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どうなる? 介護保険

介護報酬改定(11)ケアマネジメントの改定

 今回は、第88回社会保障審議会介護給付費分科会(2012年1月15日。以下、分科会)に出された「平成24年度介護報酬改定の概要」(資料1-2。以下、概要)をもとに、介護予防ケアマネジメント(介護予防支援)とケアマネジメント(居宅介護支援)の改定についてみていきます。

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ケアマネジメントの見直しは次期改定で
 介護報酬の改定に先立ち、昨年11月30日、社会保障審議会介護保険部会(以下、部会)の「社会保障・税一体改革における介護分野の制度見直しに関するこれまでの議論の整理」では、要支援認定者のケアマネジメントについて「リハビリテーションなど予防の効果の高い給付に重点化していくことが必要である、予防効果のないものは給付の対象から外すべき、予防給付のケアプランチェックが重要であるなどの意見も多くあった」、要介護認定者のケアマネジメントについて「ケアマネジャーの資格の在り方、質の向上について早急に検討を行うべき、利用されているサービスが自立支援に資するものとなっているかどうか、ケアマネジメントの在り方も含めて検証すべきとの意見が表明されている」と報告があり、「引き続き制度的な対応に向けて検討を進める」としました。
 続いて12月5日、第87回分科会がまとめた「平成24年度介護報酬改定に関する審議報告」(概要、本文)では「今後の主な検討課題」として、「次期(第6期)介護報酬改定までの間に、地域包括支援センターを中心とした『地域ケア会議』等の取組みを通じて多職種協働を推進するとともに、保険者によるケアプランチェック、ケアプランやケアマネジメントについての評価・検証の手法について検討し、ケアプラン様式の見直しなど、その成果の活用・普及を図る。また、ケアマネジャーの養成・研修課程や資格の在り方に関する検討会を設置し、議論を進める」とされました。
 部会と分科会の報告を受けて今年3月38日、厚生労働省老健局は介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会(第1回)(座長・田中滋慶応義塾大学教授。現在、資料公表なし)を開き、(1)ケアマネジャーをめぐる課題の整理、(2)ケアマネジャーの養成カリキュラム、研修体系のあり方、(3)ケアマネジャー試験のあり方、(4)ケアマネジャー資格のあり方について検討し、今秋までに中間的な議論の整理を行なうとしています。ちなみに、同検討会の構成員21人のなかで、現役ケアマネジャーは1人です。

介護予防ケアマネジメントは委託件数の制限を廃止
 介護報酬改定では、要支援認定(要支援1、2)を受けた人が利用する介護予防サービス(予防給付)の介護予防ケアマネジメント(介護予防支援)について、地域包括支援センターなど介護予防支援事業者が居宅介護支援事業者に委託することができる件数(居宅介護支援事業所のケアマネジャー1人あたり8件以内)の制限を廃止しました(「指定基準に係る主な見直しの内容」より)。
 制限撤廃の理由は「地域包括支援センターの包括的・継続的ケアマネジメント支援の機能を強化するとともに、地域の実情に応じた対応を図る観点から」(第88回分科会資料1「平成24年度介護報酬改定に関する審議報告」より)とされています。しかし、前段の審議報告(案)では「地域の実情に応じた対応を図る観点」ではなく、「地域包括支援センターの業務負担を軽減する観点」(第86回分科会資料1)とあります。6年前に要支援認定者を居宅介護支援事業所から地域包括支援センターに移行させ、地域包括支援センターの「業務負担」が大きいからという理由で再び居宅介護支援事業所に戻すという構図です。
 表1にあるように、介護予防ケアマネジメントは4336事業所(地域包括支援センター)が提供し、117万5000人が利用しています。2005年の介護保険法改正により、介護認定は、介護予防サービス(予防給付)を利用する要支援認定と、介護サービス(介護給付)を利用する要介護認定に分離されました。新設された介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センターが指定事業者として担当することになり、第3期(2006~08年度)介護報酬は「利用者の実態や給付管理業務の簡素化等を踏まえ、適正化の観点から」月400単位、初回加算は月250単位に設定されました(2006年1月26日、第39回分科会資料より)。その後、第4期(2009~11年度)介護報酬で月412単位、初回加算は月300単位に引き上げられました。
 今回の第5期(2012~14年度)介護報酬改定では、介護予防ケアマネジメントの基本報酬に変更はなく、居宅介護支援事業所にとって受託件数の制限撤廃と「業務負担」どのように受け止められるのかは不明です。ただし、介護予防ケアマネジメントの基本報酬412単位に対して、介護ケアマネジメント(居宅介護支援)は1000単位と1300単位で、2倍以上の開きがあります。

ケアマネジメントは“医療との連携”に加算を強化
 ケアマネジメント(居宅介護支援)は全国約3万3000事業所、約288万人が利用しています。基本報酬に変更はありませんが、加算報酬では(1)自立支援型のケアマネジメントを推進するため特定事業所加算で質の高い事業所を評価する、(2)サービス担当者会議やモニタリングを適切に実施するため運営基準減算を見直す、(3)医療との連携を強化するため医療連携加算を「入院時情報連携加算」に変更し、退院・退所加算とともに算定要件と報酬を見直す、(4)在宅患者緊急時等カンファレンスにケアマネジャー(介護支援専門員)が参加した場合に「緊急時等居宅カンファレンス加算」を新設するなど、「医療との連携」に報酬を増やしています。
 (1)の自立支援型のケアマネジメントの推進は概要において、算定要件の変更点として「介護支援専門員に対して計画的に研修を実施していること」「地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、居宅介護支援を提供していること」とあります。(4)の緊急時等居宅カンファレンス加算は「病院または診療所の求めにより、当該病院または診療所の職員と共に利用者の居宅を訪問し、カンファレンスを行い、必要に応じて居宅サービス等の利用調整を行った場合」とあります。
 ケアマネジメントは、認定を受けた利用者の相談に応じて、利用者に使いやすいサービスを組み合わせたケアプランを作成し、事業者との連絡・調整するサービスですが、「自立支援型ケアマネジメント」と「医療との連携」が利用者と介護者にどのような影響を及ぼすのか、また「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の議論がどこへ向かうのか注目したいと思います。

表1
サービスの種類事業所数利用者数
介護予防サービス
介護予防支援4,336事業所
(地域包括支援センター)
117万4900人
介護サービス
居宅介護支援3万2665事業所276万8400人


表2
ケアマネジメント2012~2014年度合計
介護予防支援
要支援1412単位/月
412単位/月
要支援2
居宅介護支援
要支援11000単位/月担当件数40件以上60件未満  500単位/月
担当件数60件以上       300単位/月
1500単位/月
1300単位/月
要支援2
要支援31300単位/月担当件数40件以上60件未満  650単位/月
担当件数60件以上       390単位/月
1950単位/月
1690単位/月
要支援4
要支援5


表3

介護予防支援居宅介護支援
初回加算300単位/回300単位/回
入院時情報連携加算
[名称変更]

100~200単位/月
退院・退所加算
300単位/回
認知症加算
150単位/月
独居高齢者加算
150単位/月
小規模多機能型居宅
介護事業所連携加算
300単位/回300単位/回
複合型サービス事業所
連携加算[新設]

300単位/回
緊急時等居宅カンファレンス
加算[新設]

200単位/回


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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