ページの先頭です。

どうなる? 介護保険

介護職員による医行為の解禁

 現在、介護保険法改正案(介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案)が国会(衆議院)に提出されています。あわせて老人福祉法社会福祉法健康保険法等の一部を改正する法律社会福祉士及び介護福祉士法社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律の改正案も出されています。
 ずいぶんたくさんあるものですが、社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正案では、介護職員による医行為(たんの吸引等=「喀痰吸引等」)を認めることが提案されています。そこで今週は、介護職員の医行為についてみていきます。

続きを読む

「たんの吸引等」は違法だけれど、容認されてきた
 医行為は「医療行為」「医療的ケア」などとも呼ばれますが、これらはたんの吸引や胃ろう・経管栄養の処置などを指します。これらの医行為が必要なのは、在宅や施設の介護保険サービス利用者に限らず、ALS(筋委縮性側索硬化症)患者などの人も含まれます。提供する場所も在宅、施設だけでなく、障害のある子どもたちが通う特別支援学校などもあります。
 これまで、介護職員による医行為は、医師法などに違反するけれど、やむを得ないものとして厚生労働省通知などで、一定の条件のもとで認められてきました(「実質的違法性阻却論」という難しい解釈です)。
 介護職員による医行為を認めることは昨年、「規制・制度改革に係る対処方針」(2010年6月18日閣議決定)、「障害制度改革の推進のための基本的な方向について」(2010年6月29日閣議決定)、「介護・看護人材の確保と活用について」(2010年9月26日総理指示)などで政治課題として求められていました。そして、2010年7月以降、厚生労働省老健局は「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(以下、検討会)を開き、12月10日に『中間まとめ』を公表しました。

介護福祉士と「認定特定行為業務従事者」に認める医行為
 『中間まとめ』をもとにまとめられた今回の社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正案では、(1)介護福祉士と、(2)介護福祉士以外の介護職員で、都道府県などの研修を修了した「認定特定行為業務従事者」に、医師の指示のもとに、診療の補助として、「喀痰吸引等」(医行為)を認める、具体的内容は厚生労働省令で定める、としています。
 『中間まとめ』では、対象となる施設・事業所として介護関係施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、通所介護、短期入所生活介護など)、障害者支援施設(通所施設、ケアホームなど)、在宅(訪問介護、重度訪問介護〈移動中や外出先を含む〉)、特別支援学校を挙げています。しかし、具体的な内容については、今後の国会審議のなかでどの程度明らかになるかという状況にあります。

ニーズに応えるための労働条件は?
 財団法人介護労働安定センターがまとめた『2009(平成21)年度介護労働実態調査』では、介護職員の労働条件などでの悩みは「仕事内容のわりに賃金が低い」が最も多く、「人手が足りない」「有給休暇が取りにくい」「業務に対する社会的評価が低い」「身体的負担が大きい」が続きます。
 介護職員の医行為は病気や障害のある多くの人たちから求められているものですが、新たな責任と負担に見合う労働条件の改善がなければ、さらなる負担となりかねません。
 国会審議を経て改正案が成立すれば、厚生労働省令や介護報酬の検討により、内容が具体化していきます。介護の現場からの声が少ないのではないかというのが気になるところです。

 なお4月22日、2011(平成23)年度厚生労働省第一次補正予算案の概要が公表されました。「東日本大震災に係る復旧支援」として1兆8407億円(一般会計7791億円、特別会計1兆616億円)が計上され、介護関連では利用料負担・保険料軽減措置(275億円)、被災した高齢者、障害者、児童への生活支援等(98億円)、社会福祉施設等の災害復旧(815億円)などが盛り込まれています。「災害介護」の有意義な実施が待たれます。


ページトップへ
プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
メニュー
バックナンバー

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books