介護報酬見直しの論点
先週2月7日に開催された第71回介護給付費分科会で、2012年度の介護報酬改定に向けた議論がスタートしました。この日は、(1)利用限度額(区分支給限度基準額)についての調査結果、(2)介護認定の有効期間の見直し、(3)2012年度改定に向けて、がテーマになりました。今回から3回、第71回分科会の内容について報告します。
介護報酬の決まり方
介護保険サービスの費用である「介護報酬」は3年ごとに見直されます。その内容は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の下にある介護給付費分科会で議論されます。
介護給付費分科会では、介護報酬や運営基準などの見直しについて「こうしたらどうでしょう」という報告書を作り、社会保障審議会に提出します。その報告書をもとに、厚生労働省が見直し内容をまとめ、再び社会保障審議会経由で介護給付費分科会に「これでいいですか?」と、厚生労働大臣名で諮問書が出されます。そして、同分科会から社会保障審議会を経て「いいですよ」と答申書が出て、厚生労働省がパブリックコメントなどで国民から意見を聞く手続きを経て、厚生労働省令などを改正して実施するという、というのがおおまかな流れです。
介護給付費分科会の委員
介護給付費分科会(大森彌座長=東大名誉教授)には現在、24人の委員がいます。事業者代表9人(日本介護福祉士会、全国老人保健施設協会、日本医師会など)、被保険者代表5人(日本経済団体連合会、全国健康保険協会、日本労働組合総連合会など)、利用者代表3人(全国老人クラブ連合会、認知症の人と家族の会、高齢社会をよくする女性の会)、保険者代表2人(全国市長会、全国町村会)、学識経験者5人、という顔ぶれで、事業者代表が4割を超えます。なお、事務局は厚生労働省老健局です。
利用限度額を超えるケースは、ケアマネジメントに問題あり?
2月7日の介護給付費分科会では、利用限度額(区分支給限度基準額)についての調査結果が報告されました。これは、社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」で、「限度額を超えてサービスを利用している人の状態や利用状況等の実態を把握、分析することが必要である」との指摘を受けて実施された「区分支給限度基準額に関する調査結果」の報告です。全保険者から限度額超過者(4752件)と限度額の7~9割の利用者(7978件)という2タイプの利用状況(合計1万2730件)を集めて、分析したそうです。
委員の関心を集めたのは、要介護1、3、5の超過者の週間ケアプラン(50例)を“点検者”4人(選定方法、資格などは未公表)が評価した意見で、「自立度を改善する内容ではない」「リハビリや訪問看護など医療系サービスが少ない」「生活援助サービスが過多」「適切な作成ではない」という内容です。厚生労働省は「あくまでも参考資料」と口頭で説明しましたが、学識経験者の委員は「画期的な調査」「すばらしい調査」と称賛しました。
また、厚生労働省からは超過者について、「2種類以下のサービス利用が8割」で、「医療系サービス、医療的ケアの利用は少な」く、超過する理由は「利用者本人や家族からの強い要望」が多いからなので、「まず、ケアマネジメントの実態を踏まえた上で、議論をするべきではないか」という提案が行われました。
次回は、(2)介護認定の有効期間の見直しについて報告します。