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和田行男の「婆さんとともに」

時間を渡す勇気

 老人保健施設からグループホームに換わった職員がぶち当てっている。ホームヘルパーからグループホームに換わった職員もぶち当たっている。
 僕の耳にこんな話がよく入ってくるが、これはグループホームが特殊なのではなく、そこのグループホームの支援策が「これまでの介護」と違っているからだろう。

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 車椅子のまま食事をしている光景はどこにでも見られる。中には、本人にとって自在に移動することを大事にしているため、車椅子のままの生活になっている人もいる。これは、本人の意思(本意)に基づいていてなおかつ理にかなっているという意味では何ら口を挿むことはないが、多くの場合は「移動させやすい」という「支援者側の論理」ベッド(起床)→車いす(離床)→ベッド(就寝)に疑問もなく済ませてしまっているのではないか。
 車いすの本来の目的からすれば、ベッド(起床)→車いす(移動)→椅子(目的地)→車いす(移動)→椅子(目的地)→車いす(移動)→ベッド(就寝)というように、車いすはあくまでも「移動能力の自立不可補う移動の道具」ととらえれば、車いすのまま食事をすることに疑問が出て、車いすに座りっぱなしにさせるのではなく「本来の姿」を取り戻すために支援する=車椅子から椅子へ移乗支援するのが自然なはず。
 この「本来の姿」を追求するという極めて当たり前のことが「これまでの介護」では忘れ去られてしまっていたから、婆さんを僕らが生きている姿からかなり離れた姿にしてしまってきたのだ。
 車椅子のままの食事なんていうのは、生きる姿のほんのワンシーンで、こうした一つひとつのことに拘りをもっていくと、「これまでの介護」では考えもしなかった事を考えていくことが必要になり、「本来の姿」を描くこともなく「これまでの介護」に浸ってきた人間がつくった「こうしないさい・ああしなさい」というマニュアル的業務を浴びてきた介護職たちにすれば、ぶち当たるのも無理からぬことかなと思う。
 そういう意味でグループホームは画期的な位置づけにあり、まだ大型施設のように行政が制度等で歪ませてきていない分、介護職たちがその時々に自分の脳を駆使して「考えながら支援する」という面白さと難しさをもっているだけに、そこに突っ込んできた経験ある介護職たちは、経験があるからこそのとまどいも大きいのではないか。
 朝出勤してきて自分の1日の行動に定めをもたず、帰るまでの時間数で、そこに暮らす9名の婆さんの生活を、相棒(出勤者)と一緒に支援する。
 僕は平成11年グループホームに突入したとき、わくわくして挑めたが、当時一緒にスタートした他の介護施設で経験をもってきた同僚達はどきどきしていたというが、「わくわく」と「どきどき」の差は大きく、グループホームに従事する先輩達は、この差をちゃんと受け止めてやってほしいと思う。
 そう言える僕だって、この仕事に就いたばかりのころは何にも訳わからず心臓がはちきれるほど「どきどき」だったが、先輩達がどーんと構えてくれていたから、時間の経過とともに思考と実践を積み上げ「わくわく」できるようになったということだ。
 僕の経験からでしかないが、考えて支援できる介護職になるには2年は必要な気がする。季節をふたまわりする頃には「どきどき」が「わくわく」に変わってくるのではないか。
 老人保健施設でガンガンやってきて利用者との関係づくりにものすごい自信をもってグループホームに換わってきた知人が、出勤拒否症ともいえる状態になり、グループホームに出勤する前に嘔吐するようなところまで精神的に追い込まれたが、その理由は利用者から拒まれたからだ。
 どんな世界でも厳しいものだが「憶えればできるようになること」とは違うし、問われることに明確な尺度がないことだらけで、雲をつかむような「これまでの介護とは違う介護」。
 それに挑んでいける介護職たちがそう簡単には増えないのも致し方ないとは思うが、「どきどき」が「わくわく」に換わってきているであろう先輩達が、「これまでの介護とは違う介護に挑む介護職たち」に「時間を渡す勇気」をもつことに未来があるように思う。


