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和田行男の「婆さんとともに」

火災現場に立って

 生きていると、いろいろなこと、いろいろな人に出会う。
 自分にかかるすべてのことや人との出会いが自分の人生をかたちづくっていく。引っ越しの時に見つけた小学生の時の文集に「出会いを大切にしたい」と書いていたが、子どもの頃から「出会い」を意識していたようだ。
 これまでの出会いが今の僕をかたちづくり、これからの出会いがそれにのっかって、これからの僕をかたちづくる。喜びがあれば、哀しみ怒りもあり、辛さ悔しさ情けなさにつながる出会いも容赦なく待っていることだろう。
 札幌のグループホームの火災現場に立ってきた。

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 まだ焦げ臭さが漂う火災現場に立ち、そこで亡くなられた方々やその家族、隣人たち、従業者、関係する人たちを思うと、この出会いはこれからの僕に何をもたらすのだろうか…と。
 「改めて火災現場を見てどう思われますか?」
 報道陣からの質問に「現場を見ようが見ようまいが、どこにいても同じです。火事は出したら、あかん」と答えたが、長崎の火災事件のあと、本当に心から「わがこと」として考え、実行に移してきたかと自問すれば「そうとは言い切れない弱さがあった」と認めざるを得ない。
 現場に立ちインタビューを受けてから時間が経ち、改めて考えてみると、火災現場を生で見たことは見ていないのと「同じ」ではなく、同じではないと言える行動として、東京に戻ってすぐに自社の施設責任者たちを集めて、写してきた火災現場の写真を見せながら「火災予防、火災時対策」について一層強化するよう指示を出す自分がいたからだ。
 目の当たりにしたことで、伝え聞く見ることとは違って「わがこと」の意識を強めたことは間違いなく、火災現場との出会いは意識を変えるほど強烈だったということ。
 ブログ読者のみんなにも、関係する事業所で、また自宅で、改めて火災の怖ろしさを「わがこと」として受け止めてもらえればと思い、札幌グループホーム火災現場の写真を撮ってきたので掲載する。
 脳に焼き付けて、改めて「火災事件を起こさない決意」と「万が一起こったときの対策」に万全を期していただければ幸いだ。婆さんたちも、グループホーム関係者も報われるというものだ。
 合わせてあらゆる機会を通して仲間たちと共に、亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると同時に、国民の負託に応える決意を込めて、黙祷を捧げていただければ幸いである。
 北海道には火災のことで行ったわけではなく、たまたま行く機会があったに過ぎないのだが、これも何かの巡り合わせのような気がする。僕に何かを伝えたかったのではないかと自分勝手ではあるが思えてしまう。
 火災現場で合掌させていただけたことだけでなく、こうした事態を受けて真摯に受け止めて全力で全道・組織あげて取り組んでいる仲間の姿に触れることができたことも、僕にとってはかけがえのない出会いであった。
 こんなときにこそ、仲間の輪や仲間の力というものの威力を感じる。火災のグループホームは僕の仲間の組織には加わってはいないが「わがこと」として、全力をあげて取り組んでいるのはステキなこと。
 東京でも仲間たちとふんどしを締めなおして、かかる事件を引き起こさないように「出来ることは何でもする」という気概で取り組んでいきたい。

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閑静な住宅地の一角にある。右側の白い家の隣がグループホーム

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向かって左側がリビング。激しく焼け爛れている

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庭には焼け爛れた木材が散らばる

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向こう側の扉が玄関。写真右手がリビング

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合掌


コメント


 あの日、私も明けでした。あさ六時、リビングテレビ付け流れた画面に愕然。通報の言葉に いつも不安抱えながらいただろうと、、。私達も火は出さないとしながらも放火やもらい火あったら助け出せないだろうと何処かに不安抱きながら夜勤してるはず。
 が、出火原因に 何故 危ないからやめよう!がなかったのか?あのこはこれからずっと抱えてと思うと、、。
 10年くらい前我が家から500メートルで火事、火の粉が飛んできて怖かったです。
 二年前、300メートル先で火事、炎が天高く上がり恐ろしかったです。隣のアパートに燃え移り その時、近くの方が、あそこには足の不自由なおじさんがいると はしご掛け窓から助けました。
 その前後風の強い日が続き幸いにも、その日だけ風がなく、強風だったらと思うととても恐ろしいです。火事はそこだけですみません。気をつけながらも、地域や消防署、協力者になってもらい知恵出し合いお互いのために備えたいです。


投稿者: むらさき | 2010年03月24日 22:08

 ボクが勤めるのは、平成10年建築の大規模に入る特養ホーム。デイと支援センター等も合築。地元消防署の担当課長さんは「この建物は絶対に燃えないから、とにかく避難させることを優先して欲しい」と指導を受けた。
 消防署の担当者はコロコロ変わるので、そのたびに色んなことを言われてきたが、この言葉は忘れていない。「そうか、燃えないんだ。逃がせば、ベランダに出せば、助かるんだ」と、どこか安心感がある言葉であった。
 そういえば、道路を挟んだ木造家屋が出火した際、当ホームの消火栓を伸ばして消火活動をしたこともあった。もちろん、火事を出さない努力は怠らないが、避難経路と言うやつは、時に生活感というものと相反するところがあるように感じている。
 「置いてはいけない」ことは分かっているが、何とも味気ない空間にも見えるのである。僕らが守るべきもの、一番大事にしなくてはいけないもの何か、分かってはいるが、生活ってこうだよねとも思ったり…。


投稿者: 特養ホーム・ICHI | 2010年03月25日 12:18

 この様な重大な話題の時に、違う話題をあげてしまい大変恐縮なのですが、今月末まで、厚労省がホームページで介護保険制度に関してのパブリックコメントを募集しています。http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p100219-1.html
 声をあげる良いチャンスと思ったのでコメントしました。


投稿者: ザキ | 2010年03月26日 06:32

「我が事」全く同感です!!
 他で起こったことは、自分のところでも起こりえる可能性がある、といつも思います。
 火事・虐待・身体拘束…
 それから、マスコミは事業所を叩く事しか知らない
 もっと日常の現場の声をあげなければ…


投稿者: 大きな和 太陽と海 | 2010年03月26日 08:25

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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