おばあちゃん力
今回は、私の著書『10年後を後悔しない20の言葉』(講談社、2011年)のあとがきでも触れた内容をお伝えします。葉室頼昭さん(故人)の『神道 <はだ>で知る』(春秋社)という書籍に書かれていた話です。葉室さんは医師から神職を志し、春日大社の宮司になった人です。
詳細は省かせていただきますが、私がこの本で感銘を受けたのは、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの話でした。ネアンデルタール人は私たちとは別系統の人類で、2万数千年前に絶滅。出てくる骨の化石は、35歳以上とみられるものは皆無で、私たちに比べるとはるかに短命です。
一方、我々の祖先であるホモ・サピエンスの骨の化石は、40歳以上とみられるものが多く出土しています。特に女性の化石は高齢の傾向にありました。
生物は繁殖期を過ぎると死んでしまうのが一般的です。ですから、繁殖期を過ぎても数十年生き続けることができる私たちは、地球上の生物の中でも長寿の部類に入ります。なぜ私たちは、繁殖期が過ぎても生き続けられるのでしょうか。
その理由について葉室さんは、ホモ・サピエンスの時代に母親が娘の出産と孫の子育てを手伝っていたからではないかと分析していました。
娘に出産の経験を伝え、娘が婿の狩りの手伝いをしている間は、孫の面倒をみる。そんな役割を担っていたのではないかと推測しているのです。
それが真実であれば、種族の繁栄に対して、特に女性が長寿であることの必然性があったこともうなずけます。葉室さんは、おばあちゃんの教え方によって各地域の特色が出て、それが文化の発祥につながったのではないかとも推測していました。文化の発祥と人類の進化の鍵はおばあちゃんにあったという、斬新な理論です。
私は、高齢者が文化の発祥であり知恵の伝達者であったという、葉室さんの説を支持します。そう考えると、介護の仕事は高齢者の知恵や経験を直に教えていただける魅力的な仕事だと実感できます。
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