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どうなる? 介護保険

介護保険で医療を強化?

 介護報酬についての「各論」は、9月以降の社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)で本格的な議論が始まるといわれていましたが、9月5日、第79回分科会が開かれました。
 テーマは「介護サービス利用者に対する医療提供のあり方」(資料1)と「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する基礎調査」(資料2-1)報告でした。今回は資料1について報告します。
 第71回分科会(2月7日開催)に『2012年度介護報酬改定に向けたメモ』が出ていますが、「基本的な視点」5項目のひとつに「医療と介護の役割分担・連携により、効率的で利用者にふさわしいサービスを提供すること」とあります。
 第79回ではまず、厚生労働省(「事務方」と呼ばれます)が「介護サービス利用者に対する医療提供のあり方」の資料説明をしました。
 資料1では、(1)医療を必要とする「要介護高齢者」の増加(訪問看護ステーション利用者は2001年度の約18万人から2007年度には約23万人に)、(2)救急車で病院に運ばれる「比較的軽度者」の増加(「軽症」では1999年の42.2万人から2009年度は84.2万人に)、(3)主たる死亡場所は病院(2000年で病院81.8%、自宅13.9%)と報告されました。
 そして「主な論点」で、(1)各サービスの医療提供のあり方(特別養護老人ホームと老人保健施設の医療提供、小規模多機能型居宅介護と認知症高齢者グループホームの看護提供)、(2)看取りの対応の強化のふたつをどう考えていくのかという提起がなされました。

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介護と薬
 資料1では、「介護保険施設等の入所(居)者の服薬割合」として、7種類以上の内服薬を飲んでいる利用者が特別養護老人ホームで19.8%、老人保健施設で18.9%、有料老人ホームで36.8%と「有料老人ホームにおいては、特養や老健と比べ、その割合が高い」という指摘をしました。一方、村上勝彦委員(全国老人福祉施設協議会総務・組織委員長)は提出資料『特別養護老人ホームにおける認知症高齢者の原因疾患別アプローチとケアの在り方研究報告書サマリ』で、「10種類以上を服薬している人が7.3%」「最多服薬数は16種類」で、薬の種類では「降圧剤と下剤や服薬率6割」を超えると報告しました。
 高瀬義昌医師(訪問医療専門医)は著書『これで安心 はじめての認知症介護』(佼成出版社)で、認知症高齢者が複数の診療科にかかっている場合、「精神科の薬のほか、糖尿病や心臓病、ひざの痛みなどの薬が加わって、結果的に数十種類もの薬を飲んでいる方が少なくありません」とし、施設から自宅に戻った場合、「薬の整理」から始めることも多いと書いています。
 厚生労働省が有料老人ホームで薬の種類が多いと指摘する意図はわかりませんが、高齢者への薬の処方のあり方は、介護報酬を議論する分科会に提出されるテーマなのだろうかと思います。
 なお、村上委員からは資料説明とともに、「認知症の正確な診断と脳画像診断による情報の積極的な評価」が提言されました。こちらもまた、認知症診断を介護報酬で「評価」することを求めているのかどうかは不明です。

介護保険における医療ニーズは?
 資料1では「医療を必要とする『要介護高齢者』」として訪問看護ステーションの利用者数が紹介されていますが、訪問看護は医師の指示にもとづき医療保険、介護保険どちらの制度でも利用することができます。2010年3月現在、介護保険で訪問看護を利用しているのは約27万人で、全利用者約399万人の6.8%です(厚生労働省大臣官房統計情報部「平成21年度介護給付費実態結果の概況」より)。2009年度の給付費は1353億9838万円で、給付総額7兆1755億869万円の1.9%(厚生労働省「平成21年度介護保険事業報告(年報)」より)です。
 電話相談「介護保険ホットライン」では「訪問看護の利用料が高く、すぐに利用限度額を超えてしまう」「訪問看護ステーションが少ない」などさまざまな声を聞きますが、なぜ介護保険で訪問看護の利用が少ないのか、まずはその理由を整理する必要があるでしょう。
 また「2.看取りの対応の強化について」では、介護保険3施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養病床)と認知症高齢者グループホーム、訪問看護の「看取り加算」「ターミナルケア加算」を報告しています。加算を請求する事業所は、特別養護老人ホーム13.8%、老人保健施設と療養病床が10.5%、認知症高齢者グループホームは1.1%、在宅における訪問看護は8.3%になるそうです。
 これらのデータをもとに、厚生労働省は「主な論点」で、「医療機関以外での看取りへの対応の強化」を挙げていますが、いわゆる「慢性期医療」と「終末期医療」が未分化のまま資料が出され、また、立場が多様な委員の高齢者医療に集中した発言を聞いていると、「介護保険」ではなく「在宅医療保険」の話を聞いているようでした。
 ちなみに分科会には25人の委員がいますが、医療関係者では大島伸一・国立長寿医療研究センター総長、佐藤保・日本歯科医師会常務理事、武久洋三・日本慢性期医療協会会長、三上裕司・日本医師会常任理事、山田和彦・全国老人保健施設協会会長、齊藤訓子・日本看護協会常任理事の6人が参加しています。
 分科会メモの「医療と介護の役割分担」以前に、現在の保険制度における「医療と介護の役割」をそれぞれ明確にしたうえで、どのような「分担」と「連携」が考えられるのかを議論してもらいたいものです。

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本連載では、介護保険制度にまつわる皆さんの質問や疑問を受け付けています。制度改正のポイントや利用者・家族、介護職員などへの影響について具体的に知りたいなど、何でも結構です。
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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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