介護報酬見直しの論点 その2
2月7日に開かれた第71回介護給付費分科会では、(1)利用限度額(区分支給限度基準額)についての調査結果、(2)介護認定の有効期間の見直し、(3)2012年度改定に向けて、がテーマになりました。
今回は、(2)介護認定の有効期間の見直しについて報告します。
介護認定をめぐる議論
介護認定(要支援認定、要介護認定)は介護保険の運営主体である保険者(市区町村)が実施していますが、判定システムは厚生労働省令で3年ごとに見直し(改定)が行われています。
2009年度の3回目の見直しでは、厚生労働省老健局長の私的検討会である要介護認定調査検討会で、基本調査項目の削減やコンピュータ判定システムの変更が検討されました。しかし、09年1月に『認定調査員テキスト』『介護認定審査会委員テキスト』がひそかに改訂されたことが表面化し、介護認定の見直しについて経過措置が設けられ、テキストの再改訂が行われました。
一方、公益社団法人認知症の人と家族の会は「介護保険制度改正への提言 要介護認定の廃止など利用者本位の制度に」を発表し(2010年6月)、「暮らしの中での介護の必要性」を基準に「保険者を加えた新たなサービス担当者会議の合議」によりサービス利用の可否を決めるよう求めました。これに対して、介護の社会化を進める一万人市民委員会2010は、「要介護認定システム廃止・簡略化論の誤りについて」(2010年7月)を公表しました。また、NPO法人高齢社会をよくする女性の会は、長妻昭厚生労働大臣(当時)に提出した「要望書」(2010年4月)で、「介護度は3段階にわけ、サービス内容は当事者に任せる」ことを求めています。
介護認定の次期見直しは、介護給付費分科会で議論
2010年11月30日、社会保障審議会介護保険部会(以下、部会)は「介護保険制度の見直しに関する意見」で、介護認定については「必要に応じて介護給付費分科会などにおいて十分議論されることが望ましいと考える」としました。そして、12月24日の第70回介護給付費分科会では、池田省三委員(龍谷大学教授)が「思い付きで、廃止だ、3段階だという議論が平然と横行する」、大森彌分科会長(東大名誉教授)が「認知症の現場のことをしっかりつかまえた上で、どういうサービスが開発可能か、その検討から入るのが筋じゃないか」として、介護認定廃止などの提言を批判しました。
いずれにしても、2012年度の介護認定の4回目の見直しについては、介護給付費分科会で議論が行われることになります。
まず、「有効期間の延長」で事務負担を軽減
また「介護保険制度の見直しに関する意見」では、介護認定について「市町村の事務負担が大きい」ため、「当面、(中略)事務の簡素化を速やかに実施すべきである」としました。これを受けて厚生労働省は「要介護認定等に係る市町村の事務負担を軽減するため、要介護認定等の有効期間を延長する」ことについて、2011年1月19日から2月17日の期間、パブリックコメント「介護保険法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見」を募集しました。パブリックコメントとは、行政手続法に基づき、法律や法令などについて公平性と透明性を確保するために、広く国民から意見を募集するものです。
2月7日の第71回介護給付費分科会では、厚生労働省からパブリックコメントを募集中であることが報告されました。このパブリックコメントの結果の公表時期は未定ですが、2011年4月1日から区分変更、更新の認定期間の上限は12か月に延長される予定です。
次回は(3)2012年度改定に向けてについて報告します。