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どうなる? 介護保険

介護報酬改定(3)ホームヘルプ・サービスの改定

 今週から、介護保険のサービスごとに第5期(2012~14年度)の介護報酬改定の内容(第88回社会保障審議会介護給付費分科会〈2012.01.25〉資料)をみていきます。
 各サービスの改定をみると、訪問看護以外は全体的に引き下げですが、基本報酬にかけあわせる地域区分の変更(2月1日付本連載参照)や介護職員処遇改善加算の新設(同月8日付本連載参照)があるため、全体像がはっきりしません。とりあえず、基本報酬を中心に確認していきます。
 介護保険サービスは在宅(居宅)サービス、地域密着型サービス、施設サービスと大きく分類されますが、2006年度以降、要支援1・2の認定を受けた人への介護予防サービス(要支援1・2の認定者が対象)と、介護サービス(要介護1~5が対象)が分けられました。
 2011年の介護保険法改正、今回の介護報酬改定を「ホームヘルパーが提供するサービス」でみると、表1のようになります。

表1 2012年度からのホームヘルプ・サービス
サービスの種類事業所数利用者数
介護予防サービス
介護予防ホームヘルプ・サービス2万6085事業所56万4100人
介護サービス
ホームヘルプ・サービス2万6889事業所124万7900人
地域密着型サービス
夜間ホームヘルプ・サービス126事業所1万0100人
定期巡回・随時対応サービス(新規)
事業者数:厚生労働省大臣官房統計情報部「平成22年介護サービス施設・事業所調査結果の概況」 利用者数:厚生労働省大臣官房統計情報部「平成22年度介護給付費実態調査の概況」

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介護予防ホームヘルプ・サービスは利用回数の制限を強化
 介護予防ホームヘルプ・サービスは現在、約56万人が利用しています。介護報酬は月単位の定額制で、身体介護、生活援助などに分けずにまとめて提供されています。
 2006年度介護報酬改定で新設された時、厚生労働省は「必要な人は何回でもサービスが利用できます」と説明しました。しかし、事業所は介護報酬に応じて採算ラインに乗せる必要があるため、実質的には利用回数が制限される人が増えました。今回の改定では、表2にあるように、週1回と週2回は-1.13%という小きざみな引き下げですが、週2回以上は168単位減、-4.19%と利用回数の制限が強化されました。
 なお、「平成23年 介護事業経営実態調査結果(速報値)(案)」(第81回分科会資料1-2 以下、23年実態調査)では、1事業所あたり延べ訪問時間は月170時間、訪問回数は同101.0回と報告されています。

表2 介護予防ホームヘルプ・サービスの基本報酬
 2009~2011年度2012~2014年度増減
週1回1234単位/月1220単位/月-14単位/月
週2回2468単位/月2440単位/月-28単位/月
週2回以上4010単位/月3870単位/月-168単位/月
※週3回以上は要支援2のみ

 介護予防ホームヘルプ・サービスについては、2011年7月28日、社会保障審議会介護給付費分科会(座長:大森彌・東京大学名誉教授 以下、分科会)の第77回で、厚生労働省が添付した資料は「2010年度財務省予算執行調査結果」の「介護予防訪問介護の提供内容」(対象者445人)と、「訪問介護の実態及び効率的なサービス提供のあり方に関する調査研究報告書」(株式会社三菱総合研究所、2007年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)で、「要支援者に対する訪問介護サービスのほとんどは生活援助」「軽度者については、掃除を行っている時間の割合が多い」という報告がありました(資料1)。
 なお、宮島俊彦・厚生労働省老健局長は分科会の席上、「掃除は自立支援に資さない」という発言をしています。

身体介護は要介護3~5を対象に「20分未満」を新設
 要介護1~5の要介護認定を受けた人が利用しているホームヘルプ・サービスは(1)身体介護、(2)身体介護に引き続き生活援助、(3)生活援助、(4)通院等乗降介助とメニューがさらに分かれます。23年実態調査では、訪問介護1事業所のホームヘルパーの延べ訪問時間は月619時間で、(1)31.7%、(2)32.4%、(3)35.9%という割合が示されています。
 身体介護の改定では、要介護3~5の利用者を対象に新たに「20分未満」170単位/回という時間区分が新設されました。これまでの「30分未満」254単位に比べて84単位減って-33.1%、つまり3割減という設定になりました。算定には、
(1)18~8時(夜間・深夜・早朝)に提供する
(2)日中(8~18時)の場合は要介護3~5の利用者で、障害高齢者の日常生活自立度ランクB~C
(3)サービス提供責任者が出席するサービス担当者会議を3月に1回開催し、1週間に5日以上、20分未満の身体介護が必要と認められていること
 という細かい条件があり、事業所体制では(1)22~6時を除く時間帯に営業していること、(2)常時、利用者からの連絡に対応できる体制があること、(3)定期巡回・随時対応サービスの指定を併せて受けているか、同サービスを実施する意思があり、実施計画を策定していることとあります。20分未満の提供をする事業所がどのくらいあるのかは不明ですが、市区町村が指定する地域密着型サービスに新設される定期巡回・随時対応サービス事業所になることを誘導していると思われます。
 なお身体介護では、その他の時間区分の単位に変更はありませんでした。また、通院等乗降介助(1回100単位)も改定はありませんでした。

