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どうなる? 介護保険

衆議院での介護保険法改正案審議

 5月20日に開かれた衆議院厚生労働委員会(以下、委員会)で、介護保険法改正案「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」(以下、改正案)についての1回目の質疑が行われました。
 質疑の模様は、衆議院テレビのビデオライブラリで中継を観ることができます(3時間15分)。ライブの傍聴とは印象が違いますが、早送りや巻き戻しもできるので、ぜひチェックしてみてください。
 質問したのは斉藤進(民主党・無所属クラブ)、山崎摩耶(民主党・無所属クラブ) 、山口和之(民主党・無所属クラブ)、加藤勝信(自由民主党・無所属の会)、あべ俊子(自由民主党・無所属の会)、古屋範子(公明党)、高橋千鶴子(日本共産党)、中島隆利(社会民主党・市民連合) 、柿澤未途(みんなの党)の9人の委員です。
 今回は、答弁に立った政府参考人(厚生労働大臣、副大臣、政務官、厚生労働省幹部)の発言のなかで、地域支援事業(介護保険を財源とする市区町村事業)に新設が提案されている「介護予防・日常生活支援総合事業」にかかわる内容を紹介します。
 なお次回の衆議院厚生労働委員会は、5月24日に参考人からの意見聴取が予定され、大森彌(社会保障審議会会長、社会保障審議会介護給付費分科会座長)、佐藤美穂子(日本訪問看護振興財団)、木村隆次(一般社団法人日本介護支援専門員協会会長)、田原聖子(東京介護福祉労働組合書記長)、服部万里子(立教大学教授)の各氏が出席します。
 ちなみに、介護保険法改正案についての審議は、20日の委員会も含めて10時間という短いスケジュールが予定されています。

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新事業は要支援認定者も対象
 2005年の介護保険法改正で登場した地域支援事業は、介護保険財源の3%を上限に市区町村が実施していますが、内容は(1)介護予防事業、(2)包括的支援事業(介護予防ケアプラン作成支援、総合相談支援、権利擁護事業、包括的・継続的ケアマネジメント事業)、(3)任意事業の3種類に分かれています。介護予防事業には、介護認定非該当(自立)あるいは“虚弱”な高齢者を対象とする二次予防施策(旧・特定高齢者施策)と、元気な高齢者が対象の一次予防施策(旧・一般高齢者施策)があります。
 改正案で新たに提案されている「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、新事業)は、(1)「居宅要支援被保険者」(自宅で暮らす要支援1、2の要支援認定者)に“市町村が定める介護予防サービス”などを提供する事業、(2)認定を受けていない第1号被保険者(65歳以上の高齢者で介護保険料を納めている人)の地域での自立した日常生活を支援するための事業と定義され、「見守り、配食サービスなど」が例示されています。
 市民福祉情報オフィス・ハスカップは、要支援認定を受けた人が介護予防サービス(予防給付)を利用する権利が侵害されることを危惧して要望書を提出しましたが、委員会では3人の委員(衆議院議員)が、誰が要支援認定者の新事業への移行を判断するのかを問いました。

対象者は「利用者の状態像と意向に応じて」判断
 山口和之委員の質問には、宮島俊彦・厚生労働省老健局長が「地域包括ケアのシステムは介護・医療・生活支援サービス・予防などを組み合わせたベースを作っていかなければならない。予防給付(介護予防サービス)を受けている人が“総合サービス”(新事業)に乗り換えるかどうかは、利用者の状態像とか、利用者の選択によって、選んでいいということにしているが、総合的なインフラの整備が必要と考えている」と答えました。
 古屋範子委員の質問には、細川律夫・厚生労働大臣が「総合事業は地域の事情に応じて見守り、配食サービスなど要支援認定者などに総合的で多様なサービスを提供し、要支援認定者などに対する自立した日常生活や介護予防の推進をめざす」、岡本充功・厚生労働大臣政務官が「(新事業の対象者は)市町村と地域包括支援センターが利用者の状態像と意向に応じて判断する」とそれぞれ答えました。

「“軽度者”を遠ざけるものではない」
 中島隆利委員の質問には、細川律夫・厚生労働大臣が「(新事業は)“軽度者”を介護保険から遠ざけるものではない」「(新事業を)実施する予定の市町村の数は把握していない」、宮島俊彦・厚生労働省老健局長が「予防給付と同等のサービスであっても予防給付を望む人は、そちらでいいと考えている」「予防給付の縮小にはならないと考えている」と答えました。

介護予防サービスの提供実態を調査予定
 また細川律夫・厚生労働大臣は、要支援認定者が75万9000人(2006年)から125万8000人(2009年)と増えているのは「制度が実質的に機能している」成果だと評価しつつ、「自立支援に資するサービス提供が不十分」であり、介護予防サービスは「生活援助が中心で、利用者の状況に応じた提供ができていない」ため、「厚生労働省で提供実態を調査し、2012年度報酬改定に向けて介護給付費分科会で検討する」とも答弁しました。
 まとめてみると、「市区町村と地域包括支援センター」が「利用者の状態像と意向」にもとづいて新事業の対象者となる要支援認定者を判断するが、要支援認定者の介護予防サービス(予防給付)の利用を制限するわけではない、しかし、介護予防サービス(予防給付)の“生活援助”は“自立支援”にならないので介護給付費分科会で検討する――と説明されています。
 政府が語る“自立支援”は「介護保険サービスからの自立(=排除)」になるのではないかという危惧もありますが、24日の参考人意見聴取に引き続き注目したいと思います。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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