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和田行男の「婆さんとともに」

分散の策

 春のゴールデンウィーク、秋のシルバーウィークと、大型連休のたびに話題になるのが交通混雑。交通手段は人の移動には欠かせないのだが、今年の話題はなんと言っても高速道路の無料化に伴う交通混雑だが、交通混雑が話題になるたびに思うことがある。

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 読者の皆さんが住んでいる町はどうかはわからないが、東京の平日朝の通勤電車に一度は乗ってみてほしい。僕は、経験したことのない友人には「東京名物・チョー満員電車オプショナルツアー」をすすめている。外国人にはパンフレットかなんかで「トウキョウ・チョー・満電 JAPAN」と紹介したほうがいい。東京都を中心としたいわゆる圏内に住む人の数は約3200万人らしいが、交通でいえばものすごい数が一時に動くのが通勤時間帯である。
 通勤に使われている電車でも新幹線でも、車両には「定員」というのが決められているが、通勤時間帯や○○ウィークの時には、定員をはるかに超える人々が乗り込んでいる。つまり、決め事違反を黙認して社会を回している典型があの「満員電車」なのである(エレベーターのように定員(重量)オーバーで「ブーッ」と鳴るようにしたら駅はパニックかも)。
 高速道路の渋滞も、ドライバーが運転の仕方を気をつければ解消できるという記事を読んだことがあるが、いろいろな人間が運転をする中で「気をつける」を一律に求めるのは難しいのではないか。
 そういう一人ひとりの「気持ち」とか「姿勢」とかではない交通混雑軽減方法のひとつに「分散」という方法があると思うのだが、なぜか本格的に手をつけようとしない(しているのなら、ごめんなさい)。
 たとえば、就業時間に時差を設けて分散させるという方法がある。8時~17時就業組と10時~19時就業組に分散させる方法である。また休日を、土曜日・日曜日、月曜日・火曜日、水曜日・金曜日というように分散させる方法もある。
 仮に360万人ほどいる公務員が「365日稼動」でものごとを組み立てると、人の流れはかなり分散できるのではないだろうか。
 これはすでに実施しているところもあるが、その多くは人に絡む職業で、警察や消防、病院・入居型福祉施設の24時間365日体制を筆頭に、交通関係などがある。これを役所の窓口や内勤まで広めると、かなり人の動きが分散されるのではないだろうか。しかも時差を設けるとなお分散効果は引きあがるのではないか。しかも昼食時間にも時差を設けてもらえると、飲食店前の渋滞も解消される。
 国民にとっては、8時から19時まで年中無休で役所が稼動することになり、利便性は非常に高くなるではないか(交通安全協会もそうしてほしいね)。
 もちろん分散することのデメリットも考えられるが、「分散」することによって「スムーズを産み出す」ことができれば、その価値は、少々のデメリットでは覆せないほど高いと思うのは、あまりにも素人考え過ぎるかな。
 これまで役所において、12時から13時の昼休みの窓口を開けるようになった話は聞いたことがあるが、365日体制になったという話は聞いたことがないし、テレビなどでも365日開業にするべきだという主張を聞いたことがないことを考えると、それなりの理由があるのかもしれないが、CO2削減などを本気で考えれば、交通における「分散・スムーズ」はキーワードのように思うし、それは交通に限ったことではなく「滞り」によるストレスが大きい近代社会における人間にとって、精神衛生面での効果も期待できるのではないか。
 遊園地でも海水浴場でもショッピングセンターでも「曜日偏り超混雑状態」が「年中万年混雑」くらいになると、平日の「ガラガラ」を堪能している僕にとってその意味ではマイナスということになるが、夜中まで大渋滞している高速道路や違法すし詰め電車を見ていると、人間の知恵が及んでいないのではないかと思ってしまう僕にとって、ガラガラを堪能できなくなっても「知恵が働いている社会」のほうがはるかに豊かさを感じられるようになる気がするのだ。つまり、まだまだ打てる手があるはずなのに打たないのは、人間の知恵がもったいないと思ってしまうのである。

 まったく異次元に話はとぶが、限られた職員数で決まった人数を支援する僕らの仕事でも、「分散」の手立ては「滞り」を解消させる方策となりうる。
 たとえば、便所や洗面台の前に渋滞する(させられている)車椅子の列も、カラスの七つの子の食事のような介助光景も、曜日と時間を決めて利用者をバトンしていく流れ作業的入浴方法も、支援する側に施策が足りていないのではないかと疑いをもつことからはじめて手立てにつなげられるわけで、それなりの理由をつけて肯定してしまっては解消できないということだ。

