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和田行男の「婆さんとともに」

婆さん理解深める子育み

 僕のまわりは、僕が結婚をしてから結婚ラッシュに突入し、僕に子どもができてからというもの、出産ラッシュである。
 子どもが産まれた後輩たちには「子どもから婆さん支援を学べよ」と話しているが、子ども・子を育むことからからたくさんのことが見えてくる。

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 何度もブログで同じことを書いているかもしれないが、子どもは僕らとは同じようなことができないし、わからないことだらけである。
 たとえば「排せつ」をみると、この業界で働いている人はおそらくみんな、排せつをもよおしたらトイレに行って、そこで排せつしているはずだ。
 それが一般的な姿だと思うが、その僕も子どもの頃は、いつでも・どこでも・誰が見ていようが、垂れ流ししていたはずだ。その頃の僕は、それを間違っているとか、恥ずかしいとか思うことはなく、それを見ていた大人たちも、それが一般的な子どもの姿だと思っているから「おかしい」とは思わなかったはずだ。
 やがて大人は子どもの成長とともに、この国の大人たちの一般的な姿である、決められた場所(多くの場合はトイレ)で排せつができるように応援していく。つまり自立支援である。
 まずは自宅のトイレで排せつができるようにする。トイレはどこでも基本的には固定されているため、同じ場所にある。
 自宅という環境の中でトイレがどの場所にあるかを覚えることができて、排せつ行為の手順が身に着くと、「(1)尿意をもつ→(2)トイレに向かう・行きつける→(3)排せつ前の行為に必要な身のまわりのことができる→(4)排せつする→(5)排せつ後の行為に必要な身のまわりのことができる→(6)トイレから次の目的地に向かう」といった一連の連続する行為が自力でできるようになる。
 ところが、それはあくまでも使い慣れた環境にあるからであって、自宅以外ではそうはいかない。だから大人は「おしっこがしたくなったら言うんだよ」と子どもに告げるし、子どもも「おかあちゃん、おしっこ」と尿意があることを伝える。(1)(3)(4)(5)は自力でできるのだが、(2)ができないと決められた場所ではできないということだ。
 そこで大人は、(2)や(6)が自力でできるように応援していくことになるのだが、その時に大切な要素になるのが「(7)サイン」であり「(8)おおよその見当をつける」ということだ。
 子どもでも(7)はすぐに覚えられるが、(8)は経験が必要になってくる。つまり時間を要するのだ。
 そこで大人は経験を踏ませるように応援するが、そのときは失敗することも覚悟する。上手くいかないからといって、いつも大人がトイレまで連れて行ってやったのでは、(2)を獲得できないわけで、(2)が獲得できなければ、この国における排せつ行動を自分の力で達成できないことになる。
 膨大な時間と手間をかけてもらって、どこに行っても排せつ行動を自力でできるようになった僕は、「うんこがしたくなったら、トイレを求めて行動を起こし、トイレでうんこをする」ばかりではなく、ハイキングのように山中の情報下で同じようにうんこがしたくなったら、我慢しきれないとなると「トイレはないと判断し、トイレではなく大きな木とか茂みを求めて行動を起こし、トイレとは違う場所でもうんこをする」という行動までできるようになったのだ。
 つまり、見当さえつけられずトイレ以外の場所で排せつしていた僕は、見当をつけることができるから、まったく初めての土地でも場所でもトイレで排せつできるし、トイレ以外の場所で排せつすることができるようになったということである。
 それもこれも脳が一般的な状態にあればこそで、その脳が病によって壊され一般的な力を発揮できなくなれば、決められた場所に行きつけず、排せつという生理を優先して、そこらここらで排せつをしたとしても不思議なことではないことが、子どもをみているとわかってくるはずだ。
 さらに言えば、子どもが垂れ流すこともなく排尿や排便がなかったら、大人は「病気かもしれない」と不安に思うだろう。つまり排せつは、どこでするかよりも「排尿・排便がある」ことが最も重要なことであり、大人は子どもが垂れ流ししたとしても「出ていることが一番大切」だということを知っており、出ていることにまずは安心するのだ。
 だとしたら、婆さんがどこで排せつしてしまったとしても、まずは「出て良かった」と受け止めることが大事で、放尿だ! 問題行動だ! 周辺症状だ! なんて大騒ぎするのは、大人がいきなり大人になったと思い込んでいる愚かな大人の証である。
 子どもを見ていて婆さんとくっつけて考えるのは職業病なのかもしれないが、僕の著書『大逆転の痴呆ケア』を読んでくれた人や、子育てにとりかかりだした後輩たちから、和田の言っていることがよーくわかるようになりましたと言ってもらうことがあるが、そいつらも僕と同じ職業病にかかってしまっているのかもしれない。
 この病気が大流行することを願っているが、不謹慎?

