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和田行男の「婆さんとともに」

座・詐欺師

 誰もが「わからずにしでかしたこと」と「わかっているといっておきながら実はわかっていない」「わかっているのにしでかしたこと」に対して同じように思うかと聞かれれば、首を横に振るのではないか。
 わからずになら仕方がないと受け止めても、「わかっていると言っていたのに実はわかっていなかったは騙し」であり「わかっていては確信犯だ」と怒るのではないか。

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 12月13日に“totoさん”から、「さっき言ったでしょ」とか「あーあ何やっているの」なんて言う職員の方こそ認知症なのかもしれないというコメントをもらった。
 これを前文に照らし合わせて考察すると、次のようになる。
 認知症になると「さっきという過去」を忘れてしまいやすい・確実に忘れてしまうという状態になる。また、「何をやっているのかわからなくなる」など事をうまく運べない状態にもなる。
 これは認知症のことを少し学んでいる人なら誰でも知っているし、認知症という状態にある人たちに関わりをもつ職業人なら知っていて当然のことである。

 ということは、この仕事に就いている人なら「認知症という状態にあり記憶障害をもっているのだから、さっきのことを忘れても当然である」「実行機能障害をもっているのだからやり遂げられなくなるは当然」という受けとめをすることができるし、受けとめているのなら「さっき言ったでしょ」「なにやっているの」という言い方はしないはずだ。
 ということは“totoさん”と一緒に働いている職員たちは、それがわかっていないということになり、その意味では素人である。
 ところが婆さんやその家族たちは、素人だと思っているだろうか。きっと玄人だと思ってお金を払っているはずであり、事業者は「専門職集団ですから安心を」と売り込んでいるはずである。
 となると、これはもう完全に詐欺である。
 市民に対して「私たちは認知症という状態を受けとめることができる専門職によって支援をさせていただくプロの事業者です。安心してください」と言っておきながら「受けとめるという基本の基さえできていない」ということになるからだ。
 ここでコメントくださった“totoさん”だから忠告をしておきたい。
 認知症という状態にある人を、こんな詐欺師と一緒にするのはもってのほか。逆に、わかっていての言動なら虐待であり、虐待をする人と一緒にするのももってのほかである。いや、詐欺もれっきとした虐待である。
 でもよく考えると、介護現場にはこういった「詐欺師」が充満してやしないか。他人事ではなく自分の足元でもチラチラと詐欺師が暗躍しているのかもしれないが、介護現場に詐欺師を見抜いて摘発する「良心」も充満しており、その良心とともに介護現場に居座る詐欺師撲滅へと尽力したい。
 認知症になって、詐欺師から自分を自分で護りきれなくなった婆さんを護る支援も「生きること支援」なのである。


コメント


夜勤ヘルパーさんへ

 12月8日付け「お魅贈り」にコメントをくださり、ありがとうございます。
 こいつは不幸にも「コメント0」のまま年を越してしまうところで、不憫で仕方ありませんでしたが、僕もホッとしました。
 きっと僕の名づけが悪かったから不憫な思いをさせてしまったのではないかと、へこんでいたところです。


投稿者: わだゆきお | 2010年12月20日 12:30

あら。

和田さんへ
こっそり書いたつもりだったのに!いつも、名づけはどの段階で閃くのか。聞きたいことのひとつです!
「護る」もうちょっと考えてみます。


投稿者: 夜勤ヘルパー | 2010年12月21日 00:03

 和田さんの言葉使いと文章表現、当て字には本当にいつも驚かされますが、今回の「詐欺師」はよりグサッと刺されました。
 暗躍しているのも困るけど、活躍しているかもしれない。見て見ぬふりの「良心」では、お年よりは護れない。自分たちが、プロとして本当に大事にすることや、今出来ることを真剣に考え、語り合うことが必要なのかもしれない。
 よく耳にする「業務優先になって、云々」。自分たちの「業務」って、何なんでしょう?業務の中での優先順位はあると思いますが、お年よりに合わせる時の流れの中で、それを決めていくことは、やっぱり難しいのかな。


投稿者: ICHI | 2010年12月21日 09:12

日によって多少職員の人数が違います。はじめは、少ない人数の日は大変で、多い日は楽、と思っていました。
この感覚を許してもらうとして。最近、人員の多い日は、決して楽ではない!ことに気付きました。いかにしてみんなに外に出てもらえるかとか、どれだけ腰すえて聴けるかとか、ふだんはできないこと、今しかできないこと、ふつうの生活に近く、個別に、グループでなどなど。職員が多いということは、それだけ出来ることが多いはず、ということで頭を回転させ、息合わせて動かなければいけない、ということで、大変だなと感じます。

