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和田行男の「婆さんとともに」

手を焼く自分

 いらいら、イライラ。
 元来、僕は「短気のいらち」。最近、あまりその顔を見ることはなかったが、ここにきて爆発してしまった。

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 一向にすすまない求められる仕事。すすまない理由は簡単明瞭で、僕に能力と気概が欠けているからだ。そのバックには「やろう」ではなく「やらなければならない」と一歩引いたモチベーションしかないことがあるのもひとつ。
 しかもこの仕事は期日があり、残りの時間と求められる分量を考えると、自分の能力と気概のなさにめちゃくちゃ腹が立ち、この仕事は一人でしているのではなく、僕とともにすすめている者がいると思うと、申し訳ないと思いつつ前にすすめない自分にめちゃくちゃ腹が立つ。
 しかもこのブログも含めて期日の迫った仕事が他にもあり、こんな時は「何とかせなあかん」と追われている感じが自分を攻めるから、ゆとりを気持ちからなくしてしまう。
 それだけならイライラまでには至らなかったと思うが、それに輪をかけるのが「思い込み」と「ものわすれ」。
 ここというときに必要なものが「ない」のだ。
 例えば「鍵」。クルマの合鍵が必要になり探すのだが、どこにもない。ここにあると思っていた場所にないのだ。
 その車の合鍵を探しながら、「そういや」と連れ合いのクルマの合鍵も気になりだし探すのだが、それもどこにも見当たらないという、ダブル・ショック。
 腹が立つのは、どんなところに、どんなふうにしまってあるかを全く思い出せない、雲をつかむような話になっている自分の記憶だ。
 日頃婆さんのことを冷静に語っている和田行男を思い描くと、これまた自分に腹が立ちイライラする。
 またそんな時に限って郵便局や宅急便がきて「印鑑を」と玄関先まで呼び出される。
 呼び出されるとその場を離れようとするからチビが泣く。泣くチビにイライラして語気強くチビにあたる自分に嫌気がさす。こうなってくると頭の中はぐちゃぐちゃ。
 またそんな時に限って、電話であれこれ問い合わせがくる。
 その問い合わせに答えるためにパソコンを開くのだが、電波環境が悪くて開けない、そうこうしているうちに携帯電話も電波環境が悪く途切れてしまう。こうなってくると電波環境の対策で数日前からもめている通信会社を思い出し「クソー、○コ○め(怒)」とイライラが積み上がる。
 またそんな時に限ってダブルブッキングが発覚する。僕が手帳に書き忘れていた日程の上にもうひとつの日程が重なっていたことがわかり、修正するのにてんやわんや。相手に迷惑をかけたことよりも、それをしでかした自分に腹が立つ。
 またそんな時に限って、腹が減っても食うものが見当たらない。
 買い物に行ったあの時に「なんで、せっかく手にしたパンを買わへんかったんや」と自分を責め、けちってパンを買わなかった自分に腹が立つ。
 またそんな時に限ってハエが二匹も飛び回る。
 うざいからやっつけにいくと当たり前に蠅は逃げ回るが、それが「ハエにまでバカにされる自分になってしまった」と思い込み、自分に腹が立ち、冷静さを失って遮二無二やっつけにいくからハエを撃沈できず、イライラする。
 僕がイライラするからチビもちょっとしたことで泣く。
 僕が動くと泣く。ものがとれないと泣く。つまずくと泣く。大きな音がすると泣く。僕が「クソ!」って言うと泣くなど、普段では考えられないチビになってしまう。チビは自分の映り鏡だとわかっているのに、僕が原因でそうなっているチビにいらつき、チビにあたっている自分にさらにいらつく。
 気を取り直して飯の支度のために買い物に出ると、そんな時に限って事故で渋滞し一向に前に進まない。
 クルマの中で髪の毛をくしゃくしゃにしながら「もう、いやや!」って雄叫びをあげると、それにびっくりしたチビが泣きだし、チビの鳴き声が「もう、いやや、今日の父ちゃん」って聞こえ、そんな自分に嫌気がさし、自分を責めてイライラは積み上がるばかり。
 そんなこんな修正が全くきかないまま出かけることになったが、チビをクルマに乗せ家に鍵をかけようとすると、鍵がない。鍵をもって出ていないことに気づき、家の中までとりに戻ったが、部屋に入ってひと一息つくと「あれ、何しに戻ったんやったっけ」となり、部屋の中をうろうろきょろきょろするが思い出せないのだ。
 今日1日の集大成のような出来事に愕然とし、しまいには連れ合いの名前を呼んで「なんで、ここに戻ってきたかわからへんようになったぁ」ってワァワァ泣いてしまった。

 結局この日は1日中、どうにもならない、どうにもできない、和田行男に手を焼いた日でしたが、みなさんは自分に手を焼くこと、ないですか。

追伸
 総選挙は、歴史に残る結果となりました。和田個人の知人も新たに二名が与党の代議士になりました。この国にとって歴史に残る総選挙の結果といえるかどうかは、これからですが、歴史的な出来事であることは間違いないでしょう。
 これからは「どうするんですか」と相手を責めるのではなく「こうしていきましょうよ」と解決に向けて攻める主体性をもてるかどうか、国民の一人ひとりが問われることでしょう。


