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和田行男の「婆さんとともに」

副作用

 モーリさんからいただいたコメントにあった医師の言葉「ケアにも副作用がある」はズッシリと重みのある言葉であり、「副作用」を常に意識して仕事をしていかなければならないと改めて思った。

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 自宅で一人暮らしをしていたAさん。それを支えていたのが小規模多機能型居宅介護(以下「小規模」)である。こいつには、3つの機能「通い」「宿泊」「訪問」が備わっており、自宅から小規模に通ってくる「通い」を軸にして、それを組み合わせて自宅生活を継続させていく仕組みだ。
 Aさんには認知症があり、自宅で一人にしておけない状態で、毎日「通い」を組み、それだけでも不足で、時々は「通い」から自宅に戻った後、さらに「訪問」をする状態であった。
 「通い」もすんなりと応じていただけたわけではなく、お迎えに行くとバリケードが張られ、来られてからも混乱の連続で、職員たちはあの手この手で何とか自宅生活を続けられるように支援していた。
 そのAさん、自宅で転んで腕を骨折。もちろんその状態に対して、小規模といえども自宅で過ごすことを24時間体制で応援するなんてことは非現実的で、「小規模の宿泊を連続して使い、再び自宅へ」というシナリオを描き、本人の意思とは無関係に小規模に生活の場を移すことにしたが、当然のように「お泊り」に対する副作用が出て大混乱。それでも根気強く応じ、時間の経過とともに何とか24時間を通して小規模で過ごせるようになった。
 ところが、骨折は完治したが、時間がかかったこともあり、認知症の進行もあって、自宅に戻れる状態ではなくなってしまった。あっちたてばこっち副作用である。
そこで、併設のグループホームに空室が出れば、そちらに移ることも視野に入れて「今後のこと」を検討することになった。
 小規模は「生活の拠点」(多くの場合は自宅)における生活を継続できるように支援する仕組みであって、小規模を「生活の拠点化」させるのは「仕組みの筋」ではない。
 Aさんの場合も、(自宅+小規模)→(小規模のみ)となったが、それはあくまでも「一時的なこと」で、Aさんの今の状態にあった「生活の拠点」を見出すことが、支援策としての優先順位は高い。
ただ、高いことはわかってはいるが、Aさんを「仕組み」にあわせてグループホーム(生活の拠点)に移せば、そのことによる「副作用」もくっきりと見えるのだ。
そのため、グループホームに移すことや他の施設に移すことは「本人本位」で考えればやりたくない。
でもこのまま小規模を「生活の拠点」にすると「仕組みの筋が通らない」ばかりか、通い時間帯に訪問診療を受けることができないなど、別の「副作用」も生じてくる。
同じ小規模を使っているBさんの場合、利用中に脳梗塞で重篤な状態となり、家族等とも協議した結果、小規模で「看取り」を行うことになった。しかし、経口摂取は無理・胃ろうも行わないため、毎日職員が点滴のために受診を行うしか手がなく、そこに仕組みの「副作用」が起こっている。医師も訪問看護師も僕も職員も家族も役人さえも「??」であるが、それが「今の仕組み」なのだから今のところ致し方ない。
当然のことだが、法令に基づいて運営推進会議で利用者へのサービス提供状況を報告し評価を得ているが、構成員の皆さんも小規模が生活の拠点となることへの疑問をもちつつ、「本人」を真ん中において「どの道がもっとも副作用が少ないか」を考えると、小規模で過ごさざるを得ないという結論になり、仕組みの副作用にジレンマを感じてしまうのだ。
 「副作用」は、クスリによるもの、ケアによるもの、そして仕組みによるものと多様にあり、それがまた、当事者によって支援する人によって、それらを含めて環境によって出現の度合いも違うという複雑な要素によって起こるが、常に「副作用」ということを意識して「ベスト」は望めなくとも「よりベター」を追い求めて事にあたることが、専門職の専門性だということを肝に銘じて仕事していきたい。

追伸
 奈良市のトークライブに参加された皆さん、いかがでしたか。
 僕的には内容の良し悪しはともかく、あの雰囲気がたまらなく好きですね。来年もまたやりましょうと言ってもらいましたが、もうすでに頭の中は来年に向かっているほど気に入っています。
 僕の友人が、友人と一緒に演奏のため東京から来てくれました。友人の友人は介護とは無縁の業界の人でしたが、友人によると、その友人は、業界のことはわからないが「感じるものがあった」そうです。またひとり応援団が増えた感じがしますよね。
 それもこ.れも、来てくださる皆さんがいてくれればこそで、本当に感謝です。ありがとうございます。
 主催者「Kaigo K」の皆さん、本当にありがとうございました。
 またお会いしましょう。

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 昨年6月NHKプロフェッショナルで全国に「裸の介護魂」を届けた彼氏は、今年も裸魂の登場でした。ハハハ。
 ちなみにブルーのTシャツの背には「Kaigo K」と誇らしげに印字されています。パワフルな仲間たちで、今年も「気」を注入されました。来年はこぞってステージに上がりましょうね。
 今年の秋には北海道でもライブハウスでトークライブがやれそうです。カタチさまざまに愉しくやりたいですね。


コメント


 毎週楽しみにして拝見しております。
 ライブ、良いですね!北海道は札幌でしょうか?
近くなりましたら教えて下さい。是非行きたいので休みを取ります。


投稿者: みき | 2013年05月15日 16:06

和田さんのトークライブ。全国に輪が広がる事を期待しています。いつか婆さん達もライブ会場に引っ張って来て、一緒に楽しめると良いですね。


投稿者: 周南市のトークライブ主催者より | 2013年05月16日 18:49

副作用について、こんなに深く大きく追求してくださって有難うございました。ケアにはどこかで折り合いを付け付けざるを得ない場合が良くあるように思いますが、誰のための折り合い?って考えます。奈良のトークライブ、折角教えて頂いたのにGHの夜勤で行けませんでした。残念!!


投稿者: モーリ | 2013年05月17日 22:09

介護の副作用、有ります。
在宅から、グループホームに来た
謎だらけで人慣れしないと自分で
言ってたSさん。
1ヶ月が過ぎた最近は、職員が、
他の利用者さんと関わってると、
近くに来て、足で壁をトン、トン、
ヤキモチ焼いて、ブツブツ。
嬉しいやら、溜め息やら.....


投稿者: かめ | 2013年05月20日 10:14

「ケアの副作用」について深く広く多くの仲間たちに伝えて下さって大変嬉しく思いました。本人本位と何処かで折り合いを付けなければならない現実、悩みは尽きません。奈良のトークライブ、グループホームの夜勤で行けませんでした。残念!!


投稿者: モーリ | 2013年05月20日 16:59

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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