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どうなる? 介護保険

「ケアマネジャーの今後」はデータ不足

 9月5日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)第79回では、厚生労働省(事務方)から「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する基礎調査」(資料2-1。以下、基礎調査)の報告が行われました。
 基礎調査は株式会社日本総合研究所が厚生労働省の委託を受けて実施(予算2000万円)したもので、(1)ケアマネジメントの現状把握、(2)ケアマネジメントの質、ケアマネジャーの資質を比較・分析できる基礎データの収集が目的とされています。調査は東日本大震災発生直後の3月22日~31日に実施され、全国1万28事業所(災害救助法適用市町村は除外)に配布し、有効回収率は管理者調査18.6%、ケアマネジャー調査10.9%、個別ケース9.3%と報告されました。
 2月7日の第71回分科会に出された資料1「区分支給限度基準額に関する調査結果について」の報告でも、ケアプラン調査の報告が行われています。こちらの調査は区分支給限度額(1割負担の利用限度額)を超えて利用する人の実態把握が目的と書かれていますが、厚生労働省は「区分支給限度基準額を超える方は、訪問看護、リハビリテーションなど医療サービスが原因になっていると聞いていたので、医療サービスが原因、あるいは重い負担になっているのではないかという仮説で調査を行った」(宇都宮啓・厚生労働省老健局老人保健課長、第71回分科会議事録より)そうです。
 なお、第80回分科会は9月22日(木)に開催予定です。

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医療系サービスの利用が少ないのは「衝撃」?
 「区分支給限度基準額に関する調査結果」は、(1)介護給付費明細書による利用状況、(2)週間ケアプラン調査(市町村におけるケアプランの点検者による評価)、(3)調査者又は7~9割の者の担当ケアマネジャーに対するアンケートに分かれています。そして、厚生労働省の“仮説”については、(1)と(3)の結果、「医療系サービスの利用は少なかった」ことになり、「衝撃的な内容を含んでいる」(大森彌・分科会長、東京大学名誉教授)とされました。
 (2)の「週間ケアプラン調査」は派生的な調査で、「御参考ということでごらんいただきたい」(宇都宮啓・厚生労働省老健局老人保健課長)と報告されましたが、区分支給限度額を超えた人の「週間ケアプラン」を「ケアプランの点検・指導及び実務を行っている」評価者に、「紙のケアプランから判断して」もらったところ、看護師の評価者は訪問看護の不足を指摘し、社会福祉士・介護福祉士の評価者は訪問介護と訪問看護の不足を指摘したそうです。そして、「評価者からの意見(抜粋)」では、「自立度を改善させるケアプランになっていない」「医療系サービスが少ない」「生活援助サービスが過多」「適切な作成ではない」という“意見”が紹介されています。
 分科会委員からは「画期的な調査結果」(村川浩一委員、日本社会事業大学教授)、「目的は違ったけれども、出てきたものはすごい」(池田省三委員、地域ケア政策ネットワーク研究主幹)といった称賛の声が聞かれました(第71回分科会議事録より)。

保有資格別の基礎データ?
 半年が過ぎた9月5日の第79回分科会では、川又竹男・厚生労働省老健局振興課長から基礎調査の概要が報告されました。調査の中には、ケアマネジャーを保有資格別に(1)医療系(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師など)、(2)福祉系(社会福祉士、精神保健福祉士)、(3)医療福祉系(医療系と福祉系両方に該当)、(4)介護福祉士、(5)医療/福祉系かつ介護福祉士(医療系、福祉系、医療福祉系に該当し、介護福祉士を保有)と分類し、利用者の心身の状態の判断やADL(日常生活関連動作)、IADL(手段的日常生活動作)の見方を比較するという項目もあります。
 ケアマネジャーとは介護支援専門員実務研修受講試験に合格して実務研修を受けた人を指しますが、これまで13回の試験が行われ、累計52万3472人が合格しています。2010年の職種別合格者数(第13回)でみると、介護福祉士1万9602人(68.3%)、相談援助業務従事者・介護等業務従事者3038人(10.6%)、社会福祉士3031人(10.6%)、精神保健福祉士437人(1.5%)と、「福祉系」が9割を超えます。
 資料2-3「ケアマネジメントについて(参考資料)」では、ケアマネジャーの保有資格の推移が紹介され、看護師・准看護師は2003年の37.6%が2009年には22.9%と4割減少し、介護福祉士が2003年32.6%から2009年50.0%と1.5倍になっていることを示しています。
 居宅介護支援事業所に勤務するケアマネジャーは8万1132人(常勤換算6万5178人)、地域包括支援センター8992人(同7692人)、在宅サービス事業所9420人(同5052人)、認知症高齢者グループホーム1万4624人(同8030人)、介護保険3施設1万9649人(同1万3567人)と報告され、単純合計で13万6357人(累計合格者の26.0%)が働いています。

「成果」を出す仮説
 なお基礎調査は、「ケアマネジメントの成果が発現されるメカニズム(仮説)」に基づいてアンケートが作られているそうです。「環境」(所属事業所)と「能力」(知識・スキル・経験)に基づく「行動様式」(普段どのような行動をとっているか)に「利用者の状態像」が加わり、「実績」(実際にどのようなことをやったか)から「成果」(安定した在宅生活の維持、自立支援・重度化の防止・普遍化に寄与したか)が導き出されるようです。
 第71回、第79回の調査報告はどちらも、「福祉系」が圧倒的に多いケアマネジャーの現状について、「医療系」が優位にあるという予断のもとに、医療系サービスが少ない、あるいは「生活援助」の多い「福祉系」のケアマネジャーやケアプランを数字だけで批判したいのかと心配になります。「安定した在宅生活の維持」のために、より基本的な問題や課題があるのではないでしょうか。
 ちなみに調査報告については、「ケアマネ調査、低回収率に批判相次ぐ」(2011年9月5日付キャリアプレイン)と、委員から厚生労働省に厳しい批判が出ましたが、クロス集計など詳細データがまとまり次第、再び分科会に報告される予定です。



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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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