大震災の特別対策
去る3月11日、介護保険法改正案(介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案)を国会に提出することが閣議決定されました。しかし同日、「東北地方太平洋沖地震」が発生したため、現在、国会への提出は未定です。
なお、法律の改正には、総理大臣が主催する閣議で法律案(内閣提出法案)が了承され、国会(衆議院または参議院)に提出され、審議を経て修正を含む可決、あるいは否決が行われるので、現時点では介護保険法改正案が成立したわけではありません。
今回は、厚生労働省のホームページに随時掲載されている「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震関連情報」から、介護保険制度にかかわる災害特別対策(3月17日現在)の主な内容を紹介します。
保険料の支払い期限の延長
まず介護保険料ですが、「東北地方太平洋沖地震に係る社会保険料の納期限の延長等について」(3月13日、厚生労働省年金局長通知)で、医療保険、年金保険、介護保険、労災保険などすべての「社会保険料」の支払い期限を延期することが通知されました。延期になる地域は青森県、岩手県、宮城県、茨城県で、被災状況に応じて対象範囲は見直すことになっています。
被災した利用者の実態把握
被災地域の介護保険サービス事業者に、利用者の実態把握に努めるよう依頼したことが、厚生労働省の「東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について(第19報)」(3月17日)で報告されました。
保険証がなくても利用可能
厚生労働省の「東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について(第20報)」(3月18日)では、「これまでに発出している通知」のなかで、介護保険被保険者証がない場合でも介護認定やサービス利用ができるよう、都道府県に依頼したことが報告されました(3月12日、老健局介護保険計画課、高齢者支援課、振興課、老人保健課)。
利用料の支払い期限の延長
被災地で介護保険サービスを利用している人たちの利用料は、「東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の地震による被災者に係る利用料等の取扱いについて」(3月17日、厚生労働省老健局事務連絡)で、支払いが困難なケースは当面、5月末まで猶予されることになりました。
転居した場合の柔軟な対応
被災地で介護保険サービスを利用している人が他市区町村に転居した場合、被保険者の認定について受け入れ市区町村が「弾力的対応」をするよう、都道府県に連絡したことが、厚生労働省「東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について(第19報)」(3月17日)で報告されました(前出)。
事業者の指定期間の延長
介護保険法や障害者自立支援法にもとづく指定事業者については、「東北地方太平洋沖地震による被害者の方々の特定権利利益の保全等について」(3月17日、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第3条に基づく厚生労働省告示第56号)で、3月11日から8月30日までに指定期間が終了する被災地域の事業者の場合、指定期間を延長することになりました。被災地域のケアマネジャーの登録期間も同じく延長されました。
施設サービス
「社会福祉施設における緊急的対応について」(3月11日、厚生労働省社会・援護局総務課依頼)では、全国社会福祉協議会宛に、各地の社会福祉法人に対し「避難生活が必要になっている在宅の高齢者、障害者、乳幼児や妊産婦等の要援護者」に定員を超えていても福祉施設で受け入れる空きスペースを「福祉避難所」として提供するよう連絡することを依頼しました。「福祉避難所」の経費は災害救助法にもとづき、市区町村が支払うことになっています。
また、「『東北地方太平洋沖地震』による社会福祉施設等に対する介護職員等の派遣依頼」(3月15日、厚生労働省老健局、社会・援護局等事務連絡)にて、3月28日から4月中に「福祉避難所」に派遣できる介護職員の募集をはじめました。
さらに、「被災した社会福祉施設、医療機関等に対し、独立行政法人福祉医療機構の災害復旧貸付について」(3月15日、厚生労働省社会援護局福祉基盤課事務連絡)では、社会福祉法人などへの災害復旧のための貸付の融資率などを優遇することが連絡されました。
生活福祉資金は対象を拡大
低所得世帯や障害者、高齢者のいる世帯に社会福祉協議会などを通じて貸しつけられる生活福祉資金(総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金)は、「生活福祉資金貸付(福祉資金「緊急小口資金」)の特例について」(3月11日、厚生労働省社会・援護局長通知)で、低所得世帯に限らず、被災地域に暮らし当座の資金が必要な世帯に対象を広げることが通知されました。
現地では、被災者や支援者のみなさんが懸命な日々を過ごされていることと思います。回復のきざしが広がっていくことを願っています。