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和田行男の「婆さんとともに」

予測と手だて

 先日、小規模多機能型居宅介護を利用している婆さんの同居家族が、自宅で飼っている犬を連れて「通い」のお迎えに来られた時のことです。
 その婆さんがその犬を見て傍にいた職員にこう言いました。
 「私の家でもこんなくらいの犬を飼っているのよ。かわいいわね」
 いつも一緒に過ごしている犬ですから家族は笑っている他なかったようですが、認知症って、認知症を患って苦しんでいる方々から怒られるかもしれませんが、ある意味「人としてのステキさ」を感じさせてくれますよね。
 これは僕らしか味わえないステキさで、これを「ステキだな」と思えているうちは、辞められないんですよね。

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 さて2013年も本格始動しました。
 政権が変わって「株バブル」に沸いている人たちもいることでしょうが、今年も地道にコツコツいきますね。
 僕はクリスマスからの体調不良が長引き、一度は快復したものの次にはふくらはぎに痛みが出て歩けなくなり、昨日くらいからやっと普通に動けるようになりました。皆さんも体調にはくれぐれも気をつけてくださいね。
 昨年末、NHK「プロフェッショナル」に登場してすっかり有名人になったグループホーム入居者のNさんが、年末に美容院へ行ったときのことです。
 そこの美容師さんはヘルパー資格をもっていて、実際に実務経験もあり、また施設にボランティアでカットをしに行っている方なので「この人の場合はこうかな」といったように、ある意味「人の見極め」に慣れているようです。
 Nさんは初めての利用でしたが、美容師さんがプロフェッショナルの放送を見ていたこともあり、Nさんに少しかかわっただけで「この人の場合は、部分部分で仕上げていくカットの方法ではなく、仕上がりはともかく全体をカットしていくことを優先しよう」と見極めたようです。
 Nさんは、頭の半分を100%仕上げても、半分まできたところで「もうええわ」となり、途中で終わらさざるを得なくなる可能性の高い方だということを見抜いたということですが、僕はこの話を聞いて「すごいなぁ」と思いました。
 案の定、カットの途中で「もうええわ」とか「もう終わろう」と言って、何度も美容台から降りようとされたようです。
 出来上がりは全く不十分で、美容師としては「仕事半ば」でしょうが、見た目には一応全体がカットされて整っているので「おかしい髪型」にはなっていません。そこが見極めの結果として素晴らしく、専門性を感じます。
 随分前にちびっこを初めて美容院に連れて行った時、途中で嫌がって終わらせるしか方法がなかったのですが、頭の半分は仕上がって半分は手つかずという「おかしな髪型」のまま帰ることになってしまいましたからね。
 きっと子どものカットをやったことがないか、聞き分けのよい子の経験しかなく、「途中で嫌がって終わらざるを得なくなる」という予測をもっていなかったのでしょうね。悲惨な髪型になっていましたし、料金をとりませんでした。とれないよね、ハハハ。
 結果的には後日同じ所に行って無事100%終わらせ、料金も支払ってきましたがね。
 今日の東京都心は「初雪・ドカ雪」です。

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 予測の悪い天気予報とドライバー、手だての悪いおまわりさんによって都心の幹線道路さえ大渋滞に。
 雪国じゃ、あり得ないですよね。
 予測と手だては、どんなことにも共通する大事なことです。


コメント


リビングにいた入居者さんが「わぁ雪?すごい!」と他の入居者さんとベランダにかけより、きゃーきゃー言ったあと窓を離れ5分後「わぁ、雪ふってんの?」とほぼ同じ光景が繰り返されました。
リビングには他にも入居者さんがいたのでざっと→
1人×10回(5分おきくらい)×9人(リビングに入れ替わり)→想像にお任せしますが、雪で感激の嵐がふきまくっていました!
私はむかしから「人相手の仕事は向いてないね」と言われるくらい、自分でも人好きとは思えないんですが、それでも続けてきて、だいぶ変わってきたなぁと思います。時々へこんだりもしますが。今年もよろしくお願いします!


投稿者: ばーばら | 2013年01月18日 16:16

本日津のセミナーに参加していた癌患者です。突然胸を見せてしまってすみませんでした。
介護の仕事に関わって15年。高校生の頃より悩みながら介護に関わっていました。
自問自答しながこれでいいのかと施設に就職したり、病院にいったり、昨年癌になり家族愛に本気で肌で感じ、今は訪問介護士として仕事をしています。
もっとゆっくりお話をしたかったです。指導していく立場として次世代の若者にあのようにはっきりと言葉で伝えるというのはすごく難しいことだと思います。
自分の表現力のなさにがっかりです。本当に今日はすごくいい機会になりました。
私の中で体に刻まれることになると思います。

昔は当たり前にできていた介護ということが今は国の政策や仕事としてでしかできなくなった今の世の中が本当は異常なのかもしれませんね。

ありがとうございました。
こんな奴がいたんだなと少しでも覚えていただけたら幸いです。


投稿者: 細野恭代 | 2013年01月18日 19:21

髪を切りに行きました。
後ろ頭→右側→左側→頭頂部→前…とカットが進むなか、ふと和田さんのブログの美容師さんを思い出し、その先見性を実感しました。

確かに切りかけでは帰れないな〜。

話は変わりますが「チクショウの○○茶」と、入居者さんが言っていました。
○○茶の部分を聞き逃しましたが、若い職員が湯飲みにお茶を並々注いだことを不快に思って呟いたそうです。
新しい発見がまた増えました。


投稿者: わたる | 2013年01月19日 23:05

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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