震災を通して考える、介護業界の魅力
今年最後の更新となりました。いつもお読みいただき、ありがとうございます。
早速ですが、介護業界の魅力とは何でしょうか? 魅力というと、立場やその人の状況によって異なります。介護の仕事の魅力について改めて考えてみたところ、利用者の笑顔、スキルの向上などありますが、なかでも「利他的な気持ち」をもつ人が多くいることが魅力だと感じました。
どういうことかというと、3月11日の東日本大震災の後、私のセミナーに参加したことのある人や、元クライアント、ブログの読者から体験談を聞く機会があり、そのなかで高台にある老人ホームのスタッフから聞いた話です。
津波が自分の家のあたりを飲み込む光景が見え、母親と祖母が家にいるかもしれないと心配になったそうです。気持ちとしては、仕事を抜け出して家族の安否を確認し、救出に向かいたいと感じるのではないでしょうか。
飲食業や製造業であれば、震災等の被害が出た際はお客さまが来ることは少なく、自分の身内の安否確認に向かうことができます。しかし、介護の仕事はそうはいきません。目の前には利用者がいます。
それから数日間、家族の安否を確認する余裕もないほど、施設で利用者のケアに従事したそうです。幸いにも、家族は無事だったそうです。
同じような体験をした人が多くいます。介護の仕事は時に自分の家族よりも優先し、利用者のケアを行わなくてはいけません。それが義務というのではなく、仕事の使命だからです。大変な状況を乗り越えてきた介護職がたくさんいます。どの業界でも「お客さまのため」という理念はあります。しかし、介護や医療の仕事ほど、これを実践できた業界はないのではないでしょうか。
言葉だけではなく、大きな災害時に利用者のためにと歯を食いしばりサービスにあたった介護業界の人こそ、介護の魅力だと感じました。
日本は1000年周期の地震の活動期に入っているとを提言する研究家がいます。それにどう備えていけばよいのでしょうか。東北の介護業界の人たちが実践した姿勢を模範にして、危機意識をもち、自分の住む地域で万が一そうした事態になった時にどうするか? 準備をしておくのが大切ではないでしょうか。
話は変わりますが、皆さんは大前研一先生をご存知ですか。大前先生の訳書に『ハイコンセプト~新しい事を考え出す人の時代~』(三笠書房)があります。その中の一文を紹介します。
「専門力」ではない「統合力」の時代
この、ニ、三十年ほどの間、世の中はある種の知識を持った特定の人たちのものであった。
プログラマー、弁護士、MBAなどである。
だが、これからの世界で成功を収める上でカギを握る要素は変わりつつある。
未来をリードするのは、何かを創造できる人や他人と共感できる人、物事に意義を見いだせる人である。
つまり、芸術家や発明家、デザイナー、ストーリーテラー、介護従事者、カウンセラー、そして統括的に物事を考えられる人である。
未来をリードする職種に介護従事者が入っていると記述されています。残念ながら、介護従事者全員が当てはまるわけではありません。仕事を通して「物事に意義を見出す」という意識が必要だと思います。
この利用者となぜ出会ったのか、利用者は何を訴えているのか、どのような学びにつながるのか、利用者は何を教えてくれたのかなど、仕事に意義を見出していくことで、新しい考え方が生まれるのではないでしょうか。
今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
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