変われば変わり・代わる
「僕のことでしょうか」って思いきって聞いてみたんですが「いいや、ちがう」って言ってもらえました。
(消えつつある「あの頃」も「この頃」に代わり、今の「この頃」もいつかは「あの頃」になるのだ)
「この野郎!お前なんか嫌いだ!」
そう言って手を振りかざしたAさん。振りかざされたのは、Aさんが暮らしているグループホームの新入2か月目の職員。
Aさんは温和な人であり、その職員もバカがつくほど丁寧な対応ができるヤツであるが、それでも夜勤で1対1になると、Aさんから手を振りかざされてしまう。職員は自信喪失で、Aさんから引き気味であった。
そんな職員が一念発起。
ある日の夜勤のとき、Aさんに映る「怖々・おどおどした態度の自分」を変えて、自分から積極的に声をかけ、かかわりをもった。
するとAさんが
「ここには嫌なやつがいるんだよ」
と話してくれたので
「僕のことですか」
と堂々と聞き返すと
「いいや、ちがう」
と言ってくれたというのだ。
認知症があるAさんにとって、まるで別人のように変わってしまったその時の職員は、Aさんの言う「嫌な奴」と「同一人物」ではなく「別人」だった。
ということだ。
「他人を変えるなんて大それたことを考えるより、自分が変わるほうが簡単やで!」
いつも研修会でこう話させてもらっているが、この職員のようにAさんから見て「別人」になれば、「嫌な奴」も「話したくなるヤツ」に代われるということだ。
「あなた、食べたあとの食器を自分で片づけなさい」
柔和な言葉の中にも毅然とした姿勢をみせたBさん。
「そう言うなら、あんたが片づけてくれればいい」
男性入居者のCさんがそう切り返した。
「私は、あなたの女中ではありません」
どこまでも柔らかい言葉だが姿勢は一貫しており、そんなやりとりが少し続いたのち、男性入居者は食器をキッチンにもっていった。
Bさんは入居当初、「馴染みのない場所・人・こと」に混乱して十数時間行方不明になったことのある人だった。
その後も、いつも小声で独りごとをつぶやき、自分から何かをすることも他人に交わろうとすることもなく、思いついたかのように一人で外へ出て行かれる人だった。
そんなBさんに対して職員は積極的に声をかけることもなく、あるがままにしてしまうことが多かったが、職員の支援力が引き上がるに伴い、声をかけることが増え、家事や買物など脳や身体を使う機会が増え、他人と交わる機会が増えた。
その結果、Cさんに対してこんなことが言える人にまで取り戻すことができたのだ。
小声でぶつぶつ独り言を言っている姿ではなく、きっとこれが本来のBさんなんだろうと思う。
これも職員が変わったからこそ婆さんが変わり・取り戻せた=仕事ができたということだが、職員はまだそのことには気づけていないと思う。
コメント
「良きあの頃」にするため「この頃」をとても大事にしている和田大先輩の素晴らしい言葉です。生きいきとしている利用者さんの姿が目に浮かぶようです。
この職員さんが一念発起したきっかけは何だろう?
職員が変わったからご利用者さんが変わわれ・本来の姿を取り戻せたのなら、この職員さんにも変わるきっかけを与えた何かがあったんだろうなと思います。
「人は変わらないけど、自分は変えられる」と聞きます。最近まで、人に「合わせて」自分を「変える」または人に自分を「合わせる」ことだと、自分を変えることに少々無理を感じていました。
今日、和田さんのブログを拝見して、少し解釈が変わりそうです。
新しい職場では何事も大変です。年数の 長い職員は 自身の責任に追われ 新人にしわ寄せなんてありかも。大変だな。でもマイナスにはならないはずどこかで喜びになって帰ってきます。
現場で長く勤めれば自身に甘さがでます。新人 旧人含めてのチーム 。 新は懸命に頑張る 旧はそれ以上に働かないとね。
わたるさんへ
職員さんの気持ちを変えたのは、そのためにいる施設長で、当たり前の仕事をしたということでしょうね。
和田さんへ
コメントありがとうございます。
当たり前のことが出来る…各々やるべきことがあるのですね。
施設長はどんな言葉をかけられたのか、それとも行動で示された…和田さん以前に上司、リーダーの機能と大切さをブログで書かれていたことを思い出しました。
当たり前のこと…責任と覚悟…介護職員としての当たり前をしない、仕事をしない理由を人のせいにしたり正当化したりするようでは、介護職員としていけないですね。
一念発起した職員さんがいる施設は、施設長を始め、とても温かい人や施設なんだろな〜と想像します。
マメさんへ
新しい職場で、初めてご利用者さんに名前を呼ばれました。とても嬉しかったです。
いつか私が新人でなく旧になった時、どんな旧になってるかな〜。
チームケアは本当に大切だと思います。職員間の良い空気、悪い空気はご利用者さんに伝わると。
新人だから気付くこと、旧だから気付くこと、お互いを尊重し合って、よりよい仕事と環境作りを目指したいです。
新しい仕事場で少しずつ利用者様に親しくなって行く事の喜びの中にも落とし穴はあります。 決しておごらず初心忘れないようお互いに頑張りましょうね。やっぱり長く経験をつまれてきた婆さん じいさんずには 我々若輩者はあくまでも 子供であります
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