できる範囲で最善を。と思えば人員の多少で楽OR大変という感覚にはならないのかな。申し訳ないなあと思う回数は、変わってくると感じています。


投稿者: 桃まんじゅう | 2010年12月21日 23:31

詐欺師とは、なるほど!と思いました。
私はGHの職員ですが、給料が安いとか、大変とか言われますが、やはり利用者様からしたらプロです。言い訳はできません。しかし、職員の人間性、性格はそう変わらないのでしょうか?
自分基準で命令口調の新人職員(40歳)の教育中です。
時々挫折しそうだったり、ブチ切れそうになる自分がいます。「大切なのはロールプレイ!もう少し頑張ろう」って感じです。同じ方向をむいて介護ができるように…


投稿者: 餅豚 | 2010年12月22日 20:47

 ご無沙汰しています。来月再度介護福祉士の国家試験を受けます。今回は部長がメッセージを添えて「おはよう21」からの予想問題をコピーして渡してくださいました。
 いくらか勉強が進んできたので中を見てみたら21011年1月号の分に和田さんの居質論という特別寄稿もコピーしてくださっていました。和田さんのコメントを読むという同じ感覚の上司の方がいらっしゃるというのがとても嬉しかったです。勉強頑張ります!。


投稿者: みっちゃん | 2010年12月24日 10:05

 忙しさもひと段落、10日ぶりにココに来れて嬉しく思います。
 昨日の夜勤で専門学校卒の若いお兄さんと一緒だったのですが、利用者さんに対する言葉遣いは命令口調、態度はキツイもので私も怖くなりました。ある程度経験もつんでいるらしく自分の介護技術には自信があるようです。ただ、待機中に必ずマンガを読み、自分の携帯の充電をします。そして管理者や主任の前では比較的おとなしくしています。居室で利用者さんに対して大声で怒鳴っているのを聞いた事があり、その利用者さんはいつも怖がっています。
 見て見ない振りをする私も悪者です。どうにか虐待した職員に対して資格の剥奪とか法的措置がないでしょうか。利用者さんの人権を守りたいです。


投稿者: みき | 2010年12月24日 21:35

 和田さん、皆さん、こんばんは。

 私は、詐欺師なのか?そう…、考え込んでしまうブログ内容でした。私流の解釈で言えば偽善者なのかそうでないのかということです。と自分では思っています。
 善人面した自分…、詐欺師かどうかは…どこまで親身になって御利用者にお付き合いできるかで決まる気がします。他人事…そういったら、それまでだと思います。
 教科書通りの介護が最善とはいえない。でも、最善はある。今の状況での改善…そして、最善へと繋げようと思います。
 
 和田さん、大変お節介ながらコメントしたくコメントさせてほしくお願い申し上げます。
 
 みきさんへ
 この件は、上司に報告すべきだと思います。判断を下すのは上司です。上司に報告し判断を委ねるべき件ではないでしょうか?
 私は、ユニット内の改善を目指しています。何かあった場合は先輩に伝え、判断を下すのを委ねています。間違っている間違っていないは誰にも判らない場合と、はっきり判る場合があります。虐待につながる場合は、リーダーに相談します。

 私の考えは、物事には流れがあると思います。その流れに逆らわずに、でも、伝えるべき事は伝えます。その上で私の伝えたことが改善されるべきことならば必ず!!!改善できると思っています。物事が動くのには時期があると思います。それなので今すぐの改善が望めない場合は今は改善できる時期ではないのだと思い、いったんは心の内にしまいます。
 でも、まだ…あきらめたわけではないです。これからもあきらめることなく、御利用者の住みやすい環境を作るため、御利用者の言葉を伝え続けようと思います。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2010年12月26日 19:22

 40歳経験ある新人です。充分な要注意人物です!ほんとに気をつけなくては。。。
 こんな私でも「もしや変れるかも」と思えるのは、諦めずに向き合ってくれるありがたい仲間がいることです。私も、年齢・性別・資格・経験・障害・病態。などの前にまず、人としてちゃんと人と向き合える人間になりたいです。
 ときどきは、たかが仕事と、気持ち的に息抜くこともありますが。怒られるかな


投稿者: Anonymous | 2010年12月27日 05:54

ほんと、少ない人数でもあうんの呼吸で出来てしまったり、たくさんいるのに気持ちばらばらで堂々巡りだったりってありますよね。気持ちがひとつになりそれぞれの持ち味生かして歯車が噛みあうといいのかな。みっちゃんさん合格祈ります。


投稿者: むらさき | 2010年12月31日 22:50

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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