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和田行男の「婆さんとともに」

金だけとって現物支給のブツがない

 70歳の親が車にひき逃げされ重体に。幸いにも一命を取り留めたが、脳挫傷で寝たきり状態となる。
 娘はいろいろと調べていくうちに介護保険制度に行きあたり申請。要介護5と認定されたが、ここからこの国への「疑問・不信」がはじまった。

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 親は、経管栄養、気管切開となり、こうした「状態に必要なこと」を入院中は看護師が担ってくれていたが、自宅に戻るにあたり介護者である娘が指導を受けた。
 そのことには疑問もなく当たり前のこととして受け止めたが、自分だけでは負担も大きく介護保険サービスを使うために、介護支援専門員に依頼。これで少しは負担が減って気楽になれると思っていたのだが、大間違いであった。
 訪問介護で来てくれるホームヘルパー(介護職)は経管栄養や気管切開でできることがない。通所介護では看護師は配置されていてもリスクが高いと敬遠され、いっそのこと特別養護老人ホームに入所させようと考えたら「看護師が24時間配置されていないため対応できない」と言われてしまう。
 じゃあ自分が24時間365日面倒をみるから、要介護5で決められた支給額を現金で受け取り「頑張ろう!」と思ったが、現金は支給されないと教えられる。
 自分の親は国が定めた介護保険の認定で最も介護の手間がかかると公式認定されたにもかかわらず、それを支えてくれる「現物」はなく「現金」もないのだ。
 あきれ返った娘は介護保険料を支払う意味がないので「支払いたくない」と言うと、それは国民の義務だと諭された。
 つまり、いざという時のために税金・保険料を強制的に徴収しておいて、いざという状態になったら対応できない・しないというのだ。これでは国家的な詐欺である。
 2年にわたって自分の手で全面介護をするしかなかった娘さんは、この国のシステムはどうなってるのかを知りたい・変えたいと考え、今は社会福祉士を目指して猛勉強している。

 いま介護職員が医療行為をできるようにという議論がすすめられているが、医療の側に抵抗もあるようだ。僕は医療で全面的に担えるのなら担える仕組みにすればいいと思う。
 国民は医療職か介護職かではなく、家族でできることなのになんで生活支援システムに従事する専門職ができないのかという疑問であり、どっちでもいいけど対応できる状態にしてほ欲しいのだ。
 グループホームや特別養護老人ホームなど24時間型のシステムで杓子定規に考えていたら、悪く言えば法を完全に守っていては対応できない。退居させるしか打つ手がなくなるだろう。道路交通法のように「守りきれない法」になっているのが現実ではないだろうか。
 一刻も早く現実的な解決方法を見出し、国民が疑問や不信をもたないですむ仕組み、専門職が堂々と国民のための仕事ができる仕組みにしてもらいたいものである。
 あわせて、僕は「現物」の「物(ブツ)」に家族を含む仕組みにしないと人口減少・超高齢社会のこの国はもたないし、もっと突っ込んで言えば「親の面倒は自分の手で」という国民に一切応えないまま保険料だけ徴収するのはおかしいと思うが、みんなはどう思う。


コメント


 経管栄養や気管切開の意味が私は曖昧だと思います。
 医療職は、安易に勧めます。結果、時期が来たから退院して下さいと話し、その後行き先がなくて困るケース多いです。結果、経管栄養専門の施設に行き、天井を見て暮らす方をみました。8畳の部屋に6台のベッドが1列に並び、経管栄養、気管切開、尿フォーレ、酸素の5点セット。ただ、心臓が動いていれば良いように、、、。
 そんな状態でも良いから生きたいって本人は思っているのでしょうか?周りからの押し付けで苦痛を与えているように思います。自分の意思で行動に移せない状態をどんな物か考えて欲しいのです。こんな事はおかしいという歴史になって欲しいのです。


投稿者: みいこ | 2011年03月02日 09:45

いつもブログ拝見させて頂いております。認知症対応型デイサービスの相談員をしているものです。現在、経菅栄養の方々を数名受け入れています。(いろいろな方々の助けもあって)
 今回のブログの内容を見て和田さんと同意見です。受け入れている数名の方々のご家族も経菅栄養になったから受け入れてくれる所がないのではないか等、不安を抱いておりました。ご家族も方々は一生懸命ご自宅で介護をしているのにもかかわらず、支援のプロ(通所介護で言えば、可能な限り、在宅での生活続けられるように支援する)である私たちが支援する体制が作れない、受け入れられないではお話しにならない。そんなシステムおかしいし、変えていかなければいけないのでは?と思います。


投稿者: 長田 | 2011年03月02日 12:40

 グループホームの利用者さんの介護度が4→5になった。 職員からすれば数字が変わっただけで、介護の手はあまり変わらない状況。 ただ「5になったんだ」という認識。
 そこへ家族から「要介護5になったのだからもっと目を・手をかけてください」との話。
 反省しました。 今までそのような認識を持っていなかった。 そうだよね。


投稿者: ひとり | 2011年03月03日 13:56

 その時おかれている状況の中で、できる限り親の面倒はみたいと思っています。ただ自分の生活を支えなくてはいけないので現実は厳しい。社会で支えていこうという仕組みは有り難いのかもしれない。でももし現物支給を受けられない状況(=親の面倒をみたいという希望が叶うことでもあるけど)になったとき、自分自身の自立した将来が全く保障されないわけで、それが明日かもしれないと思うと不安は大きいです。
 こんな私にとっても、家族を含む現物の「物」で在ってほしいし、それはキューキューになっている制度に、ゆとりをもたせることにもなるのではと思います。


投稿者: k | 2011年03月04日 00:09

  「いのち」と「生きる」ということについては、いつも答えが分かりません。本人も周囲も常に揺れ動く心理があるからだと思います。でも、必ずすべきことは、お互いに思いを打ち明け合い話し合う事でしょうか・・・「その人らしさ」ということは言葉では簡単ですが、答えを認識することは難しいですよね。


投稿者: よっちゃん | 2011年03月04日 08:34

誤嚥の際の緊急処置として吸引を習いました。

万が一の時、とても不安です。看護師がいるから…と言われますが、看護師は日勤です。

あらゆる急変、事故をシミュレーションして、その対応に最善の最善を考えて備えていたいと思っている私は、神経症や心配し過ぎとよくいわれます。

心肺蘇生やAEDの講習会は教育現場や公民館で行われています。
職場で吸引の研修が始まりました。
職場以外でも介護職員の医療行為として認められている事を勉強でき、実技研修できる場所を探しています。


投稿者: わたる | 2012年08月05日 20:49

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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