清貧?→清富!
私が学生時代、施設実習に行った時の話です。その際、50歳代後半の寮母(ケアワーカー)に言われたことがあります。
「辻川くん、福祉はお金じゃないわよ。気持よ!」
15日間、毎日お昼休みにこのような話をされ、私も絶対そうだと感じました。実習が終わって、友人にも「福祉はお金じゃないんだよ。気持だよ」と言っていました。友人からは「お前すごいな。えらいよ!」と言われ、自分でもそう思い込む節があったように思います。
しかし、いざ就職してみると、その考えの甘さを実感しました。確かに、私に教えてくれた寮母は間違っていません。ご主人も無事に定年を迎え、マイホームのローンも終り、子どもは独立して家庭をもっているとのことでした。
そうした環境であれば、「福祉に対する気持ち」だけで福祉職に従事できるでしょう。しかし、20歳代、30歳代の若い世代は、家庭を築いて自己の余暇を楽しみ、親孝行していく必要があります。「気持ち」だけで仕事をしたくても、「報酬」が付いてこなければ、できません。
実習に来た若い世代に対して、自己の立場における価値観を押し付けると、その人の人生を狂わせる概念を植えつけるということを念頭に置いた発言をしなくてはいけないと思います。
利用者への対応や介護技術に長けた先輩からいわれると感化される人もいます。若い世代が将来展望を描けるような会話が大切です。「気持ち」だけの仕事で報酬が付いてこない業界で、果たして若い世代が「夢」をもてるのでしょうか。
自分の子どもに、「気持ち」だけで行っている業務で「我慢」をさせるのでしょうか。子どもから「おもちゃ買って」と言われたら、「買ってあげられるけれど、必要ないから買わない」のと「買ってあげたいけれど、買えない」というのは、結果的に同じようですが、「気持ち」が違うと思います。
理想ばかりではよくありませんが、がんばった介護職にはそれなりの「報酬」が得られる業界になっていくべきだと感じます。
清貧?→清富!です。拙書『福祉の仕事を人生に活かす』にも同エピソードを掲載していますので、機会があればご一読ください。
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