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どうなる? 介護保険

第5期介護報酬の賃上げ効果

 5月29日、社会保障審議会介護給付費分科会(大森彌・分科会長 事務局・厚生労働省老健局 以下、分科会)の下に設置された介護事業経営調査委員会(以下、委員会)の第1回が開かれました。
 委員会は第6期(2015~2017年度)介護報酬改定の議論の資料とするアンケート調査を行うのが目的で、2009年に分科会が設置した調査実施委員会(田中滋・委員長)の名称を変更したものです。名前は新しくなりましたが、構成委員、委員長の6人は同じ顔ぶれで継続されることになりました。なお、委員会の検討内容については、分科会にそのつど報告することが予定されています。

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介護報酬のアンケート調査は3種類
 過去の調査実施委員会は(1)介護事業実態調査等と(2)介護従事者処遇状況調査のふたつのアンケート調査の内容や方法を検討するのが目的でしたが、委員会では新たに(3)介護事業経営分析等調査が追加されました。
 (1)は介護保険のサービス提供事業所を対象に実施されている介護事業経営概況調査(2001年、2004年2007年2010年に実施)と介護事業経営実態調査(2002年2005年2008年2011年に実施)のことで、3年間になっている介護保険の会計期間の2年目に「概況調査」、3年目に「実態調査」が行われていることになります。
 (2)は第4期(2009~2011年度)の介護報酬プラス3%改定、介護職員処遇改善交付金が介護職員の処遇改善にどのような影響を与えたのかを調べる調査で、2009年(第3回調査実施委員会資料)と2010年(第5回調査実施委員会資料)にアンケート調査が行われています。
 (3)は厚生労働省から例として「事業所規模別の経営状況の分析」が挙げられ、第1回委員会ではどのような調査項目が必要なのか委員から自由意見が出され、具体的な内容は今後、まとめられる模様です。

今秋、実施予定の「処遇改善」アンケート
 委員会では「2012年度介護職員処遇状況調査の実施について(案)」(資料1-2)が出され、厚生労働省から今年10月に、第5期(2012~2014年度)介護報酬プラス1.2%改定、介護職員処遇改善加算の新設が「介護従事者」にどのような影響を与えているのかアンケートを実施して、2013年3月に分科会に報告予定であることが説明されました。
 アンケートの対象になるのは、居宅介護支援、在宅2サービス、地域密着型1サービス、施設3サービスで、これらの7サービスで「介護従事者」の約8割(79%)を占めるからだと説明されています。7サービスで全国に約12万事業所がありますが、さらに対象となる事業所が抽出され、約8,800事業所にアンケートが行われることになります(表1参照)。

「介護従事者」の給与は下がったところもある?
 「2012年度介護職員処遇状況調査」ではすべてのサービス提供事業所に共通アンケート、サービス別アンケートを実施することが予定されています。
 アンケート用紙(調査票)の問1「給与等の状況について」では、回答項目は(1)給与等を引き上げた、(2)2011年度の給与水準を維持しているが、1年以内に引き上げる予定、(3)2011年度の給与水準を維持しており、今後引き上げる予定なし、(4)その他、と4つの選択肢があります。
 委員会では利用者の1割負担が増えることを避けるため処遇改善加算を申請しない事業所がある、地域区分の変更で介護報酬が下がり賃金を引き下げた事業所もありえるので、選択肢に「賃金を引き下げた」という項目を設定したほうがいいという意見が出されました。

第5期改定に賃金引き上げ効果はあるのか?
 これまで分科会では「介護従事者」の賃金について、第4期介護報酬の3%引き上げで平均8,930円、介護職員処遇改善交付金により平均15,000円の賃金の引き上げがあったと報告されています(第74回資料1「介護人材の確保と処遇の改善策について」より)。
 しかし、第5期の介護報酬は1.2%のプラス改定ですが、2012年度から税金が投入されていた介護職員処遇改善交付金の分(介護報酬の約2%に相当)が介護職員処遇改善加算として介護報酬に組み込まれたので、実質的にはマイナス0.8%改定とも言われています。
 介護職員処遇改善加算は新設ですが、税金(介護職員処遇改善交付金)が介護報酬に変わっただけなので、そこに賃金引き上げ効果があると思えません。また、介護職員処遇改善加算は「例外的かつ経過的な取り扱いとして」(第88回資料1-2「介護報酬改定の概要」より)第5期3年間に限定されている不安定なものです。
 調査結果が明らかになるのは来年3月とのことですが、今年4月以降、みなさんの賃金に変化はあったでしょうか?

表1 2012年度介護職員処遇状況調査の対象事業所数
事業所数抽出率対象事業所数
居宅介護支援33,9155%1,696
ホームヘルプ・サービス28,4755%1,424
デイサービス31,0905%1,555
認知症高齢者グループホーム11,23610%1,124
特別養護老人ホーム6,37425%1,594
老人保健施設3,81825%955
介護療養病床1,77925%445
合計116,6878,790
※事業所数は介護給付費実態調査(2012年2月審査分)の請求事業所数

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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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