介護報酬改定の「効果検証」と「調査研究」
第5期(2012~2014年度)介護報酬改定により4月から介護保険サービスの値段(介護報酬)が変わり、介護保険事業者(以下、事業者)は改定作業に忙殺されていると聞く機会が増えました。全国的な状況が確認できるのは、厚生労働省大臣統計情報部が公表する「介護給付費実態調査」(事業者が各都道府県国民健康保険団体連合会に提出した介護給付費明細書の審査集計)になるので、7月の「2012年5月審査分」の「月報」を待つことになります。
一方、介護報酬改定について議論した社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)は、今年1月15日、第6期(2015~2017年度)の改定に向けて「介護報酬改定検証・研究委員会」(以下、検証・研究委員会)を設置することを決め(第88回分科会)、4月26日に第1回(大島伸一委員長、独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)が開かれました。
「効果検証」と「調査研究」の対象は12項目
検証・研究委員会の委員構成は介護給付費分科会委員(公益委員)4人、学識経験者3人の合計7人で、第1回の意見交換、顔合わせのあとは「2013年3月目途」に(1)2012年度の調査研究の報告と議論、(2)2013年度の調査内容についての検討、というスケジュールが公表されています(資料2)。
検証・研究委員会は昨年12月7日に分科会がまとめた「2012年度介護報酬改定に関する審議報告」(以下、審議報告)で「検討が必要とされた事項等に関する研究を行うための資料を得ることを目的とする」とされています。
ケアマネジメントは別に検討会
調査項目(案)は、(1)2012年度改定効果検証のための8項目(表1参照)、(2)調査研究の4項目(表2参照)に分かれています。第5期(2012~2014年度)の改定ではほとんどのサービスに変更が加えられていますが、分科会が次期改定に向けて注目しているのはこの12項目になります。
在宅サービスでもっとも利用が多いデイサービス(通所介護)では提供時間の延長、ホームヘルプ・サービス(訪問介護)では生活援助の提供時間の短縮という改定が行われ、在宅サービス利用者への影響が大きいと思われますが、検証・研究項目には取りあげられていません。福祉用具については、第1回検証・研究委員会の席上、厚生労働省から「次期改定に向けて価格のバラつきは研究事業で調査する」との説明がありました。
なお、ケアマネジメント、ケアプランについては、厚生労働省老健局が別に「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後の在り方に関する検討会」(以下、ケアマネジャー検討会)を設置し、3月28日に第1回が開かれ、5月9日に第2回が予定されています。
「介護職員処遇改善加算」の検証は?
第1回検証・研究委員会で厚生労働省は、第5期介護報酬改定のポイントについて、(1)在宅サービスの充実と施設の重点化、(2)自立支援型サービスの強化と重点化、(3)医療と介護の連携・機能分担、(4)介護人材の確保とサービスの質の向上と説明しました(参考資料1)。
この4ポイントと検証・研究12項目を見比べると、ポイント(4)の「介護人材の確保とサービスの質の向上」が検証・研究項目にあがっていないことがわかります。ちなみに、「調査研究」には「医療職の勤務実態」がラインアップされています。
2011年の通常国会から長く議論された介護職員処遇改善交付金(以下、交付金)の延長問題は、第5期から「介護職員処遇改善加算」として介護報酬に組み込まれました。しかし、分科会の審議報告は「介護職員処遇改善交付金相当分を介護報酬に円滑に移行するために、例外的かつ経過的な取扱いとして設けるもの」としています。交付金は2.5年の税金投入でしたが、介護職員処遇改善加算もまた今後3年間という期間限定です。
今回の介護報酬改定では一番大きな変更点ですが、現時点では検証・検討の場は明らかになっていません。今後の動向に注目したいと思います。
対象 | 具体的内容 | |
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在宅サービス | ||
1.訪問介護 | 実態調査(2013年度) | ・20分未満の提供状況 |
2.訪問介護(リハビリ職と介護職の連携) | 実態調査(2013年度) | ・生活機能向上連携加算の取り組みと課題 |
3.ショートステイ(短期入所生活介護、短期入所療養介護) | 検証(2012年度) | ・緊急時サービス提供状況 |
地域密着型サービス | ||
4.定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 実施状況調査(2012年度) | ・市区町村の整備状況 ・利用者像と提供サービス内容 ・オペレーターの資格要件と対応状況 |
5.複合型サービス | 実施状況調査(2012年度) | ・市区町村の整備状況 ・利用者像と提供サービス内容 |
施設サービス | ||
6.介護老人保健施設の在宅復帰支援機能 | 実態調査(2012年度) | ・在宅復帰支援機能の高い基本サービス費 ・在宅復帰支援機能加算を算定する施設の具体的取組みや周辺環境等の実態把握 ・在宅復帰機能を高める要素 |
居住形態別 | ||
7.サービス付き高齢者向け住宅 | 実態調査(2012年度) | ・入居者の属性 ・在宅サービス、協力医療機関との連携状況 ・受入可能な要介護度や医療の必要性等 |
8.集合住宅における訪問系サービス | 実態調査(2012年度) | ・介護保険サービスの併設状況 ・調査対象住宅に居住する要介護高齢者数 ・当該利用者を担当する居宅介護支援事業所数等 |
対象 | 具体的内容 |
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1.介護予防サービス | 要支援者の状態像とサービス提供に関する実態調査 |
要支援者の状態像(ADL、IADL、認知機能、疾病の状況、生活環境) | |
サービス提供実態(具体的サービス内容、提供時間等) | |
2.認知症 | 現在実施されているサービスの実態調査 |
グループホーム等でのサービス提供の実態 | |
利用者の状態とふさわしいケア内容 | |
3.医療 | 事業所、施設における医師、看護師の役割の実態調査 |
通所介護等や介護保険施設における医療職の勤務実態 | |
医療・看護の提供状況 | |
4.リハビリテーション | 生活期に実施されているリハビリテーションの実態調査 |
生活期リハビリテーションの具体的内容 | |
リハビリテーション・機能訓練のアウトカムの評価方法の検証 |