利用者第一?スタッフ第一?
猛暑が続いています。ニュースでは、東北で豪雨だといいます。そういった中でも、訪問介護のスタッフはサービスに回っています。
仕事なので当然といえば当然ですが、大変な仕事です。当社でも、猛暑の中、自転車やバイクで訪問に回ってくれたスタッフに、本当に感謝です。当社に限ったことではありませんが、こうした現場のスタッフが社内的、社会的に評価されるようになってほしいです。
今から10年ほど前、私が訪問介護の責任者を行っていた時の話です。今年のように連日の猛暑で、ヘルパーの中には体調を崩したのが何人もいました。しかし、利用者へのサービスに穴を空けるわけにはいきません。
欠勤者が出る中で、どうしても調整がつかない場合は、ケアマネジャーと連携のうえ、時間の変更などで対応していました。
そんな猛暑の中、1日のサービスを終えたヘルパーが夕方、事業所に報告書を提出しに来ました。 その時、「もうこの仕事が嫌になった」とつぶやきました。
ある利用者のサービスに伺った際、お盆ということもあり、その家には親族が来ていたそうです。そこで、利用者が親族に対して「うちのお手伝いにきてくれているのよ」と言ったそうです。
親族に対してヘルパーは「訪問介護のスタッフです」と伝えると、「まあ同じようなものでしょ。買い物もお願いね」と言い、親族が必要とする物まで依頼されました。ヘルパーは「それはできません」と断ったそうです。
私はケアマネジャーと相談し、その利用者には訪問介護という仕事を理解してもらおうと、連絡をとりました。猛暑の中、利用者のために汗を流しながら自転車で向かったスタッフを思うと、その言動は寂しいものでした。
その利用者の状態は、要介護度でいえば要支援1ぐらいではないでしょうか。腰が少し悪いほかは、自分で買い物に行くことができ、旅行にも行けました。もちろん、こうした人が介護保険を利用し、快適に生活してもらうことは必要です。しかし経営者としては、利用者様第一という事業所のスタンスは当然ですが、スタッフあっての事業所です。その利用者にヘルパーの状況を話すと、「お手伝いに近いじゃない」と言われてしまいました。
私も若く、伝え方が不十分だったために、そのように言われてしまったと思いますが、その言い方はショックでした。
その後、その利用者はヘルパー事業所の変更を希望し、当社は担当を外れました。そのことを担当ヘルパーに話すと、ヘルパーからは「会社が私を大切に考えてくれることが嬉しいです。がんばります」との言葉をもらいました。利用者には申し訳ありませんでしたが、ヘルパーからの信頼は増しました。
現在、業界全体で介護職は不足している状況です。特に訪問介護を希望する職員は少ないです。原因の一つは、仕事が大変だということだけではなく、利用者とのかかわりの中で孤独になることがあるのではないかと思います。利用者第一の中で、スタッフ第一でもありたい。そのバランスをどう保てばよいのか。夏の時期になると、当時のことを思い出します。
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