コメント


 あるある。わかるわかる。共感。同感。
 誰にだってある。 自分もしょっちゅう。それに加わる加齢、基本症状、人間関係や環境の変化。
 なのに持てる力を発揮し、なんとか周りに、職員に合わせていこうとする婆さん達。。。
 頭が下がると共に、少々、中々くらいのわがままなんて、なんと当たり前の事で…
 と気付かされる、和田さんの今回のブログ。
 自分の事として捉え、考えていきたいものです。

 和田さん。 ありきたりだけど、素適な出来事と、自分自身の振り返りと、メッセージ。
 ありがとう。


投稿者: ナイショ | 2009年09月02日 16:08

 和田さんと同い年のわたし、共感しながら、読みました。
 最近、つくづく思うのです。
 自分自身の能力と気力と体力
 身の丈 1日は24時間
 一番良くないのは、“忙しい”
 ホント、こころが亡びてしまいそう!
 もっと、自分自身がゆったりと生きていけないものかなぁって。
 お年寄りの皆さんに、あなたらしく、のんびり、ゆったり暮らして欲しいって、その裏方は、なぜにこんなにあわただしいのかな?


投稿者: ゆいゆい | 2009年09月03日 18:14

 僕も何年か前、和田さんと同じような気持ちを経験しました。しかも一日限りでなく、連日イライラと自己嫌悪の悪循環が…。さすがに「これが続いたら自分がもたないし、周囲にも迷惑だ」と思いました。
 そこで仕事以外の付き合いや頼まれ仕事を極力減らすことにしました。机や部屋を片付けて、本や書類や物もどんどん減らしました。スケジュールや身の回りがスカスカになったら、イライラもなくなりました。
 和田さんは売れっ子で周囲の期待も高いから、断るのは大変だろうけど、自分と家族の気持ちのゆとりを考えたら、やっぱり整理が大事だと思うよ。
 歳とともに衰える自分を考えたら「あれもこれも」は成り立たない。「あれか、これか」を選ぶ覚悟が大事だと思うのです。


投稿者: あが | 2009年09月04日 22:19

 わたしも良くそんな事があります。
 50と少し、そんな年頃ではないでしょうか。それに加えて周りの期待の大きさも、それに対する和田さんのちゃんと応えようとする心構え…大変だと思います。怪我には十分に注意してくださいね。
 それと子供は泣くのが当たり前ですが、あまり泣きすぎるとヘソが出ベソになるそうです。うちのばあちゃんがずっと昔言ってました。


投稿者: みっちゃん | 2009年09月05日 20:53

 自分の能力の限界を痛感して(人生初めて)いる時になんと世間で第1人者と言われているらしい方(済みません。情報に疎いので)が同じような単語を使っておられる事にレベルは違うにしても救われました。
 とりあえず何とかして乗り越えねば!乗りかかった船です。


投稿者: 秋号で再会! | 2009年09月06日 13:07

 
 和田さん、こんにちは。

 今回のブログ・・ほっとしたような・・ビックリした内容でした・・・。そして、人間味溢れる・・・内容でした。和田さんにもそんなことがあるんだなぁ~と思えました。

 私は、大学の通信教育とケアマネの試験と教習所の勉強と・・新しい施設での勤務と、正直・・・本当に苦しいです。でも、それでも・・・自分で選んだ道なのだからと・・・行っています。弱音は吐かないと決めていますし・・人間関係で辛いよりは、ずっとマシです。
 
 人は、自分に色々な事を求め・・それゆえに成長できるのではないでしょうか・・・?短気な人ほど・・魚釣りが上手だ聞きます。
 私は、イライラ出来る状況もなく・・自分の行いを日々反省するだけです。もちろん、今の職場に対して矛盾を抱え悩んではいます。でも、悲しみさえしますが、なぜだか・・イライラする事も出来ない状況です。不安こそありますが・・反省する事でしか、成長できないと知っているから・・反省していくのみなのかもしれません・・・。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2009年09月07日 11:09

 来週のシークレット?ライブで全部発散してください!
 楽しみにしています。


投稿者: BAT | 2009年09月07日 12:39

 初めまして。いつもNHKの介護番組で和田さんを拝見し、素晴らしい、神様のようなヘルパーさんがいるんだなあ、と感動していましたが、この日記を読んでふっと肩の力が抜けました(笑)。
 和田さんも同じ人間で良かった~。私も介護の現場に居ますが、制度の限界や人間関係の摩擦など、家に帰れば2児のチビに責められて床に突っ伏して泣きたい気分です。
 でも、そんな生活の中にも笑いあり、楽しさあり、生きてて良かったと思える瞬間があるから頑張れるのですね。和田さんも元気になりますように!


投稿者: みもも | 2009年09月09日 22:31

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち97年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会代表としても活躍。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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タイトル:『認知症になる僕たちへ』
著者:和田行男
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