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和田行男の「婆さんとともに」

労人化対策を

 50年代から80年代頃のオールディーズナンバーを生演奏して、それに合わせて自由に踊ることができるライブバーがある。

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 ここ1週間で名古屋の栄と京都の祇園店に行ったが、たくさんの高齢者が生き生きする姿に出会ってとっても気持ち良かった。

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 ライブハウスは好きで時々出かけていた。若者たちの場所という印象があるが、さすがに音楽がひと昔ふた昔前だけあって、僕よりもぐっと年輩の方がたくさん来ていて驚いた。バンドマンもそれなりの年齢だ。
 見栄えは決してスマートとは言えないおっつぁんおばつぁんたちがお洒落して、息も切らさず踊りまくっていた。
 一緒に行った仲間の役人は「これぞ介護予防」なんて言っていたが、僕はこうした高齢者が気楽に飲んで歌って踊れる場所がなくなってきているのではないかと危惧している。
 僕が行きつけていた東京品川区のとある飲み屋街のある店も、遅い時間まで(早い時間と言ってもいいのかな)、高齢者たちの社交場として盛んである。東京の下町で飲むと時折出くわす。しかもここはライブハウスと違って階段がないから気安く来易い。
 店はほどよくしなびて敷居が低く、常連さんたちでいつも賑やか。僕が後輩たちと一緒に行くと気楽に声をかけてくれるなどみなさんフレンドリーなのだ。ここなら高齢者が安心して飲めるし歌えるし踊れる。
 さっきのライブハウスでも40歳代くらいの女性たちのグループが、60歳くらいの男性に声かけられエスコートされ、チークダンスを踊っていたりする。
 俗っぽい言い方をするとナンパであるが、いやらしさがなく、とても態度がスマートで、「ステキやなぁ」という印象ばかり残った。各人各様に自分が楽しむ大人の姿を見せてくれるからだろう。
 老年夫婦もきていたが、手をつなぎ、歌い手に合わせて振りをつけて踊っている姿や時折「チュー」し合う姿には感動した。
 また東京・上野には、舞台に上がって自分で演奏し歌わせてくれるフォークソング系のライブバーもある。ここはもう少し若い団塊の世代でいっぱいだ。みんな思い思いに、飲んで歌って語りまくっている。
 でもライブハウスに来れる人なんていうのはほんのちょっと。品川の店のように、住んでいる町の身近なところに高齢者が気楽に立ち寄れて参加できる「大人の社交場」があるといいなといつも思う。
 うちのボスとは「高齢者の社交場をつくりたいなぁ」なんてよく話すが、今のデイサービスやサロンではお行儀が良すぎてつまらない。きっとキャバクラやホストクラブのほうが生きる力が湧いてくるだろうし、みんなでか細く歌うよりは生バンドがくりだすビートのほうが身体は反応するだろう。そんな生きる力が湧くような社交場をつくりたい。
 介護保険はまだ「大人の遊び心や欲求」まで満たしてくれる制度にはなっておらず、遊び心を応援してくれない。最先端と思われるグループホームでさえ、昼間から酒を飲ませてくれるところや夜の居酒屋にくりだし飲んで歌ってというところは少ないだろう。ましてライブハウスやホストクラブに行くなんて…。
 まだまだ日本社会には「ええ年して」とか「年寄りがみっともないことを」といったタブーがあって、それが生きる力を弱めているとしたらもったいないが、次々と世代交代して次々と産まれてくる新高齢者たちがこうしたタブーをぶち破っていくだろう。最近では高齢期や熟年期におけるセックスの指南書やDVDを見かけたりするが、とても素晴らしいことだ。ただセックスは「閉じこもり」を促進するからなぁ…。
 昔流行った「竹の子族」のように、青天井の下、ツイストやゴーゴー(ダンス)を踊れる町が出てこないかなぁ。もちろん演奏は熟年バンドで。もちろん電気代は電力会社の「社会貢献」として。
 今後ますます増え続ける「高齢者」だが、たとえ現役の労働者を卒業しても「労人」として社会ではたらき続けてもらいたい。はたらけるのにはたらくことをとりあげて「崇め祭る人」「タブーの人」にしてしまっては生きる力を弱めかねない。
 僕が通い続ける高齢化率40%に達した町から大人の社交場がどんどん消えているが、街の活気も失せてきているように思える。
 高齢者が増えても「老人」にさせない「労人化対策」を官も民も一緒になって考えないと、活力を失うことだろう。

