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どうなる? 介護保険

「社会保障改革」における介護保険

 1月6日、「社会保障・税一体改革素案」(政府・与党社会保障改革本部 以下、「素案」)が閣議決定されました。昨年6月に決定された「社会保障・税一体改革成案」を具体化したのが「素案」だそうですが、消費税を2014(平成26)年4月1日から8%、2015(平成27)年10月7日から10%に段階的に引き上げることを中心に「税制抜本改革」を実施し、「社会保障改革」を実現するとしています。
 「社会保障改革」では、(1)未来への投資の強化、(2)医療・介護サービス保障の強化、社会保険制度のセーフティネット機能の強化、(3)貧困・格差対策の強化、(4)多様な働き方を支える社会保障制度へ、(5)全員参加型社会、ディーセント・ワークの実現、(6)社会保障制度の安定財源確保の6項目を「方向性」に掲げ、与野党協議を経て法案化するとしています。
 介護保険制度では、昨年の通常国会(第177回常会)で「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等一部改正する法律案」(以下、改正法)が成立し、今年4月からの第5期介護報酬は1.2%のプラス改定(在宅1.0%、施設0.2%)と公表されています(2011年12月22日、厚生労働省「診療報酬・介護報酬改定等について」)。各サービスの具体的な報酬単価や基準変更については、1~2月に予定される社会保障審議会介護給付費分科会(座長:大森彌・東京大学名誉教授 以下、分科会)の諮問・答申を待つ状態です。
 「素案」では、「高齢化が一段と進む2025年に、どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を実現する」ために、今年の通常国会で関係制度の改正法案を提出することを予定しています。なお、「通常国会23日か24日に召集へ」(1月6日NHKニュース)と報道されているように、まもなく国会が開かれます。

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社会保障制度改革は「地域包括ケアシステム」
 「素案」では、「医療・介護サービス保障の強化」の介護サービスについて「地域包括ケアシステムの構築」を掲げ、改正介護保険法施行、介護報酬及び診療報酬改定、補助金等の予算措置などによる「今後のサービス提供の方向性」を以下のように列挙しています。
(1)在宅サービス・居住系サービスの強化
 … 24時間対応の訪問サービス、小規模多機能型サービス、サービス付き高齢者住宅の充実
(2)介護予防・重度化予防
 … 自立した高齢者の社会参加が活発化する介護予防を推進
   生活期のリハビリテーションの充実
   ケアマネジメントの機能強化
(3)医療と介護の連携の強化
 … 在宅要介護者に対する医療サービスの確保
  他制度、多職種のチームケアを推進
  小規模多機能型サービスと訪問看護の複合型サービスの提供
  退院時・入院時の連携強化や地域における必要な医療サービスの提供
(4)認知症対応の推進
  認知症に対応するケアモデルの構築や地域密着型サービスの強化
  市民後見人の育成など権利擁護の推進
 これらは改正法、介護報酬改定について分科会がまとめた「2012(平成24)年度介護報酬改定に関する審議報告」(以下、審議報告)とほぼ同じ内容です。
 このほか「素案」では、外来受診の適正化等(生活習慣病予防等)、介護予防・重度化予防、介護施設の重点化(在宅への移行)、施設のユニット化、マンパワー増強などがあがっています。

通常国会に法案提出が検討されている項目
 「素案」の「3.医療・介護等(2)」では、「医療保険・介護保険制度のセーフティネット機能を強化」するための法改正プラン、予算措置の予定などが示されています。今年の通常国会で「法案提出に向けて、関係者の意見を聴きながら検討する」とされているのは下記の項目になります。
○短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
○高齢者医療制度の見直し
○国保組合の国庫補助の見直し
○介護1号保険料の低所得者保険料軽減強化
○介護納付金の総報酬割導入等
 特に「介護納付金の総報酬割導入」は、現在働く人たちが払っている第2号介護保険料が、加入している医療保険組合ごとに人数割で計算されているのを、所得に応じた負担に変えようというプランです。すでに、社会保障審議会介護保険部会(座長:山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大学名誉教授。以下、部会)で、「介護保険制度の見直しに関する意見」(2010年11月30日)、「議論の整理」(2011年11月30日)で2年にわたって取り上げられたテーマで、「応能負担を強化するため実施すべき」などの賛成意見と「第2号被保険者のサービス利用は少ない」などの反対意見が両論併記されています。今度はどこに「関係者の意見」を求めるのでしょうか。

第6期は「給付の重点化・効率化」をさらに推進?
 また、「その他介護保険の対応」としては次の2項目があがっています。
(1)軽度者に対する機能訓練等重度化予防に効果のある給付への重点化の観点から、2012年度介護報酬改定において対応する。
(2)第6期介護保険事業計画(2015~2017年度)の施行も念頭に、介護保険制度の給付の重点化・効率化とともに、予防給付の内容・方法の見直し、自立支援型のケアマネジメントの実現に向けた制度的対応を検討する。
 第5期(2012~2014年度)の介護報酬単価はまだ公表されておらず、「軽度者」の範囲は明らかではありませんが、「機能訓練等重度化予防に効果のある給付に重点化」される模様です。
 また2015年度に向けて、さらに「給付の重点化・効率化」を進めるために検討予定の「予防給付の内容・方法の見直し」と「自立支援型のケアマネジメントの実現」を検討する予定とのことですから、目前の介護報酬単価の公表だけでなく、4年後も見据えた国会審議に注目する必要があるようです。

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本連載では、介護保険制度にまつわる皆さんの質問や疑問を受け付けています。制度改正のポイントや利用者・家族、介護職員などへの影響について具体的に知りたいなど、何でも結構です。
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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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