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和田行男の「婆さんとともに」

おろそかになりがちな基本的なこと

 亡くなられた漫画家の手塚治さんは、「ひと筆で丸が描けなくなったときが漫画家を辞めるとき」と言っていたことを何かで読んだ。
 つまり「基本的なこと」がとても大事ということだと思うが、僕らの仕事もそうではないか。

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 珈琲の基本は「豆」「焙煎」だそうだ。ここは、苫小牧で35年間自家焙煎の珈琲専門店を続けてこられた伽羅(きゃら)。焙煎機が客席にオープンなところもしびれる。また行きたい。なおっちゃんよろしく。

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 僕らの仕事にもいろいろなことに「基本的なこと」はある。
・背中を圧迫する状態(寝る時など)のときは、衣類にしわがよらないようにする
・食事介助するときは、本人の利き手側から口に運ぶようにする
 などなど、書けばきりがないほど。
 そんな「基本的なこと」のひとつに「情報を提供する」ということがある。
 僕が国鉄にいたとき、民営化を推進するために「国鉄職員は働かない、態度が悪い」など「国鉄職員のダメさ」をマスコミを通じて流されたが、その中には言われてもしょうがないこともたくさんあった。
もう記憶が定かではないのでご指摘を受けるかもしれないが、そのひとつに電車が止まったとき車内の乗客に「今何が起こって電車が止まっているのか、その理由も状況も乗客に知らせない」というものがあった。
 これももっともなことで、今では必ず止まっている理由や回復の状況など乗客に情報が出されている。僕も乗客として乗っていたときにアナウンスの有無がこれほどまで心理的に影響を及ぼすのかと感じたことがある。
 僕らの仕事で一例を出せば、車いすに乗っていただいて移動するときがそうではないか。座っている人の椅子を動かすときがそうではないか。
 車いすで移動するにあたって、「止まりますよ」「右に曲がりますよ」「後ろに動きますよ」と乗車している人に、車いすを押す介護職が情報を出しているかどうかだが、情報を出しながら押しているだろうか。
 また、座っている椅子を動かす時に「すいません、少し椅子を動かせてください」と伝えないまま、いきなり椅子を動かす介護職が目に入ったりもする。
 こうしたことは簡単なことであり誰にでもできる基本的なことで、介護職になるために受けた講習会などでは必ず伝え聞くことのはずだが、こうした基本的なことほど時間とともに失いやすい。
 何事も「基本的なこと」がベースであり、それが染み付くようにするには「こうしなさい」と伝えるだけではダメで、「なぜそうするのか」を伝えることが必要なのと、先輩として「常に変わらぬ基本的なことへの真摯な言動」を後輩に見せ、そうしたことを大事にする「風」を現場に吹かせ続けないと、基本的なことだけに、どんどん後退していくだろう。
 こうした「基本的なこと」がどこまで染み付いた介護現場になっているか・できているか、先輩として後輩に見本を見せ続けることができているか、まずは自己点検してみよう。
 かくいう自分も、自分が関係する事業所でやってみることにする。かくいう自分自身ができているか職員たちに確認してみることにする。

ご案内
○11月23日(土)21時~22時13分
○番組名 「NHKスペシャル」
○母と息子の介護記録3000日 認知症800万人時代への処方箋(仮)

 NHKでカリスマディレクターと言われた方が、自身の親の介護を職業柄映像に収めていたのですが、それを基にあれこれ医師や看護師とともに和田がコメントしていく内容です。
このディレクターの方の親への言動がとてもステキですよ。素のままの映像が流されますが、家族としての情の交換がベースにあり、知恵とユーモアに満ち満ちたディレクターの言動にぜひ触れていただければと思います。


コメント


「認知があると大変だよね〜」「やっぱ○○さんが一番手がかかる?」と医療の人に言われた。

必要な支援の量も中味も、その人その時の状態にもよるし。う〜ん。
おそらく、相手の期待に反するそれらしきことを返しながら、頭をぐるぐるひねっていたら
相手も頭をひねりだし「そうだよね。○○さんみたく体が動かなくて困ってる人もいれば、○○さんみたくコミュニケーションとれなくて困ってる人もいるもんね。そうだよねそうだよね」って。

相手の顔が、まちがいなく一瞬、支援者の顔に変化して見え、でてくる言葉が変わりました。
自分も色んな人に影響を受けて生きているんだと思う。
気づいた人が気づいた時点で、気づいたことに基づき起こす、小さな小さな時に勇気ある筋を通そうとする行動の積み重ねが
マニュアルにも勝る、目指すところへの遠くて確実な道のりなんだろうなぁと思います


投稿者: くたびれの未知 | 2013年11月19日 12:52

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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