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和田行男の「婆さんとともに」

輝かしきあほ友

 誰にでも一人や二人は「自慢のあほ友」がいるだろう。僕にもいるし、僕もそういわれている一人なら光栄に思う。
 今週は、島根県益田市というとてつもなく遠いところにいる友のことを紹介したい。

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 こやつは、自分が立ち上げた医療関係の会社の社長をしていたのだが、好調なときに会社を売り払い、「描きの世界」にはまった。
 かねてからしたためていた注射器をモチーフにしたキャラクターを商標登録し、そのキャラクターを基に「描きの世界」にはまっていくのだが、その根っこにあるのは「恩返し」。
 自分をここまで育んでくれた医療や介護の現場で一生懸命働いている人たちに元気がないことを気に留め、少しでも明るく元気のあるものを送り込んで活用してもらいたいとの一念である。
 キャラクターのことで相談を受け、順調にことが運んでいたあるとき。
 「こっちのキャラクターの名前は何にするんや」と投げかけると
 「そりゃ、和田くんでしょ」
 いやもくそもないままに、あほ友の一言で「和田くん」(都電の写真にある緑のほう)と決まった。
 主役の女の子の名前は、キャラクターの基になっている注射器の「ち」をもじって「ちーちゃん」(都電の写真にある赤のほう)と決めていたようだが、僕の連れ合いも「ち」ではじまるというおまけつき。

 さて、商標登録を終えたキャラクターを使って何をするか?
 二人で考えたのが「都電広告電車」に使うことだった。ブログでも写真を載せて紹介させてもらったことがあるが、1年間無事に走り終え、お役目を終了した。
 広告電車というのは面白くて、キャッチフレーズだけを載せるのは許可されない。あくまでも広告なので社名が必要なのだ。そこで苦し紛れに立ち上げた会社の名称が「メディカル工笑」。やっぱり笑いをとり入れた。

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 あほ友の夢がどんどん広がり、「ちーちゃん」という歌まで作り(プロの歌手で)CDを売り出した。
 この歌は、「あのね、ちーちゃん、ねぇ ちーちゃん、ねぇねぇちーちゃん」という歌詞で始まるので、注文を受けると「ちーちゃん」のところを好きなように入れ替えて販売することにまで発展。例えば、「かよこ」なら「あのね、かよちゃん…」といった具合である。
 あまり宣伝をしていなので「マニアックな知る人ぞ知る企画」なのだが、大手のファミリーレストランやラジオでも定期的に流れた。これはじいちゃんばあちゃんが孫の誕生祝につくって贈り物にするなど、少なからず反響を呼んだ。
 うちのちびちゃんも「ちーちゃん」だけは憶えてしまい、この歌をかけると眠ってしまうほど子守歌効果が高かったので驚いた(うちのちびちゃんも「ち」はじまりやからね)
 これは1枚売れるたびに莫大な赤字…宣伝するのが忍びないほど、手間隙かかっていた。何せ、注文を受けるたびにプロの歌手を呼んでスタジオ録音やからね。ハハハ、世のため人のためだって。

 さてお次は「お口の体操音頭」をやろうということになった。
 二人でああでもないこうでもないと話しているうちにお口の話題になり、僕の知人にお口の専門家がいることもあって、それを世のため人のために使ってもらえないかと考えたのだ。これはDVDの販売が始まったばかり。僕も企画にかかわっている。高齢者でも介護予防組や元気高齢者にやってもらいたい体操で、むしろ子どもたちの世界に広がってほしいと僕は思っている。

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 さて、そうこうしているうちに「家を買った」と連絡がきた。家を買うぐらいのことでは驚かないが、故郷に「山ごと蔵つきの民家 面積は2000坪」を買ったというのだ。いよいよ故郷に帰郷、Uターンというやつである。
 僕はその値段に驚いた。ここに値段は書けないが、これじゃ、日本中の土地を外資に買いつくされて、気づいたら日本国なのに日本国民じゃない外国人の土地や建物になってしまうのではと単純に思ったし、怖くなったほどの値段だ。
 ここでまたまたあほ友はやってくれました。「梅月あんな坂こんな坂 遊歩道」というトレーニングロードを、町の人たちと一緒に山を切り開いて作ったのである。しかもステージまで一緒に作ってしまった。
 梅月というのは地名。誰でもが利用できるように道路からそのまま利用できるようになっている遊歩道である。誰が見ても個人がつくったものとは思えないだろう。

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 先週のブログにコメントをくださった人がいたが、先日、そのオープン式典に行ってきた。式典には益田市長まで来られて「市民の自主的な健康まちづくりに感謝、参考にしたい」とまで言ってくれていた。
 僕はピンチヒッターで認知症のことを喋ることになったのだが、町内の人はもちろん、友の出身地や近隣市町村から200人くらい参加してくれて、津和野の太鼓や、石見の神楽、お口の音頭を普及するバンドの演奏などを楽しんでいた。

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 また、あちこちに木彫りのキャラクターが置いてあったが、これはご当地に住む「チェーンソーの木彫り世界ナンバー2」の腕前をもつ作家の作品で、それはそれは見事なもの。

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 帰省するたびに、人が減り、田畑や山林が荒れていく故郷の姿に心を痛めていた友にとって、これまた故郷や故郷の人々への恩返しなのだろう。
 テレビ局や新聞社の取材を受けながら、炎天下の中、ちーちゃんの着ぐるみをかぶって参加者に愛想を振りまく「あほ友のひたむきさ」に触れ、久々にすがすがしい気持ちにさせてもらった。
 まだまだ進化し続けるであろうあほ友に、市長や益田でブログを呼んでくれている専門職や市民などが合体していったら、東京から遠い益田市で「きらきら」と輝く何かが生まれるのではないかと思えた。
 このゴールデンウィークは、臀部の筋肉に炎症を起こし、立ち上がる・座る・歩くことが苦痛で、自宅から700キロも離れた益田市までは地獄の道のりであったが、友の変わらぬあほさに触れ、また元気をもらった。
 山陰地方に行かれたらぜひ寄ってやってください。
 ↓
遊歩道 島根県益田市梅月176
(問い合わせ先:メディカル工笑 0856-25-1621)


コメント


 始めまして。キララともうします。

和田さんとお友達で作られた
『お口の音頭だよ~ん!』は、どこで
購入できますでしょうか?

CD店で、購入可能ですか?

我がデイサービスで利用させていただきたい。


投稿者: キララ | 2010年05月11日 17:20

 こんにちは。私は益田の者でオープン式典に参加させてもらいました。
 この益田にこのような素晴らしい建物や外観を造って頂いた事や和田さんの友人の人柄に介護職の私達も癒されました。きっとキラキラ輝く場所になると思います。全国のみなさん是非癒されに来て下さい。
 そして益田は何もありませんが、海や山があり何かパワーが出る町です!


投稿者: 畑 | 2010年05月11日 18:31

キララさんへ

 ブログの記事にある問合せ先に連絡をしてみてください。
 つながらないようでしたら、再びご相談ください。
 あほ友は、めちゃくちゃ喜ぶと思います。


投稿者: わだゆきお | 2010年05月11日 22:16

 早速問い合わせさせていただきました。
 通所で使用したいということでお話をさせていただきましたら、遅いバージョンも作成しましたということで、それも一緒に送っていただくことになりました。

 ありがとうございました。


投稿者: キララ | 2010年05月13日 10:29

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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