 分散させることでできなくなることもあれば、分散させることでできることもある。滞りの良さも僕らの仕事の中にはある。
 24時間365日を生きる人間生活を支えるという視点からあれこれ思考している僕にとって、交通渋滞に婆さん支援をだぶらせると、交通渋滞も宝物に思えてくるから不思議だ。

追伸
 先週の「どう応えるか」にたくさんコメントを寄せていただきました。ありがとうございます。僕自身、まだしっかりと向き合えていないので、今週は僕の思うことを書けませんでした。またの機会にさせていただきます。申し訳ないです。


コメント


 今さらですが、ピック病のことで思い出してしまうことがあって…
 ピック病の症例は少ないのか、平成8年から介護職に就いていますが、始めに5年間勤めた特養で一人出会ったきりです。
 まだ60代くらいだったと思います、女性でした。入居された時は、殆ど全介助が必要になっておられました。介護に抵抗されることもなく、それどころか、オムツ交換の時、腰を上げて協力してくださる時は、なんとも哀しくなるのでした。
 歩行はできましたが、自発的に歩き回るようなこともなく、「おとなしい入居者」でした。発語も殆どなくて、普段はフンフンと、鼻歌のような声を発しているだけ、時々歌は一緒に歌って下さいました。
 たまたま入居前を知っている職員がいて、在宅時は家を飛び出して車道に出たりして、ご家族は大変だったそうです。

 ある日、私が受診の付き添いを振り当てられて、二人で協力病院に車で出かけました。着くと、待ち時間がけっこうあり、廊下のはずれの突き当たりのコーナーで、二人で坐って童謡など歌っていました。

 マンツーマンでそんなのどかな時を過ごせるのは、特養の日常では滅多にない恵まれた時間です。私はとても気持が和み、ほっとしていました。多分彼女にとってもそうだった、と思いたい時間でした。

 ところが、受診の順番が来たら、担当医師は、彼女を抑える為に二人も他の医師を呼んだのです。
 「そんなことしなくてもこの方は大丈夫です!」と言ったのに、介護職の言葉は無視されました。

 あの時の悲しさを、「ピック病」と聞くと思い出します。


投稿者: 58歳・いち介護福祉士 | 2009年10月13日 23:52

 ピック病について あまり私の中に知識も乏しく 関わらせて頂いて来た方々にも おられず きのきいたコメントが出来なくてすみません。 じっくり勉強しなおしたいと思います。
 今日は夜勤ですが 夕方出勤と同時に この一年 ターミナルとドクターから言われながら 何度も生還され頑張って来られた方が 職員の腕の中で亡くなりました。静かな最期でした。
  職員には緊急時 慌てず 他の利用者さんの事にも配慮するよう話して来ました。 皆 時間をおしまず残業し 休みの職員も最期を送りに来てくれて 無事 送らせて頂く事が出来ました。
 身体を拭かせて頂きながら 「ありがとうございました お疲れ様でした。」と...まだ出来る事があったかもしれないけど 自己満足かもしれないけど 今は静かに眠る ご本人を 送らせて頂きたいと思います。 私事を長々とすみません。
 先日は 久しぶりにお会いでき お話しを聞けて良かったです。ありがとうございました。頑張っている和田さんに力をたくさん貰いました。
 まだまだ 勉強の日々 頑張ります。
 またお会いできるのを楽しみにしています。


投稿者: 塩田りえ子 | 2009年10月17日 01:20

 和田さん、皆さん、おはようございます。
 和田さん、前回のブログ内容で済みませんが、コメントさせてほしいです。

 偏見と差別…私は、以前、両親と差別問題でかなりやばい喧嘩をしました。差別を地球上からなくしたいと本気で思いました。それでも、両親は…私の親であり…。
 その時の事を友人と話し合い…相手ではなく自分の中にある無意識にしている差別と向き合っていこうと思いました。今も様々なことを考えていますが、答えは出ていません。
 偏見…こうだという決め付け…、私に至っても反省する事然りです。
 そして、問題視され取り上げられている認知症の○○さんという見方…、認知症は病気であり○○さんの中にある認知症なのに…認知症だからで片付けられる…。

58歳・いち介護福祉士さんへ
 お気持ち…お怒り…大変良く解ります。ピック病だからという決め付けや対応…、その人自身を見ていません…、本当におかしいと思います。もっと…その人自身を見てほしい・…。
 
 今まで我が国が起こしてきた差別事件にもつながりますが(障がいをもたれた方や様々な差別問題がひきがねになって起こっています)起こってから沢山の改善が行われてきましたが、起こった後ではなく起こる前に防げるよう…私たちの中にある意識改革が必要に思われます。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2009年10月17日 10:23

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち97年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会代表としても活躍。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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