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どうなる? 介護保険

「軽度者」へのサービスカットの動き

 前回、改正介護保険法(以下、改正法)の具体的な内容を検討する社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)の進捗状況を紹介しましたが、7月7日に予定されていた第77回分科会は中止となり、28日まで開催予定はないとのことです。
 このため、今回は6月下旬に公表された介護保険関連情報のなかで、特に「軽度者」に関わる資料を紹介します。

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「介護予防・日常生活支援総合事業」のイメージ
 6月22日、改正法が官報号外第131号で公布されました。同日、厚生労働省老健局は『介護保険最新情報』vol.216で公布の局長通知を出すとともに、別紙「参考:地域支援事業における介護予防・日常生活支援総合事業の位置付けのイメージ」を添付しています。
 別紙によると、改正法で新設された「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)は、従来の(1)介護予防事業、(2)包括的支援事業、(3)市町村の判断により実施する事業をまとめたものと説明されています。
 (3)には、(ⅰ)要支援認定者への介護予防サービスを実施する事業、(ⅱ)要支援認定者、介護予防事業の2次予防事業対象者(旧・特定高齢者)への日常生活自立支援事業(配食、見守りなど)、(ⅲ)介護予防サービス(予防給付)の対象とならない要支援認定者へのケアマネジメント事業、の3つの“事業”が含まれる「イメージ」です。
 2005年改正では、要支援認定者へのケアマネジメントが、(2)の包括的支援事業として居宅介護支援事業所から地域包括支援センターに移行しましたが、今回の改正法では、「市町村の判断」によっては介護予防サービスもまた地域支援事業に移行することになります。

サービスは維持されるのか?
 介護保険サービスの利用者にとって、介護が必要と認定されたときに「介護のある暮らし」を支えてくれるサービスがあれば、地域支援事業、介護予防サービスのどちらでもよいでしょう。
 現在、要支援1・2と認定された人たちは、介護予防ケアマネジメント(介護予防支援)にもとづいて、介護予防ホームヘルプ・サービスなどの在宅サービス10種類(介護予防特定施設入居者生活介護を含む)と福祉用具、住宅改修、地域密着型サービス3種類(介護予防認知症高齢者グループホームの利用は要支援2のみ)を選んで契約し、サービスが提供されることになっています。
 改正法では、第5期介護保険事業計画(2012~2014年度)で総合事業の実施を盛り込んだ市町村(保険者)に暮らす要支援認定者は、「従来の介護予防サービスと同総合事業を選択・利用する意思を最大限尊重」(第177回国会衆議院附帯決議、参議院附帯決議)されながら、介護予防サービスと日常生活自立支援事業のどちらが適当かを市町村、地域包括支援センターに判断されることになっています。
 一方、厚生労働省社会・援護局が担当する安心生活創造事業推進検討会では、6月21日に開催した第6回検討会において、「介護保険にある自立と要支援のギャップを安心生活創造事業で埋めるという視点が重要」(第5回検討会の議論のまとめ)としています。
 総合事業の実施を決める市町村がどのくらいあるのか、また日常生活自立支援事業に安心生活創造事業が導入されるのかは不明です。しかし、6月29日に公表された2009年度介護保険事業状況報告(年報)で125万2000人と報告される要支援認定者(認定者の25.8%)へのサービスが減らされることが懸念されます。なお、同報告には「要介護度が軽度(要支援1~要介護2)の認定者が約60.8%を占めている」という気になるコメントもついています。

経産省は「保険給付の対象外」
 「軽度者」は要支援認定者のみならず要介護1・2にまで拡大かと心配になった同日、経済産業省の産業構造審議会基本政策部会は、第5回の中間取りまとめ(案)「少子高齢化時代における活力ある経済社会に向けて―経済成長と持続可能な社会保障の好循環の実現―」で、「本当に必要とする方にサービスを提供する」ため、「介護保険の給付対象者の見直し(軽度者の保険対象からの除外)」を掲げ、「主に利用サービスが炊事や清掃などの生活援助に割かれている傾向がある軽度の要介護者(要支援者及び軽度の要介護者)は保険給付の対象外とする」ことを提案しています(「軽度の要介護者」にどこまで含まれるのかは明言されていません)。
 厚生労働省と経済産業省が声をあわせて「軽度者」という人の中心は、介護認定で要支援1・2と判定されている平均年齢81歳の高齢者です。「軽度者」へのサービスを削減する前に、現行の介護認定システムが「本当に必要とする方」を判定しているかどうか検証する必要があるのではないでしょうか。

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本連載では、介護保険制度にまつわる皆さんの質問や疑問を受け付けています。制度改正のポイントや利用者・家族、介護職員などへの影響について具体的に知りたいなど、何でも結構です。
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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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