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どうなる? 介護保険

今後3年間のサービス動向

 介護保険制度の運営に責任を持つのは保険者(市区町村)で、高齢者の実態調査などを行い、サービス需要などを見込んだ3年1期の介護保険事業計画(以下、事業計画)を作り、65歳以上の第1号介護保険料を計算して市区町村議会の承認を得ます。
 今年度は第5期(2012~2014年度)のスタートになるため、厚生労働省老健局は「第5期計画期間における介護保険の第1号保険料について」(3月30日公表)に続いて5月1日、「第5期介護保険事業計画の全国集計」(以下、全国集計)を公表しました。

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在宅、施設は利用者1割増
 表1にあるように各サービス利用者(1日あたり)の全国集計(確定値)では、今後3年間に在宅サービスが34万人(11%)、施設サービスが10万人(11%)増えることを示しています。厚生労働省資料では「居住系サービス」と分類されていますが、有料老人ホームなどで提供される特定施設(特定施設入居者生活介護)は5万人(31%)増える予定です。
 市区町村がサービス提供事業者を指定する地域密着型サービスでは、小規模多機能型居宅介護が3万人(50%)、グループホームが4万人(25%)増えます。また、新設された定期巡回・随時対応型サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)は2万人、複合型サービスは1万人、あわせて3万人の利用者が見込まれています。

「地域包括ケア」サービスの利用者は3万人
 介護保険法改正、介護報酬改定では「地域包括ケアシステム」(中学校区で医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスが切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される体制)が掲げられ、その実現のための新サービスとして地域密着型サービスに定期巡回・随時対応型サービスと複合型サービスが新設されました。どちらも(1)市区町村に事業者指定権限がある、(2)訪問看護がセットになる、という特徴があります。
 厚生労働省は全国集計のポイントとして「2014年度には、定期巡回・随時対応型サービス、複合型サービスともに45都道府県で介護サービス量が見込まれている」とうたっています。しかし、表2に「新サービスの実施見込みについて〈確定値〉」をまとめましたが、45都道府県のうち定期巡回・随時対応型サービスを実施するのは329保険者(2014年度時点、全保険者の21%)、複合型サービスを実施するのは233保険者(同、全保険者の15%)です。都道府県別にみると、大都市部の5都府県(東京都、大阪府、埼玉県、神奈川県、茨城県)で、定期巡回・随時対応サービスは123保険者、複合型サービスは86保険者になり、それぞれ実施予定保険者の37%を占めています。
 利用者の見込み数では、定期巡回・随時対応型サービスが1万7,000人(全利用者503万人/日の0.34%)、複合型サービスが8,000人(同0.16%)で、ふたつの新サービスをあわせても2万5,000人(同0.50%)です。

「将来推計」では地域密着型と訪問看護が増える
 全国集計には、事業計画の全国集計(確定値)だけでなく、表3のように2015年度、2025年度の推計値も報告しています。これは消費税の引き上げなどを盛り込んだ「社会保障・税一体改革」で示された「社会保障に係る費用の将来推計の改定について」(2012年3月)にもとづく「将来推計」です。
 表3にあるように、定期巡回・随時対応サービスは2015年度に1万人の利用者が10年後の2025年度には15万人と15倍に、小規模多機能型居宅介護は10万人が40万人と4倍になるとが推計されています。また、グループホームも20万人が37万人と1.9倍になるとしています。いずれも保険者である市区町村が指定する地域密着型サービスですから、まず保険者である市区町村に推計を問うべきではないかと思います。
 なお、在宅サービスでは訪問看護が37万人から51万人と1.4倍と推計されていますが、もっとも利用者が多いホームヘルプ・サービス(訪問介護)、デイサービス(通所介護)、福祉用具レンタルの推計値は示されていません。

負担増と「社会保障改革」
 「将来推計」では介護保険給付費(介護報酬から利用者の1割負担を引いた9割分)について、2015年度は10.5兆円、2025年度は19.8兆円と数字を出しています。2012年度が8.4兆円ですから、3年後には25%増、13年後には136%増という数字です。また、約7000万人が払っている介護保険料については、第1号が2012年度を月額5,000円(全国平均基準月額4,972円)として2025年度に月額6,800~8,200円程度(36~44%増)、第2号が2012年度を月額2,300円として2025年度は月額3,300~3,900円程度(64~70%増)と推計しています。
 3月30日に閣議決定された「社会保障改革工程表」では、介護保険制度について、(1)地域包括ケア創設(在宅サービス・居住系サービスの強化、介護予防・重度化予防、医療と介護の連携の強化、認知症対応の推進)、(2)介護保険料低所得者軽減、介護納付金の総報酬割導入の検討等、(3)軽度者に対する給付の重点化をあげています。現状を検証しながら、「社会保障改革」をチェックしていく必要があるのではないでしょうか。


表1 第5期の介護保険サービス利用者数
サービス見込み量(確定値)2011年度2014年度増加率
在宅サービス314万人/日348万人/日11%増
訪問介護130万人/日148万人/日14%増
通所介護205万人/日234万人/日14%増
ショートステイ38万人/日43万人/日13%増
訪問看護30万人/日34万人/日13%増
(地域密着型サービス)
小規模多機能6万人/日9万人/日50%増
定期巡回・随時対応-2万人/日-
複合型-1万人/日-
居住系サービス32万人/日41万人/日28%増
特定施設16万人/日21万人/日31%増
グループホーム16万人/日20万人/日25%増
施設サービス89万人/日99万人/日11%増
特別養護老人ホーム47万人/日56万人/日19%増
老人保健施設42万人/日43万人/日2%増
介護療養病床
厚生労働省老健局「第5期介護保険事業計画の全国集計」(2012.05.01公表)「第5期介護保険事業計画におけるサービス量の見込み等について〈確定値〉」より


表2 第5期の新サービス実施保険者数と利用者数
 2012年度2013年度2014年度
 割合
定期巡回・随時対応サービス189保険者283保険者329保険者21.00%
0.6万人/日1.2万人/日1.7万人/日0.34%
複合型サービス109保険者185保険者233保険者15.00%
0.2万人/日0.5万人/日0.8万人/日0.16%
厚生労働省老健局「第5期介護保険事業計画の全国集計」(2012.05.01公表)「新サービスの実施見込みについて〈確定値〉」より
割合は1,580保険者、利用者503万人/日(暫定集計値)で計算


表3 「社会保障に係る費用の将来推計」でみる利用者数
将来推計(改革シナリオ)2015年度推計増加率2025年度推計増加率
在宅サービス361万人/日15%増463万人/日47%増
訪問介護----
通所介護----
ショートステイ----
訪問看護37万人/日23%増51万人/日70%増
地域密着型サービス
小規模多機能10万人/日67%増40万人/日567%増
定期巡回・随時対応1万人/日-15万人/日-
複合型----
居住系サービス38万人/日19%増62万人/日94%増
特定施設18万人/日13%増24万人/日50%増
グループホーム20万人/日25%増37万人/日131%増
施設サービス106万人/日19%増133万人/日49%増
特別養護老人ホーム57万人/日21%増73万人/日55%増
老人保健施設49万人/日17%増60万人/日43%増
介護療養病床
厚生労働省老健局「第5期介護保険事業計画の全国集計」(2012.05.01公表)「第5期介護保険事業計画におけるサービス量の見込み等について〈確定値〉」より
推計増加率は2011年度(実績)を基準に計算


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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