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和田行男の「婆さんとともに」

ユニット

 ユニットって何なんでしょうか。
 11月11日にコメントをくださった「?介護士」さんと同じような思いをもっている人は全国各地にいるんでしょうね。僕も何人も出会ったことがあります。
 今週はこれについて考えてみましょう。

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 そもそもユニットとはどういう意味なのかですが、いつものように一般的にはどう使われているかを自分なりに思い描いてみると、ミュージシャン同士が「ユニットを結成」なんていう記事を読んだりします。辞書で調べると「(1)単元・単位、(2)規格化された部品、(3)集団・部隊」とあります。
 これを考察していくと、ユニットは「形があればOK」ということで、ユニット型特養でいえば、婆さん10名の(3)を(1)化し、それを(2)として制度化したということです。現行法制度の下では、「ユニット」は制度と建物ができた時点で追求できるものはないということになります。
 介護保険法に定めた「ユニット」とは何かを見てみると、「施設(介護老人福祉施設)の全部において少数の居室及び当該居室に近接して設けられる共同生活室(当該居室の入居者が交流し、共同で日常生活を営むための場所をいう)により一体的に構成される場所(以下「ユニット」という)」とありますから、「ユニット」は「場」であり、支援者は「場」を追求するのではなく、「場で生活する人」の支援策として「場」を活かすということになるのではないでしょうか。
 では、なぜ新しいタイプの生活支援システムを整えたのかということですが、それはユニット型以前の特養には何かが足りていなかったために新しいタイプを構築したと考えるのが自然で、何を描いていたのかということになります。
 僕は新型特養に関してはさまざまな意見をもっていますが、この国における生活支援システムとしては新しい試みに突入したと、歓迎はしてきました。でも「形」を整えただけで、そこで暮らす人たちの「生活」を支える「考え方とシステム」がまだまだ追いついていないことに問題があると考えています。
 僕は、ユニット型特養に挑むときには3つの視点をもって運営のイメージを探ることが必要だと考えています。
 1 入居者の生きる姿を描くこと
 2 その姿を描いてシステムを構築すること
 3 限界と可能性を知ること
 そこで、介護保険法に定められたユニット型指定介護老人福祉施設の運営基準から、その基本方針をみてみましょう。
(第39条)ユニット型指定介護老人福祉施設は、入居者一人一人の意思及び人格を尊重し、施設サービス計画に基づき、その居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入居前の居宅における生活と入居後の生活が連続したものとなるよう配慮しながら、各ユニットにおいて入居者が相互に社会的関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援しなければならない。
 あわせて人員配置は、「昼間についてはユニットごとに常時1人以上の介護職員又看護職員を配置すること、夜間及び深夜については、2ユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員を配置すること、ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置すること。」となっています。
 こうして制度を眺めると、この新しいタイプの生活支援システムは、入居者10名のユニットに対して日中の時間帯に職員は1人でよいとされており、それだけでも「生活支援システム」としては無茶クチャだということがわかります。
 1人の職員というのはどういうことかというと、ひとつの行動しか応援できないということですから、支援策の限界点が低くなり、これならまだ入居者50名が暮らす1フロアに5人の職員が配置されている旧型のほうが、よほど幅広い支援策を講じることができるのではないでしょうか。
 小規模・少人数は悪くはないのですが、従来の人員配置の考え方では支援力が分散してしまい、うまくいかないのは当たり前です。
 僕のところの特定施設では、入居者29名の定員を10名+10名+9名の3フロアにユニット化し、それぞれに日中の時間帯2人と夜間帯1人の介護職員を配置して運営しています。そうすると、各ユニットに常勤6人の職員・都合18人の介護職員が必要で、人員配置基準の倍ほどになるということです(それ以外に看護師、介護支援専門員、管理者を配置しますからね。介護費用に対する特別な費用徴収はしていないです)。
 これでも「できること・できないこと」でいえば「できないこと」が圧倒的に多いのですが、どう考えてもこれ以上の人員配置は無理だということを関係する誰もが思えば、それも致し方のないことと受け止めることができるということであり、それが日本の到達点だということです。
 僕のところの到達点は、介護報酬という枠組みの中で経営者も含めて前述した「1・2・3」を共有した結果であり、そのこと抜きには実現できません。
 コメントをくださった方もそうですが、嘆く前に「1・2・3」を自分で描いてみてはどうでしょうか。自分が施設長ならこの報酬体系の中で「こういうユニット型特養をやる」という「主体的描き」です。描けたら同僚に話をしてみましょう。同僚の中に仲間を増殖させて経営者に思いのたけをぶつけてみてはどうでしょうか。案外、経営者は「その主体的積極性」を待っているかもしれませんよ。
 描けたらまたコメントに参加してくださいね。


コメント


先日、岡崎の管理者研修でお世話になった者です。
ブログにコメントを頂き、ありがとうございました!

さて、「主体的描き」について、
僕は最終的には、自分で独立して行いたいと思っていますが、
まずは当面、4月の小規模多機能ホームの開設を控えていますので、そこで経営者、上司とともに頑張ってみようと思っています。

この「主体的描き」をするためには…、
介護についての知識を知り、入居者さんの生活を知り、その方々のお互いの関係性を知り、また、支援する職員の力量を知り、
そして、人員基準、介護報酬を知り、他で既に取り組まれている創意工夫を知り、
その情報をしっかりと噛み砕いて、消化して、
ようやく可能になるものだろうな、と思っています。

これは生半可な気持ちでできるものではありませんね。

根気と情熱と使命感、そして語りあう仲間がいなければホンモノはできないと思いました。
それに比べて、批判ばかりするのは、何と簡単なことだろう、と改めて思いました。

今、僕は、4月の小規模多機能開設に向けて、描きの途中でもがいている真っ最中です。それだけに勇気を頂きました。がんばりますね。ありがとうございます!


投稿者: 榊原宏昌 | 2009年12月11日 01:28

 榊原さんへプログをお借りして…。
 ”主体的描き”ってほんと生半可なものではないですね。自分で描いたものに執着、愛、そして結果を引き受ける覚悟。私が一番大事にしてほしいのは、語り合える仲間!一人では乗り越えられないときも、仲間がいれば乗り越えられる力をもらえるときもある。
 若輩者ですが、小規模多機能を初めてもう3年。ひとつ言えることは、しんどいけど、楽しい。毎日毎日奮闘だけど、プラスもマイナスもしっかり自分に返ってくる。頑張ってください。私も小さな仲間として応援させて下さいね。


投稿者: まっちゃん | 2009年12月11日 18:35

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち97年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会代表としても活躍。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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