介護報酬改定(9)介護老人保健施設の改定
今年4月からの改定介護報酬について、現場では相当混乱があるという声も聞きますが、3月16日、厚生労働省は「2012年度介護報酬改定に関する関係Q&A」(2012.03.16高齢者支援課・振興課・老人保健課事務連絡)を出しました。104ページ251項目にもおよぶことからも、改定内容が複雑であることを証明しています。
なお、2月23日には全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議が開かれ、課長会議で出された質問については「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議における質問に対する回答」(2012.03.07事務連絡)が出されていますので、あわせて参考にしてください。
今回は、第88回社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)に出された「平成24年度介護報酬改定の概要」(資料1-2。以下、概要)をもとに、介護老人保健施設(以下、老健)の改定についてみていきます。
「在宅復帰支援型」の新設
老健は病院での治療が終わり、自宅に戻るための介護や機能訓練を提供する中間施設とされ、約48万人が利用しています。
ただし表4にあるように、医療機関から老健に移るのが約53%と本来的な利用は半数ほどで、自宅からの入所が約3割を占めています。また、老健から自宅に戻る「在宅復帰」は約24%で、医療機関に移るのが約49%と報告されています。
概要では「在宅復帰支援型の施設としての機能を強化」するため、「在宅復帰支援型」が新設され、これまでより介護報酬が引き上げられました。第84回分科会(2011.11.10)では、「介護老人保健施設における入所・短期入所リハビリテーションがもたらす在宅復帰・在宅生活支援に関する調査(速報値)」(社団法人全国老人保健施設協会、2011年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)が示され、「在宅復帰機能の高い施設の特徴」として(1)退所先に占める医療機関の割合が低い、(2)1カ月当たりの平均自宅等復帰者数が多い、(3)リハビリ専門職の配置数が多い、(4)3年以上の長期入所者が少ない、(5)ショートステイの利用者が多いことを示しました。
なお同調査では、老健の利用日数(在所日数中央値)について、在宅復帰機能「低」施設(909施設)は420日、在宅復帰機能「高」施設(97施設)は229日と報告しています。
「ベッドの回転率」の評価
施設サービス(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養病床の3施設)は在宅サービスに比べて加算報酬が多いことが特徴ですが、なかでも老健は加算報酬がたくさんあります。
今回の改定では、(1)入所前後訪問指導加算(入所前1か月までの間に自宅等を訪問した場合)、(2)所定疾患施設療養費(利用者が肺炎、尿路感染症など軽い病気になった場合、施設内で対応した場合)、(3)地域連携診療計画情報提供加算(医療機関と「地域連携診療計画」にもとづき大腿骨頚部骨折・脳卒中の利用者を受け入れ、計画管理病院に文書で診療情報を提供した場合)などが新設されました。
また、既存の在宅復帰支援機能加算(利用1か月以上で退所した全利用者のうち、在宅介護に移行した割合で評価)は「在宅復帰の状況及びベッドの回転率を指標」に見直しが行われました。
利用者の在宅復帰率が4分の1程度にとどまるなか、「在宅復帰支援型」施設、在宅復帰支援機能加算が自宅に戻る利用者を増やすことができるのか注目したいと思います。
サービスの種類 | 事業所数 | 利用者数 |
---|---|---|
介護サービス | ||
介護老人保健施設 | 3698事業所 | 48万3700人 |
介護老人保健施設 | 2009~11年度 | 2012~14年度 | 増減(単純差引計) |
---|---|---|---|
相部屋の場合 従来型の場合 | |||
要介護1 | 813単位/日 | 786単位/日 | -27単位/日(-3.32%) |
要介護2 | 862単位/日 | 834単位/日 | -28単位/日(-3.25%) |
要介護3 | 915単位/日 | 897単位/日 | -18単位/日(-1.97%) |
要介護4 | 969単位/日 | 950単位/日 | -19単位/日(-1.96%) |
要介護5 | 1022単位/日 | 1003単位/日 | -19単位/日(-1.86%) |
在宅復帰支援型の場合(新設) | |||
要介護1 | 819単位/日 | +6単位/日(+0.74%) | |
要介護2 | 893単位/日 | +31単位/日(+3.60%) | |
要介護3 | 956単位/日 | +41単位/日(+4.48%) | |
要介護4 | 1012単位/日 | +43単位/日(+4.44%) | |
要介護5 | 1068単位/日 | +46単位/日(+4.50%) | |
従来型個室の場合 従来型の場合 | |||
要介護1 | 734単位/日 | 710単位/日 | -24単位/日(-3.27%) |
要介護2 | 783単位/日 | 757単位/日 | -26単位/日(-3.32%) |
要介護3 | 836単位/日 | 820単位/日 | -16単位/日(-1.91%) |
要介護4 | 890単位/日 | 872単位/日 | -18単位/日(-2.02%) |
要介護5 | 943単位/日 | 925単位/日 | -18単位/日(-1.91%) |
在宅復帰支援型の場合(新設) | |||
要介護1 | 739単位/日 | +5単位/日(+0.68%) | |
要介護2 | 811単位/日 | +28単位/日(+3.58%) | |
要介護3 | 873単位/日 | +37単位/日(+4.43%) | |
要介護4 | 930単位/日 | +40単位/日(+4.49%) | |
要介護5 | 985単位/日 | +42単位/日(+4.45%) |
特別養護老人ホームの主な加算報酬 | |
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初期加算 | 30単位/日 |
入所前後訪問指導加算[新設] | 460単位/回 |
退所前訪問指導加算 | 460単位/回 |
退所後訪問指導加算 | 460単位/回 |
退所時指導加算 | 400単位/回 |
退所時情報提供加算 | 500単位/回 |
退所前連携加算 | 500単位/回 |
老人訪問看護指示加算 | 300単位/回 |
夜勤職員配置加算 | 24単位/日 |
短期集中リハビリテーション実施加算 | 240単位/日 |
認知症短期集中リハビリテーション加算 | 240単位/日 |
認知症ケア加算 | 76単位/日 |
若年性認知症入所者受入加算 | 120単位/日 |
ターミナルケア加算 | 160~1,700単位/日 |
在宅復帰・在宅療養支援加算[新設] | 21単位/日 |
栄養マネジメント加算 | 12単位/日 |
経口移行加算 | 28単位/日 |
経口維持加算 | 28単位/日 |
口腔機能維持管理体制加算 | 30単位/月 |
口腔機能維持管理加算 | 110単位/月 |
在宅復帰支援機能加算 | 5単位/日 |
緊急時治療管理 | 500単位/日 |
所定疾患施設療養費[新設] | 300単位/日 |
認知症専門ケア加算 | 3~4単位/日 |
認知症行動・心理症状緊急対応加算[新設] | 200単位/日 |
認知症情報提供加算 | 350単位/回 |
地域連携診療計画情報提供加算[新設] | 300単位/回 |
サービス提供体制強化加算 | 6~12単位/日 |
介護職員処遇改善加算[新設] | 所定単位×1.5%/月 |
入所前の場所 | 退所後の行き先 | ||
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家庭 | 28.8% | 家庭 | 23.8% |
特別養護老人ホーム | 0.7% | 特別養護老人ホーム | 9.3% |
その他の社会福祉施設 | 0.9% | その他の社会福祉施設 | 2.5% |
老人保健施設 | 5.2% | 老人保健施設 | 6.6% |
医療機関 | 52.6% | 医療機関 | 48.9% |
その他 | 11.8% | 死亡 | 6.0% |
その他 | 2.9% |
出典:厚生労働省大臣官房統計情報部「2010年介護サービス施設・事業所調査結果の概況」