介護報酬改定に向けた動き
特別養護老人ホームの個室は“参酌すべき基準”
前回のブログで、7月28日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)の第77回において、特別養護老人ホーム(以下、特養)の居室定員を「4人以下」から「1人」に、居室面積を約8畳から約6畳に、と事業者指定基準を変更することが答申されたと報告しました。
地方分権一括法では、2013年度(2014年度まで経過措置が設けられる可能性あり)から、事業者指定基準が(1)省令基準に「従うべき基準」、(2)省令基準を「標準とすべき基準」、(3)省令基準を「参酌すべき基準」の3段階になり、(2)と(3)は地方自治体(都道府県、政令指定都市・中核市)の判断に委ねられる予定です。
「4人以下」から「1人」に省令を変更する理由は、厚生労働省の「特養の個室ユニット化」推進の姿勢を堅持するためとのこと。なお、分科会には、居室定員が(1)1人(場合によっては2人)、(2)4人以下(①を除く)、(3)5人以上となった場合、「異なる報酬」を設定し、(3)には「報酬上強い減算規定を置く」ことが提案されています(資料3-1)。部屋人数は地方自治体が決めてもいいけど、人数を増やすなら介護報酬は減らします、ということです。事業者裁量で決められる別料金の家賃はどうなるのでしょう? いずれにしても地方自治体の動向に注目する必要があります。
関係団体懇談会の開催
7月28日の分科会では老健局長のもとに「介護報酬に関する関係団体懇談会」が設置されることが報告され、実施時期やメンバーなどは不明とお知らせしましたが、8月1日、厚生労働省のホームページに「介護保険サービスに関する関係団体懇談会」(以下、懇談会)が公表され、同月8日には大塚耕平・厚生労働副大臣、岡本充・厚生労働大臣政務官が出席して、懇談会が開催されました。
「関係団体」として呼ばれたのは11団体で、訪問系サービスは全国訪問看護事業協会と24時間在宅ケア研究会、施設サービスは全国個室ユニット型施設推進協会と全国社会福祉施設経営者協議会、地域密着型サービスは全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会と日本認知症グループホーム協会、いわゆる居住系サービスはサービス付き高齢者向け住宅協会、全国特定施設事業者協議会、全国有料老人ホーム協会、そのほか日本福祉用具供給協会、日本リハビリテーション病院・施設協会という顔ぶれでした。また、分科会委員としてのオブザーバー的な参加は、全国老人福祉施設協議会、全国老人保健施設協会、日本慢性期医療協会、民間介護事業推進委員会の4団体でした。
大塚副大臣からは「来年は(介護報酬と診療報酬の)同時改定なので、分科会とは別に集まっていただいた」とあいさつがあり、「現場を担う事業者のみなさんで、(介護報酬改定の)優先順位について共通認識をもっていただけると、無尽蔵にあるわけではない財源の配分も考えやすい」というコメントも出されました。 懇談会がこの日1回限りなのかどうかは不明ですが、呼ばれなかった訪問介護、通所介護などの訪問系サービス事業者は、“財源の配分”に参画できるのでしょうか?
東京都は「緊急提言」を公表
介護報酬改定をめぐっては、7月29日、東京都福祉保健局が「介護報酬改定に関する緊急提言」を公表し、(1)大都市部の人件費、物件費の高さを適切に反映する、(2)各種加算制度について検証・整理する、(3)医療と介護の連携のため訪問看護に初回加算を設けるなど15項目の提案をしています。
分科会は9月以降、各論に入ることが予定されていますが、地方分権一括法と診療報酬改定のほか、7月1日に閣議決定された「社会保障・税一体改革」(政府・与党社会保障改革検討本部にも影響を受けます。注意深く議論の行方を追いたいと思います。
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