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和田行男の「婆さんとともに」

協同・律儀

 僕は、自分の立ち居地上、何かと助言を求められることが多い。
 それは社内でも社外でもそうだが、助言を求められることはあっても、助言したことの結果を知ることは少なく、共に知恵を搾り出した僕としては寂しい思いをしたりする。
 その理由はわからないが、僕なりに思うのは「助言を求めた以上、その結果を報告する」という「律儀さ」を社会全体が失ってきているのかもしれない。
 そんな中、とてもステキな報告メールがきた。

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 お風呂に入ろうとしないよねさん(仮名。認知症はないから「婆さん」とは書かない)に対して職員はあれこれ対策を講じるが、一向にうまくいかない。よくある話である。
 あれこれ策を講じている間も時間だけは過ぎてゆき、入れない・入らない日数だけが積みあがっていく。
 よねさんには尿漏れ・尿臭があり職員たちは気が気ではなく、「週2回以上の入浴を」という行政指導も頭をよぎる。そこで思い切って無理やり入浴させることにした。
 これとてとても緻密に考案された作戦で、本人への負荷や、その後のことまで考えた布陣で行動に出ており、これはこれでよく考えてのことだったのだが、結果は「入浴することはできた」が「人間関係が損なわれる」という悲惨なものだった。
 社内で「和田さん自主研修会」というものを開催していて、僕が統括する事業(グループホーム・特定施設・小規模多機能型居宅介護・デイサービス・ショートステイ)の事業所職員たちが集まる。
 いつも開催するまでどこの事業所から何人来るかわからない会だが、結果的には毎回20名ほどが集まり、酒を飲みながら、支援のこと、職場のこと、制度のこと、会社のことなど何でも真剣に話し合う自主的な会である。
 おそらく僕に直接話ができるタイミングがこの会だったのだろう。フォーマルな会議でもなく、電話での相談でもなく、インフォーマルなこの会でこの話を聞き、これからどうすればよいかと相談を受けた。
 というのも、よねさんと職員の人間関係が損なわれたため、お風呂どころではなく、居室に閉じこもりがちになり、職員と話すことも少なくなるという最悪の結果となり、打つ手も描けず頭を抱えてしまっていたのだ。
 どんな助言をしたかは本題ではないので割愛するが、結果的には2週間の間に、おしもを拭くタオルを受け取ってくれるようになり、下着の取替えに応じてくれるようになり、本人から「月末にお風呂に入りたい」と言うようになり、ついに「月末に入浴できました」と喜びいっぱいのメールが届いたのだ。
 この相談を受けたことさえ忘れていた僕でも、こうして結果の報告を受け取ると「協同(心を合わせて事にあたること)」を感じ「協同者」としての位置を確認でき、これが僕のモチベーションとなる。
 いろいろな相談を受けるが、受けた相談に対して助言をした僕としてはその結果が気になるものだが、気にはなっていてもすぐに忘れるため、報告がないからといって不愉快になることは稀にしかないのが僕の特徴。
 結果の報告を受けた時は、その結果がどうあれ、その「律儀さ」に嬉しくなるし、この度のことはその律儀さがよねさんに通じたと僕は思っている。
 律儀とは「きわめて義理堅いこと。実直(誠実※でかげひなたのないこと)なこと。また、そのさま。」と辞書にあるが、職員たちのよねさんへの「実直なさま」がよねさんに響いた結果である。
 ひょっとしたらよねさんは無理やりお風呂に入れられて嫌な思いをした直後から、事は嫌だったけど、職員たちの自分への想いは感じ取っていてくれたのかもしれないのだ。
 僕は律儀とは無縁の生き方をしてきただらしない奴だが、人様に相談にのってもらったときは、どのような結果であれ結果を報告することを忘れることのない「律儀さ」を自分に根づかせて生きたいと思う。
 ちなみに誠実とは「私利私欲をまじえず、真心をもって人や物事に対すること。また、そのさま。」と辞書にある。
 つまり律儀とは「自分のためにではなく」ということか。

追伸
 先日、以前にブログで書いた「スキンのやっさん」とその仲間たちによる「震災・事故支援チャリティ講演会」が開催され、500名からの介護事業従事者が集まりました。被災地・避難地からはとても離れている地であるだけに、500名の集まりはとても頼もしく思えました。
 また、それを主催した「スキンのやっさん」と仲間たちの会のボスは、67歳でショートのトライアスロン競技(泳ぎ1.5キロ、走り10キロ、自転車40キロ)に出場していることを聞き感服。
 毎年アルプス登山をしているそうで、数十年ぶりに登山靴を買って準備しているものの、富士山に登る(7月末)のを前に、体力的不安いっぱいな55歳の僕にカツを入れられた気分でした。情けないわぁー。


コメント


 和田さん、皆さん、こんにちは。

 和田さんのブログを読み・・・自問自答しています。自分の立ちいち・日ごろの御利用者への対応・・・私は、皆さんのように生きたい・・・。私の歩んでいる道は、合っているのか・・・間違っているのか・・・、人生に正解も間違いもありませんが、大切なことを見極める目だけは持っていようと思います。大切なことを見失わないために・・・。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2011年07月07日 10:48

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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