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和田行男の「婆さんとともに」

職員の数は行動支援の数 1

 婆さんの行動を支援する上で考えとかあかんのは「職員の数は応援できる行動の数」だということだ。

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 職員の配置数4人の通所介護事業所から相談を受けた。
 相談者は、買い物の機会を多くするために複数で買い物に行くようにしており、複数で出かければ、買い物の途中に二つの行動が生じる可能性があるため「婆さん2名以上なら2人の職員が付いて買い物に行く」と言っていたが、それは全体で4人の職員配置があることを活かした判断としては賢明なことで申し分ないのだが、課題は居残り組にあった。
 その事業所は、まだ利用者が1日平均8名であったが、買い物組4名に2人の職員、居残り4名に2人の職員で動かしているようだ。
 何もなければ「何でも良い」ということになるが、この事業所には他のデイサービスで断られた婆さんを受け入れていて、その婆さん(以下、Aさん)は突然外に出てしまい、何を言っても受け入れてはもらえないそうで、そうした行動をとった時にはどうにもできないというのだ。
 今回はそこをどうするかという本質的なことは脇に置いて事情を聞いてみると、Aさんが買い物に出かけるときはおおむね何事もなく過ぎるのだが、Aさんが居残りの時にそういう行動をとる時があり、職員は心を痛めているというのである。
 それを分解して和田なりに結論づけると、お手上げになる理由は、2人の職員しかいないのに3つの行動支援が必要になる状況をみすみすつくってしまっているからである。
 つまり、職員はAさんのそうした情報をつかんでいるにもかかわらず、居残りの最中に入浴介助をやっていたのだ。
 Aさんに何事もない時は、入浴する婆さん1名に1人の職員が付き添い、それ以外の婆さん3名に1人の職員で対応できている。ところが、3名の中にAさんがいて、かつ外に出てしまうと、入浴している婆さん1名+リビングに残った婆さん2名=2つの行動に対して職員が1人となってしまい、さすがにリスクの高い入浴介助の場を離れるわけにはいかず、リビング放置状況になっているというのだ。
 予測できているにもかかわらず入浴介助を組み込んで「2人の職員・3つの行動」を作り出してしまい、自己破綻している状況である。
 この場合の解決策は、2人の職員・2つの行動支援におさめるのが早道である。経験豊富で臨機応変に対応できる職員集団ならば1人の職員が複数の行動を支援することも可能だが、この事業所の現状ではリスクが高い。
 そこでまずは、次のような手立てを考えてみた。
○ ○買い物は1名の婆さんと1人の職員、残り組は7名の婆さんに3人の職員とする。そうすれば、3つの行動になっても3人の職員がいるため課題化しない。
○ ○残り組は買い物から戻るまで入浴をしない時間の組み立て方に変える。そうすれば、3つの行動が発生しないため課題化しない。
○ ○AさんにAさん支援専任職員を1人つけ、どんな行動に対しても専任で支援し、残り6名の婆さんを他の3人の職員で支援するという基本的な考え方をもつ。そうすれば、Aさん+1名の婆さんに対してAさん支援職員+1名の婆さん支援職員=2名の婆さんに2人の職員となる。
 そして居残り組は、Aさんを除いた婆さん6名に2人の職員となり、同じ人数配分ではあるが、6名にAさんが含まれていない分、同じように居残り組6名に対して入浴介助をしても、3つの行動になる確率がぐーんと下がるため課題化しにくくなる。

 このように「職員数=支援できる行動の数」という視点から考えて組み立てていけば、課題化しにくい状況へと切り開くことができる。
 ここの事業者は「買い物に行くなど社会参加の機会を多くつくりたい」「ゆっくり入浴してもらいたい」「行動制限したくない」「どんな人でも受け入れられるデイでありたい」など大切にしたいことが多い。これはとてもステキなことではるが、あれもこれもなんてできるはずもない。でも、近づけることはできるのだ。
 それが知恵であり、知恵は策を生む。
 また、こうして分解して考えていくと「どうやってもできないことがある」ことがわかり、それがわかれば「しょうがない」と開き直れる。法律だって「緊急止むを得ぬ場合は身体を拘束することもしょうがない」とみすみす憲法(尊厳)を冒すようなことを謳うのだから「しょうがない」は無策ではなく、れっきとした「策」である。
 ただし開き直れるのは「万事休した時」だが、万事休するまで思考・試行を追求し続けるのは並大抵のことではない。つまり「尋常ではない」ということだが、よく考えれば普通じゃないから専門化し、それができるから専門家とか専門職と呼ばれるのだろう。


コメント


日曜日の『最後まで~』セミナーありがとうございました◎
最期の対談の際に、質問しようと挙手したら和田さんに『え、いくつや!?』と突っ込まれた者です(笑)
ブログを書かれていると言われていたので早速チェックさせていただきました!

長野から行っていたものですから、終電の関係で最後の打ち上げ?には行けなくてとても残念でした。また、こちらに来られる機会あれば呼んでください!!


投稿者: 花井 | 2011年05月10日 05:18

花井さんへ

 名古屋でのセミナーに遠路はるばる来て下さり、ありがとうございました。しかもブログまで開いていただき、しかもコメントまで書いていただき、感謝感激です。

 長野県に行くことをどのようにお伝えできるかはわかりませんが、どこかでお会いしたら声をかけてください。

 また名古屋に遊びに来てくださいね。


投稿者: わだゆきお | 2011年05月10日 11:47

 できる方にはレジでの支払いをお任せしています。入居者さんが支払いをしている間、職員は離れた場所で荷詰め側にまわっています。荷物を詰めながらレジに目を向けてみると、普段はあまり見ることができない、きりっとした表情のその人がいました。たった2.3分。ほんの一瞬の店員さんとの関りの中、この入居者さんのいろんなアンテナがびゅんびゅん働いているかのように見えます。
 施設の中でも外でも、どんなに小さな出会いでも、うまいタイミングで職員が身を引くと、引いた分だけその人のアンテナが伸びていくような気がして、面白いなあとおもいます。

 入居者さん(の行動)を護るという意味でも、働く人を護るという意味でも、職員の数が増えたらなあと考えますが、どちらを護るにしても、増えるに越したことはないぐらいの安易さではなく、その前に支援たるをよ~く考えなくてはいけないのかなあと思います。


投稿者: 夜勤ヘルパー | 2011年06月02日 01:22

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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