
(2)早期診断・早期対応
・かかりつけ医の認知症対応力の向上
・「認知症初期集中支援チーム」の設置(研究モデル事業に着手)
(3)アセスメントのための簡便なツールの検討・普及
(4)早期診断等を担う「身近型認知症疾患医療センター」の整備
(5)認知症の人の適切なケアプラン作成のための体制の整備

「精神科病院への入院」は2カ月まで?
 また、認知症の人で精神科病院に入院しているのは5万2千人といわれますが、「精神科病院への長期入院」の課題と解決策(重点施策)として、「新たに精神科病院に入院した認知症の人のうち50%が退院できるまでの期間を2020年までに2カ月に短縮する」という具体的目標とともに、次の5項目が示されています。

(1)「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定
(2)一般病院での認知症の人の手術、処置等の実施の確保
(3)一般病院での認知症対応力の向上
(4)精神科病院に入院が必要な状態像の明確化
(5)精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援

「住み慣れた地域のよい環境」を支える介護サービス
 介護保険サービスの対応としては、次の項目が挙がっています。

(1)医療・介護サービスの円滑な連携と認知症施策の推進
(2)認知症にふさわしい介護サービス(地域密着型サービス)の整備
(3)地域の認知症ケアの拠点としての「グループホーム」の活用の推進
(4)行動・心理症状等が原因で在宅生活が困難となった場合の介護保険施設等での対応
(5)介護保険施設等での認知症対応力の向上

「住み慣れた地域」の活動を支援
 「地域での日常生活・家族の支援の強化」として、7項目が挙げられています。

(1)認知症に関する介護予防の推進
(2)「認知症地域支援推進員」の設置の推進
(3)地域で認知症の人を支える互助組織等の活動への支援
(4)「認知症サポーターキャラバン」の継続的な実施
(5)高齢者の虐待防止などの権利擁護の取組の推進
(6)市民後見人の育成と活動支援
(7)家族に対する支援

若年性認知症の人への支援
 現在、8万3千人といわれる若年性認知症の人については「施策の強化」として次の4項目が示されています。

(1)若年性認知症支援のハンドブックの作成
(2)若年性認知症の人の居場所づくり
(3)若年性認知症の人のニーズ把握等の取組の推進
(4)若年性認知症の人の就労等の支援

医療・介護の人材育成
 認知症の人への医療・介護の一体的な生活支援として、次の4項目が挙がっています。

(1)「認知症ライフサポートモデル」の策定
(2)認知症ケアに携わる医療、介護従事者に対する研修の充実
(3)介護従事者への研修の実施
(4)医療従事者への研修の実施

2013年度から5年計画で予算化
 厚生労働省の5つの局(医政局、社会・援護局、障害保健福祉部、老健局、保険局)が合同してまとめているため、「具体的な対応施策」も多岐にわたりますが、この報告書をもとに2013年度予算要求で5年間の具体的な計画を進めることが予定されています。 認知症に限らず病気や障害がある人への支援は横断的であることが望まれますが、“不適切な「ケアの流れ」”を担ってきたと断定された介護の現場から、報告書の徹底的な検証と評価が必要ではないでしょうか。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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