表3 ホームヘルプ・サービス「身体介護」の基本報酬
2009~2011年度2012~2014年度
  20分未満170単位/回
30分未満254単位/回20分以上30分未満254単位/回
30分以上60分未満402単位/回30分以上60分未満402単位/回
60分以上90分未満584単位/回60分以上90分未満584単位/回
90分以上584単位+30分ごとに
83単位加算/回
90分以上584単位+30分ごとに
83単位加算/回
※20分未満は要介護3~5、障害高齢者の日常生活自立度ランクB・Cの場合

生活援助の提供時間は15分短縮、報酬は2割近くカット
 生活援助の改定では、これまでの時間区分が15分間短くなり、「20分以上45分未満」と「45分以上」に変更されました。
 昨年10月26日の連載「『生活援助』が15分短くなる?」でも紹介しましたが、第82回分科会で厚生労働省から、株式会社EBP「訪問サービスにおける提供体制に関する調査研究事業」(2011年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)の途中集計をもとに、「生活援助の一つの行為は15分未満ですむ場合もあり、組み合わせによっては30~40分程度になる」という理由のもと、45分区分が提案されました(資料1-1)。
 23年実態調査では1事業所の生活援助の延べ訪問時間は222時間、延べ訪問回数は191.9回と報告があり、単純計算でも1回平均約70分が現状となります。また、基本報酬は45分未満で39単位減って-17.0%、45分以上でも39単位減、60分以上になると56単位減、-19.2%で、基本報酬がおよそ2割減ることになります。

表4 ホームヘルプ・サービス「生活援助」の基本報酬
2009~2011年度2012~2014年度増減
20分以上45分未満190単位/回
30分以上60分未満229単位/回
45分以上235単位/回-39単位/回
60分以上291単位/回-56単位/回

身体介護+生活援助の提供時間は45~70分に集中?
 介護報酬は基本部分(基本報酬)と加算部分に分かれますが、ホームヘルプ・サービスには「身体介護に引き続き生活援助を行った場合」の加算があります。
 23年実態調査では訪問介護1事業所の提供時間の32.4%と約3割を占め、1回あたりの平均提供時間は約83分です。
 「身体介護に引き続き生活援助を行った場合」では、「20分以上」「45分以上」「70分以上」と10~15分間の提供時間の短縮があり、1回の提供時間が45分未満だと-13単位になり、45分~69分までは+57単位、90分を超えるとマ-39単位に転じることになりました。この加算には上限が設定されていますが、これまでの249単位が210単位になり、約16%引き下げられました。

表5 「身体介護に引き続いて生活援助を行った場合」の加算
2009~2011年度2012~2014年度増減
20分以上70単位/回
30分以上83単位/回-13単位/回
45分以上140単位/回+57単位/回
60分以上166単位/回
70分以上210単位/回+44単位/回
90分以上249単位/回-39単位/回
※249単位が限度※210単位が限度

「生活機能向上連携加算」の新設
 ホームヘルプ・サービスの加算には、初回加算(月200単位)のほか、2人訪問、夜間・早朝訪問、深夜訪問などがあります。身体介護には緊急時訪問の加算もあります。今回の改定では、介護予防ホームヘルプ・サービスも含めて「生活機能向上連携加算」(月100単位)が新設されました。
 これは「自立支援型のサービス提供の促進」と「在宅における生活機能向上を図る」ことを目的に、(1)サービス提供責任者が訪問リハビリテーション事業所のリハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)に同行して共同アセスメントを行い、その結果にもとづく訪問介護計画を作成し、(2)リハビリテーション専門職と連携してサービス提供を行うこと、が条件になっています。なお、加算の算定は初回から3か月間と限定されています。

30人以上の“住宅”に併設されている事業所は1割減算
 今回の改定では、サービス付き高齢者向け住宅など「同一の建物に所在する事業所」が「当該住宅等に居住する一定数(前年度の月平均30人)以上の利用者にサービスを提供する場合」は基本報酬を9割に減算することが示されています。具体的な対象となるのは、サービス付き高齢者向け住宅のほか、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、旧・高齢者専用賃貸住宅とされています。
 第88回分科会では、川又竹男・厚生労働省老健局振興課長から「集合住宅と訪問介護事業所が外形上一体のものを想定している。別棟、道路をはさんでいる場合は該当しない」と説明しています。

 ホームヘルプ・サービスはデイサービスと並び、介護予防も含めて全国で181万2000人が在宅で利用している人気のあるサービスです。基本報酬の多くが引き下げになり、利用者やサービスを提供しているホームヘルパー、そして事業所経営にどのような影響を与えるのか、大いに不安が残ります。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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