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どうなる? 介護保険

「生活援助」のゆくえ

 3月11日に起こった「東日本大震災」、12日の福島原発事故とあいつぐ大規模災害は現地をはじめ多くのみなさんに強い衝撃を与えていますが、被害にあわれた方がたに心からお悔やみを申し上げます。今後も被害の拡大や苦難が予測されますが、それぞれの場所で回復に向かうことを祈念いたします。

 昨年、社会保障審議会介護保険部会(以下、部会)の「介護保険制度の見直しに関する意見」で、“軽度の要介護者”(要支援1・2)のホームヘルプ・サービス(訪問介護)は「多くの時間が生活援助に割かれている」が、“重度者や医療ニーズの高い高齢者”(要介護3~5)にサービス(給付)を重点化するため、“要支援者・軽度の要介護者”(要支援1~要介護2)は「対象外」にするか、利用料を「2割に引き上げる」という提案が盛り込まれました。
 しかし、民主党厚生労働部門会議・介護保険制度改革ワーキングチームは「要支援者・軽度の要介護者への生活援助サービスは継続する」と提言をまとめ、部会の意見を覆しました。
 ところが、今年2月7日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)で配布された『座長メモ』には、「給付の重点化をはかること」と今後の議論の方向性が示されました。3月16日の第72回分科会は中止となりましたが、今回は「生活援助」をめぐる動きをチェックします。

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「在宅」の費用は「施設」の3分の1
 介護保険サービス利用者は約480万人(2009年度)と報告されていますが、これは年間1度でもサービス利用した人(年間実受給者)の数字です。1年間続けて利用した人(年間継続受給者)は約287万人で、193万人も減ります。
 年間平均利用者は392万人で、このうち約7割が在宅サービス、約2割が施設サービス、残りの約1割が地域密着型サービスを利用しています。2009年度の給付費(利用料1割負担を除く9割)は7兆5620億円で、在宅サービスが48.5%、施設サービスが43.5%、地域密着型サービスが8.5%を使っています。ひとり当たり平均月額費用(介護費)は約16万円で、在宅サービス約11万円、施設サービス約33万円になります。

「介護のある暮らし」を支えるホームヘルプ・サービス
 施設サービスの3分の1の費用で済んでいる在宅サービスは、とても“安上がり”で、その費用の約6割をホームヘルプ・サービスが占めています。要介護認定者(要介護1~5)が利用するホームヘルプ・サービスは「身体介護」(47.9%)、「身体介護・生活援助」(35.1%)、「生活援助」(43.1%)、「通院等乗降介助」(12.4%)に分かれ、「生活援助」の内容は掃除、洗濯、ベッドメイク、衣類の整理・被服の補修、一般的な調理・配下膳、買い物・薬の受け取りなどとされています。

わかりづらい制限が続く「生活援助」
 「生活援助」は、草むしりやペットの散歩などが「家事援助行為の不適正事例」とされるなど、80代、90代を中心とする利用者に限定された内容を理解してもらうのが大変なスタートを切りました。また、「生活援助」では足りないサービスは市区町村事業(軽度生活支援事業・配食サービス等の生活支援サービス)やシルバー人材センター、NPOなどの住民参加型福祉サービス、ボランティアなどの「有効な活用」で補うものとされてきました。
 介護保険法が改正された2006年度には、要支援1・2の利用者は介護予防サービスに移行し、介護予防ホームヘルプ・サービスは月単位の定額報酬となり、「決まった金額で必要に応じて何回でも利用できる」と説明されましたが、週1回以上の利用ができない実質的な利用制限が行われました。
 また、認定ランクにかかわりなく、高齢の配偶者であっても、働いている単身の子どもであっても“同居家族”がいる場合は、「生活援助」を提供しないという保険者(市区町村)が増えています。厚生労働省は「一律機械的な制限をしないように」と課長通知(2009年12月25日)を出しましたが、その効果は確認されていません。

「生活援助」は「生活支援サービス」に移行する?
 3月11日、介護保険法の2回目の大きな改正案の通常国会提出が閣議決定されましたが、そのなかに「保険者の判断による予防給付と生活支援サービスの総合的な実施を可能とする」とあります。厚生労働省が開催した全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議(2011年2月22日)資料には、具体的内容として「介護予防・日常生活支援総合事業(仮称)の導入イメージ」が示され、市区町村や地域包括支援センターが「要支援者・介護予防事業対象者」を“選定”し、予防給付(ホームヘルプ・サービス、デイサービス)を改めて、「予防給付」「配食」「見守り」に細分化したものが「総合的で多様なサービス提供が可能」と図解しています。
 一方、厚生労働省社会・援護局は2010年7月から安心生活創造事業推進検討会を設置し、「一人暮らし世帯」を支援するため、市区町村が寄付金や賛助会費などを集め、地域住民が「見守り」や「買い物支援」をする安心生活創造事業が構想されています。具体的には、「生活・介護支援サポーター養成事業」(厚生労働省2010年度予算約2億6000万円)を受講した“地域住民”の“たすけあい活動”により「調理・買い物援助、住宅・庭の維持管理、通院・薬局への同行等を生活圏域内で実施」するとされています。
 「介護予防・日常生活支援総合事業(仮称)」の登場が、介護保険の「生活援助」を市区町村事業(「生活支援サービス」)に移行するものになるのか、また、「生活支援サービス」が現行の「生活援助」の代わりになるのか、注目したいと思います。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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