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どうなる? 介護保険

在宅サービスの介護報酬は…

 12月7日、第87回社会保障審議会介護給付費分科会(座長:大森彌・東京大学名誉教授。以下、分科会)がまとめた「平成24年度介護報酬改定に関する審議報告(概要)」と「平成24年度介護報酬改定に関する審議報告」(以下、審議報告)が公表されました。
 厚生労働省はこの審議報告をもとに、今後決められる介護報酬の改定率にあわせて来年1月以降、第5期(2012~2014年度)の介護報酬の具体的な単価と基準を審議会に諮問し、答申を得る予定です。
 審議報告の要約については、すでに「介護給付費分科会・審議報告のポイント」(キャリアブレイン12月6日付)の報道があるので参考にしてください。

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サービスは48種類に
 介護報酬とは介護保険サービス(給付)の値段ですが、診療報酬と同じく単価で表わされます。サービスの種類ごとに決められた単位数(基本報酬)に事業所が所在する地域ごとに加算率(地域区分)が加えられ、現在、1単位は10円(基本報酬)から11.05円まで幅があります。
 サービスの基本的な種類は、ケアマネジメントを含めて23種類になります。2005年の改正では、認定ランク(要支援認定、要介護認定)によって介護予防サービス(予防給付)と介護サービス(介護給付)という分け方が加わり、40種類に増えました。また、療養通所介護(デイサービスの1類型)など派生サービスも新設されました。そして11年の改正では、地域密着型サービスに定期巡回・随時対応型サービス(定期巡回随時対応型訪問介護看護)と複合型サービスが新設され、計48種類になりました。
 さらに介護報酬は、サービスごとに複数メニューがある場合や認定ランク、利用者数、施設では居室形態などでも変わります。09年度の介護報酬改定では3%の引き上げが行われましたが、基本報酬を増やすのではなく、職員配置数などに応じた数十種類の「加算」という形で配分されたため、制度発足12年間でとても複雑なものになりました。
 今回は、分科会の審議報告(概要)の「基本的な考え方及び重点課題」のラインナップに沿って、在宅サービスの介護報酬の見直しの方向性について整理してみました。なお、「評価する」とあるのは「報酬をつける」という意味で、「見直す」「適正化する」という表現は、厚生労働省が具体的な報酬単価が公表するまでどうなるのか確定していない状況を示しています。

1 高齢者の自立支援に重点を置いた在宅・居住系サービス
(1)介護予防ケアマネジメント(介護予防支援)
・地域包括支援センターの「包括的・継続的ケアマネジメント支援機能」を強化する
・居宅介護支援事業所への委託制限(1人8件)を廃止する
(2)ケアマネジメント(居宅介護支援)
・「自立支援型のケアマネジメント」のため、特定事業所加算を継続する
・「サービス担当者会議などの適切な実施」のため、運営基準減算を見直す
(3)ホームヘルプ・サービス(訪問介護)
・「生活援助」の訪問時間区分を60分から45分に見直す
・サービス提供責任者の配置を、ホームヘルパー数から利用者数に応じた基準に見直す
・サービス提供責任者の任用条件である「3年以上の経験がある2級ヘルパー」を段階的に廃止する
※介護予防ホームヘルプ・サービス(介護予防訪問介護)は、ホームヘルプ・サービスと「整合性を図る」見直しを行う
(4-1)介護予防デイサービス(介護予防通所介護)
・選択的サービスの複数プログラム組み合わせを評価する
・デイサービス、デイケアと同じく、基本サービス費を適正化する
・サービス提供事業者と同一建物に居住する利用者の送迎分を適正化する
・事業所評価加算の算定条件を見直す
・アクティビティ実施加算を見直し、生活行為向上プログラムを評価する
・デイサービスと同じく、人員配置基準の見直しを行う
(4-2)デイサービス(通所介護)
・看護職員の評価を見直す
・利用者の機能訓練(生活機能向上を目的とした訓練)を評価する
・小規模デイサービスの評価を適正化する
・サービス提供の時間区分を見直す
・12時間までの延長加算を認め、長時間サービスをより評価する
・人員基準に常勤換算方式を導入、事業所ごとへの配置に見直す
(5)福祉用具(福祉用具貸与・特定福祉用具販売)
・福祉用具専門相談員の個別サービス計画作成を義務づける
2 要介護度が高い高齢者や医療ニーズの高い高齢者に対応した在宅・居住系サービス
(1)ケアマネジメント(居宅介護支援)
・在宅患者緊急時等カンファレンスのケアマネジャー参加を評価する
(2)ホームヘルプ・サービス(訪問介護)
・「身体介護」の中重度の利用者への1日複数回の短時間訪問区分を新設する(早朝・夜間訪問などが可能な事業所には定期的なサービス担当者会議を義務づけ、定期巡回・随時対応型サービスへの移行を想定した条件をつける)
・「介護職員によるたんの吸引等の実施」のため、既存の体制加算に係る重度者要件を見直す
(3)訪問看護
・「介護職員によるたんの吸引等の実施」のため、訪問介護事業所の計画作成支援などを行う事業所を評価する
(4)居宅療養管理指導
・医療保険にあわせて、指導を行う職種、居住場所別の評価を見直す
・医師、歯科医師、薬剤師のケアマネジャーなどへの情報提供を必須とする
・小規模薬局の緊急対応が困難な場合、連携薬局の代行を可能とする
・看護職員による居宅療養管理指導の算定条件を緩和する
(5)デイサービス(通所介護)
・「療養通所介護」の利用定員を見直す
(6)デイケア(通所リハビリテーション)
・手厚い医療が必要な利用者(要介護4、5)の受け入れを評価する
(7-1)ショートステイ(短期入所生活介護)
・緊急短期入所ネットワーク加算を廃止し、空床確保、緊急時受け入れを評価する
・基準該当ショートステイの医師配置基準、居室面積基準を緩和する
(7-2)ショートステイ(短期入所療養介護)
・医療機関にあわせて、重度療養管理を評価する
・緊急短期入所ネットワーク加算を廃止し、緊急時受け入れを評価する
(8)特定施設(特定施設入居者生活介護)
・配置看護師の看取り介護を評価する
・空室の短期利用を認める