追伸

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衝撃のスキンヘッドから1か月。随分と伸びましたでしょ。ハハハ


コメント


 和田さん みなさんお邪魔します。

 生きる力とは、まさに欲を満たそうとすることだと思います。僕の場合は、人の2倍働いて3倍遊ぶこと・・・
 以前、老健で男性の入所者だけを集めてアダルトビデオ観賞会を行いました。それはそれは大反響でしたが、やはりモラルの問題とのことで、1度きり・・・
 今はGHで管理者をしておりまして、先日ある入居者が「あいつと結婚したい!!」と意気揚々とされてました!! 最高でしたよ!!


投稿者: yokoyan | 2011年11月07日 20:19

yokoyanさんへ

 生きるって、そうやんなぁ。
 その入居者に会いたくなるわ
 その入居の元気さを引き出しているスタッフたちにも。ありがとね。


投稿者: わだゆきお | 2011年11月08日 14:33

 和田さん、みなさん、こんにちは。

 和田さんのお話の場所、沢山の人たちのパワーが伝わり夢のような場所に思えてしまいます。栃木には、そのような場所を私は知りません。しかし、栃木でも沢山の人ががんばっている姿を知り、少し、ほっとしました。大変嬉しく思いました。
 和田さんは、ご存知かもしれませんが、社会福祉法人ひまわりという施設にて胃ろうの人をバナナなどから食べれるように胃ろうをはずして生き生きさを取り戻す御年寄りが増えています。たぶん、新聞では全国に10箇所位、そういったところが作られ胃ろうをはずす会員になっていると記載してありました。そのひまわりという施設ではオムツを使用しない、はずしていこうという試みも行われています。そして、富山型ディーサービスといって、高齢の方と障がいのある方と子供たちが一緒のディサービスです。これをまねて、ここの施設でも、他のところでもあちらこちらで試みが行われています。
 今は、目の前の事の改善が先決ですが、御爺さん御婆さんが心から楽しめる毎日があることが私の一番の願いです。そんな素敵なところが、もっともっと増えてほしいです。
追伸:私の勤務先でも、御利用者にDVDで「慕情」とか「ローマの休日」とか本人希望のもの見ていただいています。せめてもの楽しみ、必要だと思います。生きているんだから・・・。
 私ごとで恐縮ですが、私を支援してくださる人がいて大学のお金を前払いで出してくださり、新しい勤務先と、そこでの日勤・夜勤で何とか生活できます。夢と希望と有り難い想いを胸に生きています。みなさんにも善い事がありますように心から祈る想いです。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2011年11月11日 15:52

久しぶりにお邪魔します。
コメントにもありましたが、
「生きる姿」というものを改めて考えました。
ケアマネジャーとして思うのは、
ケアプランの目標(特に長期目標)は、
単に機能回復だけではなくて、
こうした生きる意欲につながる目標であってほしいということです。

今日、和田さんと長谷川先生の講演会に参加させて頂きます。
和田さんのお話を聞けるのは、
もう2年前になる認知症管理者研修(愛知県)以来です。
楽しみにしております!


投稿者: 榊原宏昌 | 2011年11月14日 09:09

初めてコメントさせて頂きます。
うちのグループホームでは月一度爺さん達を連れて居酒屋に行きます。
酒も手伝い男の話し昔話で毎回盛り上がります。
ただ。。。
ホームはこれを居酒屋レクと名付けているのですが、私は何となく違和感が。。。
レクと名付けてホームとしてやってる感を出してるような。。
さりげなく出来ないもんかと思いながら毎回担当の私は爺さん達より楽しんでいます。


投稿者: 反吉 | 2011年12月27日 09:36

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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著者:和田行男
定価:¥1,470(税込)
発行:中央法規
→ご注文はe-booksから
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