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どうなる? 介護保険

事業者指定基準の“地方分権”

【「どうなる?介護保険」は今月より毎週水曜日の更新となります(編集部)】

 7月28日、社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)の第77回が開かれました。
 分科会(大森彌・座長)では、6月22日に公布された改正介護保険法をもとに、第5期(2012~2014年度)の介護報酬や事業者指定基準について検討が行われます。この日は、(1)地方分権一括法の成立・公布に伴う基準省令改正の諮問・答申、(2)「リハビリ、軽度者への対応について、福祉用具について」のヒアリングが行われました。
 冒頭、大塚耕平・厚生労働副大臣から「介護報酬と診療報酬の同時改定に向けて、現場に即した議論をしていただきたい。なお、老健局長のもとに介護報酬に関する関係団体懇談会を設置し、その内容を分科会に報告するので検討していただきたい」というあいさつがありました。
 分科会に政務三役(大臣、副大臣、政務官の総称)が出席するのはまれですが、「事業者団体等ヒアリング」が秋まで行われるのに、厚生労働省内に別に懇談会を設ける理由やメンバーのほか、公開・非公開も現時点では不明です。
 なお8月10日には、第78回分科会が予定されています(傍聴申込の締め切りは8月4日17時です)。

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指定基準は国と地方で分担
 第77回分科会で行われた「地方分権一括法の成立・公布に伴う基準省令改正」の諮問・答申は、地方分権一括法(地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律、小渕内閣、1999年7月成立、2000年4月施行)にもとづき、(1)介護保険サービス事業者の指定基準を改正する、(2)特別養護老人ホームの定員は厚生労働省令基準で「4人以下」から「1人」とする(現存施設には経過措置を設ける)の2点について、細川律夫・厚生労働大臣の諮問(「これでいいですか?」という質問)に答申(「いいですよ」という回答)が行われました。
 地方分権一括法は「上級法」と呼ばれ、下級法(厚生労働省の管轄では、介護保険法、老人福祉法、障害者自立支援法、児童福祉法など)に優先します。同法にもとづき、内閣府に地方分権改革推進委員会が設置され、第3次勧告(2009年10月7日)で、各省庁の事業者指定基準を(1)省令基準に「従うべき基準」、(2)省令基準を「標準とすべき基準」、(3)省令基準を「参酌する基準」の3段階に分け、「国の権限」であった指定基準の一定部分を地方自治体(都道府県、政令指定都市・中核市)に譲るという内容が示されました。
 「従うべき基準」は国の基準で絶対に守らなければダメ、「標準とすべき基準」は絶対じゃないけどこれにしてね、「参酌する基準」は都道府県ごとに変えてもいいけどね…といったものでしょうか。
 (1)介護保険サービス事業者の指定基準は、地方分権改革推進計画(2009年12月15日閣議決定、鳩山内閣)の「施設・公物設置管理の基準の見直し」で具体的な内容が公表されました。「特別養護老人ホーム及び養護老人ホーム、特定居宅サービス(ホームヘルプ、デイサービス等)、指定介護老人福祉施設」について、(1)人員・居室面積・人権侵害防止等の厚生労働省令で定める基準は「従うべき基準」、(2)利用定員は「標準とすべき基準」、(3)その他は「参酌すべき基準」と変更が予定されています(具体的な分科会への諮問内容は資料3を参照してください)。

特養個室は地方自治体(都道府県、政令指定都市・中核市)が参酌すべき基準
 (2)特別養護老人ホームの定員について、厚生労働省令基準で1部屋「4人以下」から「1人」とするのは、現在、建設中あるいは開設予定の特別養護老人ホーム(以下、特養)が対象です。
 地方分権改革推進計画では当初、特養の1部屋定員は「4人以下」で、「参酌すべき基準」と説明されていました。つまり、都道府県などの判断で「4人以上」と定めてもいいことになっていたのです。しかし2010年4月、「特別養護老人ホーム等介護施設の個室ユニット化推進のための大臣方針」(長妻昭・厚生労働大臣、当時)で、特養の個室ユニット化を進めるとともに、居室面積の基準を13.2平方メートル(約8畳)から10.65平方メートル(約6畳、相部屋=多床室と同水準)に引き下げることが公表されました。同年7月29日、第66回分科会答申が行われ、9月21日の第69回分科会では「一部ユニット型施設の基準等に関する審議のとりまとめ(案)」が出されました。
 昨年の分科会では、特養の待機者が約42.1万人にのぼると報告され(2009年12月22日、厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」)、「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」(約3011億円)による特養を含めた施設整備が進むなか、相部屋も必要ではないかという意見も出されていました。いずれにしても今回の答申により、今後新設される特養は、部屋は狭くなるけれど1人部屋が基本であることが確認されました。

入浴回数は「参酌すべき基準」?
 ただし、特養の個室条件は「従うべき基準」となりましたが、都道府県などの実情にあわせて変えてもいい「参酌すべき基準」には、食堂面積、廊下幅、サービス提供困難時の対応(病院や他の事業者の紹介等)、サービスの提供の記録、介護の方法(週2回以上の入浴等)、レクリエーションの提供等などがリストアップされています。施設整備が進むなか、特養など施設サービスの内容が“地方分権”で多様化するとともに、サービス水準のばらつきも広がりそうです。
 なお、分科会の諮問事項には、介護保険の各サービスについて「従うべき基準」「標準とすべき基準」「参酌すべき基準」が書かれています。
 今後はパブリックコメント(行政手続法にもとづく意見公募、募集時期未定)を経て、2012年度からの施行が予定されているため、サービスごとに具体的な内容の公開を求め、確認する必要があるでしょう。



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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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