3 在宅生活時の医療機能の強化に向けた新サービスの創設
(1)定期巡回・随時対応サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)
・認定ランク別、月単位の定額報酬を基本にする
・人員配置基準
 ホームヘルパー、オペレーターは常時1名
 看護職員は常勤換算2.5名以上で、常時オンコール体制を義務づける
 定期巡回・随時対応サービス事業所と訪問介護事業所、夜間対応型訪問介護事業所、訪問看護事業所が一体的に運営される場合は職員の兼務を認める
 オペレーターは夜間対応型訪問介護と同様の有資格者1名以上
 オペレーターが配置されていない時間帯は、訪問介護のサービス提供責任者で3年以上の経験がある者の配置を認める
 特別養護老人ホーム、老人保健施設の夜勤職員がオペレーターを兼務することを認める
・定期巡回・随時対応サービス利用者がデイサービス、ショートステイを利用する場合は、日割り計算を行う
(2)複合型サービス
・認定ランク別、月単位の定額報酬を基本にする
・登録定員、従事者数は小規模多機能型居宅介護に準ずる
・人員配置基準
 看護職員は2.5名(うち1名は看護師または保健師)
 訪問看護サービスの看護職員による24時間体制を高く評価する
 泊まりサービスの看護職員は、夜勤・宿直の配置に限定しない
 管理者は常勤専従で、認知症利用者の介護経験3年以上で研修を修了した者、訪問看護の知識と技能を有する保健師または看護師のいずれかとする
・2015年3月まで事業開始時支援加算を設定する

4 在宅生活時の医療機能の強化に向けた訪問看護、リハビリテーションの充実並びに看取りへの対応強化
(1)ホームヘルプ・サービス(訪問介護)
・サービス提供責任者が、訪問リハビリテーションを提供する時にリハビリテーション専門職に同行し、両者で訪問介護計画を作成した場合に評価する
(2)訪問看護
・時間区分ごとの報酬、基準を見直す
・理学療法士などによる訪問看護の時間区分、評価を見直す
・ターミナルケア加算の算定条件を緩和する
・特別管理加算、緊急時訪問看護加算は区分支給限度基準額の算定対象から除外する
・初回訪問を評価し、特別な管理を必要とする者の対象範囲と評価を見直す
(3)訪問リハビリテーション
・リハビリ指示を出す医師の診察頻度を緩和する
・病院・診療所と同じように、老人保健施設が提供する訪問リハビリテーションの条件を緩和する
・サテライト型訪問リハビリテーション事業所の設置を可能とする
※介護予防訪問リハビリテーションは、訪問リハビリテーションと「整合性を図る」見直しを行う
(4)デイケア(通所リハビリテーション)
・リハビリテーションマネジメント加算、個別リハビリテーション加算、サービス提供時間ごとの評価を見直す

5 入退院時における医療機関と介護サービス事業者との連携促進
(1)ケアマネジメント(居宅介護支援)
・医療連携加算、退院・退所加算の算定要件、評価を見直す
(2)訪問看護
・利用者の入院中に医療機関と訪問看護計画を策定した場合に評価する

参考資料
第82回分科会(2011年10月17日開催)資料
・資料1-1 訪問介護の基準・報酬
・資料1-2 訪問看護の基準・報酬
・資料1-3 療養通所介護の基準・報酬
・資料1-4 短期入所生活介護の基準・報酬
・資料1-5 短期入所療養介護の基準・報酬
・資料1-6 居宅療養管理指導の基準・報酬
第83回分科会資料(2011年12月5日開催)
・資料1 通所介護の基準・報酬
・資料2 リハビリテーション(通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション)
・資料3 予防給付(介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防訪問介護、介護予防訪問リハビリテーション)
・資料4 居宅介護支援・介護予防支援の基準・報酬
第84回分科会(2011年11月10日開催)資料
・資料2 特定施設入居者生活介護の基準・報酬
・資料7 福祉用具
第85回分科会(2011年11月14日開催)資料
・資料2 介護職員によるたんの吸引等の実施
・資料3 さらに議論が必要な論点(特定施設入居者生活介護、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、定期巡回・随時対応型訪問サービス)

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本連載では、介護保険制度にまつわる皆さんの質問や疑問を受け付けています。制度改正のポイントや利用者・家族、介護職員などへの影響について具体的に知りたいなど、何でも結構です。
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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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