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和田行男の「婆さんとともに」

笑月

 人間を長くしているといろいろなことがある。これはきっと誰もに共通してあるのではないかと思うが、そうそう他の人にはないだろうということが自分に起こることも共通なのだろうか…。
 僕には「日常的にある・あってもおかしくない」出来事ではあるが、その自分でもあきれるようなことがあるから驚きだ。

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 ある日のことだ。
 僕の会社は荒川区町屋というところにあるのだが、その日は本社で会議があり、その会議が終わったら杉並区方南町にある施設に行かねばならなかった。
 移動のルートは、本社→徒歩・東京メトロ千代田線町屋駅→JR山手線新宿駅→都営地下鉄丸の内線新宿駅→丸の内線中野坂上駅→丸の内線方南町駅である。
 その日は会議が遅くなり、僕の頭の中では、通常のルートでは方南町施設での待ち合わせ時間に間に合わない。
 そこで、タクシーで山手線田端駅(西日暮里駅の隣駅)まで出て、遅れた分を取り返そうと考えて行動していた矢先にタクシーをつかまえることができ、「これで間に合うわ」とホッとした。
 田端駅から新宿駅までの切符を買い込んで走り込み、電車が空いていたので座って新聞を読み出した。山手線内回りで田端駅から新宿駅に着くまでには、駒込・大塚・池袋・目白・高田馬場・新大久保を通り、時間にして18分。
 しばらくすると駅に着いた。
 僕的には「新宿駅に着いた」ので降車し、ホームから階段を降り改札口を出て丸の内線乗り場へ向かった。ややいつもと違った印象をもったが、他はすべてが「いつもどおり」であった。
 丸の内線の切符を買い改札口を抜けてホームへ出ると、地下鉄電車がギリギリで出てしまった。悔しい思いをしてホームの案内板を見ると、何と1番線・2番線どっちも同じ案内板になっていたのだ(写真)。

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 大事な客人に会うのが遅れたら申し訳ないという気持ちと遅れているという状況から、気持ちだけが光速で空回りし、イライラしっぱなし。だから、ちょっとしたことにも腹が立つ。
 「なんちゅうこっちゃ。こんなんやったらどっちに乗っていいかわからへんやないか」
 と駅員に文句をたれ、おまけに「こんなひどいこと、後で抗議をせなあかん」からと、1番線2番線の案内板を写真に収め(だから写真が残っていた。どういうわけか、こういうことは冷静になれるんやわ)、次にきた電車にぶつぶつ言いながら乗って座席に座り、再び新聞を読んでいた。
 列車が走り出し、しばらーくしてふと新聞から目を離すと、東京の町並みが目に入ってきた。その瞬間はまったく気づかなかったが、再び新聞に目を移して記事を読み始めてから、めらめらと疑問がわいてきた。
 「新宿から乗った地下鉄やのに、なんで町の景色が見えんねん」
 頭の中は真っ白である。
 しばらくはさっぱり事態がつかめなかったが、駅に到着して「茗荷谷」という駅名を目にして初めて「1番線2番線の案内板が同じであった理由」がわかったのだ。
 丸の内線というのは、荻窪駅→新宿駅→四ツ谷→赤坂見附→銀座→東京→後楽園→池袋と東京都内皇居を取り囲むようにしてUの文字のように通っているのだが、池袋駅は終着駅。池袋からいくつめかの駅あたりまでは地上を走る地下鉄だ。
 つまり、和田は新宿駅だと思い込んで池袋駅で降りてしまい、丸の内線に乗ってしまったのだ。池袋より先がないドンつき駅である池袋駅は、1番線・2番線とも新宿方面からの到着ホームであり、新宿方面への出発ホームでもある。だから案内板も同じということだったのだ(抗議していたらお笑いものやったな。ハハハ。いや怒られたやろな)。
 この話をみんなにしたら、「和田さんも年やな」って大笑いされた(バカにされた)けど、僕の場合は年を重ねて「なった」んやなくて、若い頃から「だった」んやから、ね。間違わないように。と釘を刺すのが精一杯。
 ブログを読んでくれてる人にもいるやろ「おっちょこちょい」。新年にあたり、おっちょこちょいコメントを贈ってきてね。せめて気持ちは笑月にしよう。
 長く生きてたらいろんなことがある、いろんなことに遭遇するわ。ちなみにこの日は、官庁視察に対応するために方南町へ移動したのだが、ふだん堅苦しい職場に詰めている役人の皆さんにも笑っていただいたわ。ハハハ

 次は、愛知県にある知多半島を走っている名鉄内海線の特急電車に乗ったときの写真。
 名鉄名物二階建てパノラマカーの展望席に座ってたときのことやけど、ちょうど進行方向に陽が沈んでいた。そんなことはままあることやけど、なんと写真のように、展望席の真ん前、ほんの一瞬、進行方向の真正面に太陽の位置が重なったんやわ。見事やろ。しかもお客は僕一人なんで、独占光景でした。

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 お試ししたい人は、写真の撮影日時が9月7日午後5時57分名鉄内海線富貴→上野間というデータを参考にしてください。
 こんなことにも遭遇するんですね。車だったら危険ですが、レールの上を走る電車ですから大丈夫なんでしょうね。
 さて今年はどんなことに遭遇することやら。願わくば「国民の不幸事」には遭遇したくないね。


コメント


 和田さんのブログを読んでいると情景が浮かんできます。だからスーッと入ってくるんだなとつくづく思います。
 文字ではなく話すことで説明ができたらなとさらに思い、自分はどうしたらできるのか考えさせられます。人に伝えること、伝言ゲームがいかに人を作るか、組織を作るか、この業界では重要だと思うんです。エネルギーが必要ですね。長く長く続けられたらと思います。


投稿者: がん | 2010年01月14日 11:54

 パノラマカー凄い。
 タイムマシーンに乗って未来に行くみたい。


投稿者: ・・・ | 2010年01月14日 13:18

 がんさんのコメント・・本当に同感です。実はつい最近、やっちゃいまして・・。
 ケアプランの”家族の思い”の欄になんと馬鹿正直に結構そのまんまに近いものを書き記してしまいました。そりゃあ、きますわね、クレーム!
 「しいたげられている?は虐待の虐でしょ。うちは虐待しているんですか!」と。でも会えば愚痴、会えば本人をののしり・・・いつも「我が家ではしいたげられている」っ言わはりますやん!仕方ない。丁重に謝罪し、事なきを得ましたが。話して分かり合えてるつもりでも、実際文字として見てしまうと反発してしまうのでしょうかね。
 伝えるものは形になった字ではなく、”思い”ややっていることであるだろうに。でも根本は自分の力不足です。伝える方法が未熟・・だから人作りにも難航してしまうのかな。まあスタッフに事の顛末を話すと、人ごと?笑われました。
 和田さんも笑月にしていただけましたでしょうか。
 蛇足ですが、その声震わせて怒ってた娘さんにこれを機会に運営推進委員さんを引き受けてもらいました。”転んでもタダじゃ起きないで”って感じ?


投稿者: まっちゃん | 2010年01月16日 11:57

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち97年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会代表としても活躍。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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