 そうした過程を経て今の自分はあり、今の自分にいつの頃からか到達し、その到達点を今も維持できているからこそ、今でもトイレで排せつできるということだ。

追伸
 原稿を送るための通信環境が整わず、2日間も遅れてしまい、すいませんでした。東京駅から90分ほどしか離れていない距離で見通しのよい地域でも、通信環境が悪い地域があることを知りました。


コメント


 私は、幸い(?)独身で子供なし、祖父母との同居もなしです。
 若いころ、重度心身障がいと言われる方々と出会い、支援する仕事をしました。まだ子供さんから大人まで、当たり前ですが十人十色。彼や彼女が笑えば皆で大喜びし、しっこうんこが出れば胸をなでおろし、元気がなければどうしたのか心配する日々でした。
 その時、多くのお母さんが、当時の鼻たれ娘に、彼や彼女を連れて命を絶とうとしたこと、思いとどまったのも彼や彼女がいたからと話して下さいました。勝手きままに生きてきた私にとっては、毎日が驚きと、時には涙が出る経験でした。
 彼や彼女は何も悪いことはしていないし、お母さんも悪いことしていないのに、障がいと直接関係ないことでなぜこんなに生きづらいのか。五体満足で、もらった体や機能を自分で使うことがなんて素敵なことか。
 今の私のベースになっています。

 時々「あんた、かわっとる。」と言われます。また、もう亡くなった爺さんに、「お前は愛想がいい。女は愛嬌だ。が、いつまでも愛嬌だけではいかん。死ぬまで勉強し、必ず上を目指せ。」と言われました。つらい時にいつもこの爺さんが出てきます。
 今日は泣いている婆さんに、「今私は何ができる?」と声をかけたら、「一緒にお祈りして。」と言われ、一緒にお祈りしました。婆さん、そのあと私にウインク。素敵な時間をプレゼントしてくれて感謝。
 人は一人では生まれないし、死ねないし。
 いつもたくさんの人や物に支えられていると実感できるのも、この仕事のおかげです。


投稿者: まんまる | 2009年12月03日 21:34

 夜中 トイレに起き、行かれる時と行かれない時あり、行かれないとお部屋の隅 床の上で立って上手にします。下着は下げて でもパジャマの足首汚し気持ち悪いから履かずにベットに座りパンパンしてます。
 尿意はありする行為はわかるが、する場所と汚したあと、どうしたらよいかがわからない。それで着替えてもらったあと、汚れた床を私が吹いていると、あんた夜中に大変だねえ。と、(苦笑)。
 もうひとりの婆さんは、やはりトイレの場所わからず誘導、ドアを少し開け見てると、仕方わからずモゾモゾ。どちらもお布団汚さずはすばらしい!ですよ。
 私はまだうんち食べる婆さんに出会った事ないですが 下着の中にうんちしてしまい、気持ち悪いから手で拭い、手についた便拭おうとカーテンで拭い、が、もうその爺さんにはそれで済んだんでしょうね、
 汚れてるから手を洗いに行こう!下着取り替えよう!が理解できず、布団かぶり、汚れてると言っても 汚れてないと。布団はごうものなら、ぎゅっ!と握り下着下ろそうものなら、ぎゅっ!と握り、なんとかかんとかやっと納特すれば応じてくれ、きれいになると、いやあどうもありがとう!と。カーテンや布団カバー洗いやベット柵掃除、スタッフさん御苦労さまです。オムツ交換
 何すんのよー!バシッ!と手が飛んできて終ってさっぱりすれば、そういうことか!と、どうもありっがとう!の言葉。
 ほんと、こどももばあさんも誰かのてを借りないとならない
 でも、それは今出来る人もしてもらったし、してもらう日が来るんですよね。


投稿者: むらさき | 2009年12月06日 10:57

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち97年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会代表としても活躍。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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和田行男さんのブログ「婆さんとともに」をまとめた書籍が刊行されました。
タイトル:『認知症になる僕たちへ』
著者:和田行男
定価:¥1,470(税込)
発行:中央法規
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