コンプライアンスに見合う介護報酬論議を
介護保険法の管理者は労働基準法の管理監督者になれるか。
これは、小さな事業者が多い地域密着型サービスを運営している事業者にとって大きな関心ごとではないだろうか。
グループホームを例にとると、グループホームの人員配置基準は、管理者、計画作成担当者、介護職員の配置を義務づけており、兼務も含めて要件を決めている。例えば「常勤である」とか「週に何時間」というようにだ。
それは管理者も介護職員も同様で、その意味では勤務の体制確保ができているかどうか勤務表への記載が求められ、出勤している実態があるかどうかの確認も行政の実地指導で求められる。
つまり介護保険法の管理者は、経営側に位置づけられた管理監督者とは違って管理監督される者となっている。
小規模事業者では経営者が管理者になっていることがあるが、管理者は管理監督者とはいえないとなると事業者に管理監督者が不在ということになるし、規模に関係なく管理監督者を置いて管理者を配置するようにしなければならず、そのことだけでコストアップになる。
人員配置や研修の機会確保など介護保険法上の基準を満たし、労働基準法の年次有給休暇完全消化を果たすためには、1ユニット事業所の場合、管理者0.5人、計画作成担当者0.5人、介護職員6人以上が必要になる(管理者や計画作成担当者の配置要件は保険者によって違うが、求められることを勤務時間内に遂行するには0.5人以上は必要ではないか)。
つまり経営者が管理者と計画作成担当者を担って、介護職員常勤換算6人以上で運営していたところでは、経営者を除いて同数必要になるということだ。
月額介護報酬に占める人件費比率を75%とした場合、おおよそ170万円ほどになる。
そこから夜勤手当1回4000円総額12万円、交通費平均15000円7人総額10万円を差し引いて約150万円だとする。
その150万円を単純に従業員7人で配分すると1人当たり約21万円である。それに経営者の取り分を単純に1加えると8人で1人当たり約19万円。法定福利費を除くと基本となる賃金は16万円ほどである。
しかも人件費を除く25%が事務経費と収益など一切合財の原資となるが、普通の経営者の感覚をもっていれば「怖くて経営できない」のではないか。また従業員にそれだけしか払ってやれないにも関わらず自分の取り分もこれだけしかない中で、何かあったときの蓄えもできない経営者では従業員が「怖くて働けない」のではないか。付け加えるなら経営者が月額21万円や24万円では、夢も希望もない事業である。
厚生と労働における管理者と管理監督者。似た者同士ではあるが、介護保険事業においてはなかなか厄介である。
特に現在の管理者のあり様は、介護保険制度がスタートした10年前とは比較にならないほど必要なこと・求められることが増えており、時間も休日も決められた範疇の中で納まりきらないばかりか定型化しにくく、単純に対価を支払えば済むという話ではないだけに厄介なのだ。
管理者が管理監督者に値できるかどうかについて国に問い合わせをしているが、まだ回答は返ってきていない。
僕は「介護保険法で配置要件を求め定め管理されている管理者は管理監督者には値しない」と考えているが、厚生と労働がこうした法制度上の擦り合わせをしてそれに対するコスト換算をしているか、「尊厳の保持」「利用者本位」など事業者に求めていることの遂行に必要なコストを勘案して介護報酬論議がされているかどうか大いに疑問をもっている。
これはこれ・それはそれにしてもらっては健全な介護保険事業の発展は望むべくもない。来週もこの問題を取り上げてみたい。
コメント
コメントではないのですが。
昨日の「認知症の人の歴史から学ぶケア」では、遠路山形までお越し頂き、本当にありがとうございました。
直接お話しを聞くことができただけでなく、本にサインまで書いて頂き、とても嬉しかったです。しかも名前入りで!! ありがとうございます。
介護の仕事につき、20年になります。プライドを忘れず、情緒だけに流されず、よく考え、目の前のお年寄りに向き合っていきたいと思います。本当にありがとうございました。
職員には長く勤めてもらいたいと思っています。7年くらい勤めると、法定の有給休暇は年間20日になります
。早・日・遅・夜・明・休・休のローテーションだと、ホームに張り付く職員が7人必要です。祝日や盆暮れもなかなか休めないので、せめて希望する日を有給休暇として休ませたいです。
有給休暇だけでMAXですが、7人×20日=140日。どうやって埋めましょうか?他にも研修やら何やらで、勤務していてもホーム不在の日もあります。その分誰かが埋めないと。厚生と労働が同じ省庁のはずなのですが、その辺を考慮しているとは思えない総報酬額です。
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