コメント


 和田さん、皆さん、こんばんは。
 
 新年あけましておめでとうございます。本年も、よろしければ御指導お願いいたします。
 私は、半額食品で毎日を過ごし、洋服が捨てられずに縫って使用していましたが、大学の勉強と重なり、ミシンの購入を検討中です。ようやく、教習所を卒業して、大学の試験勉強中です。この後、40万の車を購入を検討し、半額生活は今後とも続きそうです(笑)。
 現在、特養にて時間を見つけては言葉を忘れた方が言葉を思い出すお手伝いなどをしたり、御利用者と一緒に歌を歌ったり、歌えない方には歌って聞かせたりしています。
 ユニット内では車椅子の方がオムツからリハパンになりトイレ排泄に移れるよう先輩方と話し合いをもったり、機械浴から一般浴にて入れないかと検討したりしています。今まで、沢山パットを使用していた方が、必要枚数で済むように検討したりしています。
 どうしても行わなければならない抑制時には、御利用者と歌を歌い…少しでも辛い気持ちが軽減出来るようにと行っていますが、先輩方の中には、仕事中に歌を歌うのはおかしいと理解してもらえなかったりと色々とありますが、仲が悪くなっては支援は出来ないので、その場は素直に話を聞いています。
 考え方の相違など、問題は沢山あります。でも、少しでも、御利用者が人間らしく生きるお手伝いをしたいという気持ちは今も変わりません。
 今まで表情のなかった方が、私の「また来ますね」の挨拶に「はい」とこたえられた時の嬉しさ。沢山の問題にぶち当たっても未来は明るいと信じています。
 グループホームの方が、可能な限り人間らしい生活を行う事も大変大切ですが、特養の中の寝たきりの方が、少しでも表情が良くなったり、苦しみが軽減されたり、こういったことも地道ではありますが、私の仕事の楽しみの一つです。

 PS☆ 前回の池袋の丸の内線の件、私も初めて見たとき戸惑いました。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2010年01月18日 21:01

 残念なことに私が努めているグループホームは、9人がばあさんず、職員8人も女…の世界になってしまいました。
 そりゃ一日中女だけの世界は、言葉もきついですよ~!!彼女たちは(ばあさんず)「きついくらいじゃなけりゃ、長生きなんてできないだろ」といいます。
 この方達と過ごす時間は、沢山のとリビアに溢れていて一日に一回は笑えることがあります。この楽しみを職員同士で分かち合えるようにしています。これから(新人が入ってくるんです!)入ってくる方にもこの楽しみを、早く解って欲しいと思います。


投稿者: よっちゃん | 2010年01月18日 21:50

 最近は勉強されているご家族も増え、ご家族とともに「わくわく」できることも。

 わたくし、近頃書類の整備に追われています。別にさぼっている訳ではありませんが、書類の山が減りません。勤務時間だけでは終わらないことが当たり前になっています。
 なので、もっとスムーズに進められる方法を模索中です。
 周りを見渡すと、複数の仲間も勤務時間は書類作成に当てられず、日常的に勤務時間外に行わざるをえないです。期日までに完了するよう言われますが、それに必要な時間確保はなかなかして下さいませんし、自分だけでの調整も限界です。
 書類不備でペナルティがあるのだから、作成できる環境の確保も必要と思ったり。思わず仲間と書類の山を眺めて、「もう仕事やめたくなっちゃうよね。」とつぶやいてしまいました。
 書類も大事なことは理解していますが、「助けて~。」と叫びたいです。


投稿者: まんまる | 2010年01月22日 21:10

 和田さん、皆さん、いかがお過ごしですか?

 私は、前回のコメントにて自分の好きなようにコメントしてしまったので反省しています。
 私は、特養にてマニュアルに沿いながらも、考えながら支援しています。でも、それは、当たり前ですよね…私たちは、人形を相手に仕事をしているわけではありません。生きている人と接しているのだからマニュアルはあっても内容は変わってきて当然だと思っています。そんな私を周りは戸惑ってみているのかもしれません。
 私は支援の仕方は一つではなく…多数あると思います。
 今回のブログ内容では大型施設で働いていた人やヘルパー勤務されていた人のことが挙げられていましたが、今のユニットにおける先輩方の考え方も少し似ている気がします。マニュアルに沿って動いているからです。先輩方の事は今すぐにどうこうできる問題ではないと思いますし、私の勉強が足りないところも大いにあると思います。
 長い時間をかけて一緒に沢山の事を考えながら支援を行う事によって考え方が伝染する気がします。私が、多くの人の考え方を学んでいくように…。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2010年01月23日 14:59

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち97年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会代表としても活躍。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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タイトル:『認知症になる僕たちへ』
著者:和田行男
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