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辻川泰史の「介護事業所運営のコツ、教えます」

少人数での事業所運営

 今回は、少ない人員で事業所を運営するメリットとデメリットを考えてみたいと思います。
 まずメリットですが、次の事柄が考えられます。
・職員の配置が少数で運営できる
・利用者のペースに合わせた介助ができる
・実績業務の負担が少ない
・必要最低限の車両の保有台数で済む
・利用者の好みに応じたレクリエーションを行うことができる
・稼働率を上げることが容易
・給与の還元しやすい
・スタッフが独自の特色を出すことができる
・利用者の個別ニーズに対応しやすい

 それでは、デメリットは何が考えられるでしょう。
・職員が少ないため、欠勤時の対応が困難
・特定の利用者へ偏りがちになる可能性がある
・実績業務をスタッフが兼務することになる
・サービスが偏りがちになる
・スタッフの退職時の引き継ぎが膨大になる
・特定のスタッフの特色が大きくなる可能性がある
・スタッフの負担が増す
・活気に欠ける曜日が出てくる
 これらを踏まえた上で、少人数の事業所での工夫を考えてみましょう。

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申し送りの工夫
 少人数で業務を行う上で、事務的な記録や申し送りは負担が大きいものです。申し送り等を詳細にするために連絡ノートを詳細に記入し、連携を深めることができればよいですが、法律で決められた介護記録に加えて、個人ファイル等を記入することを考えると、申し送りを行うためだけに長文を記入することは、職員の負担が増すばかりです。
 そうした時には、ICレコーダーを用いた申し送りが効果的です。申し送りをする側は話すだけで済み、申し送りを受ける側も何度も聞き返すことができます。また、声でのやりとりなので理解しやすい面もあります。ただ、重要な事項はノートとICレコーダーの両方を用いることが必要です。動画を用いて実際に顔を見て申し送りをするのもよいでしょう。

事務の外部委託
 小規模事業所では、事務員を専任として雇用することは経費面で大きな負担となります。現場のスタッフの要望としては、現場業務に専念したいという希望も理解できます。しかし、固定費のかかる常勤スタッフを事務員として配置することは、現場のスタッフへの給与還元も少なくなるという悪循環につながりかねません。
 たとえば、事務専門スタッフを雇用した場合の人件費が月18万円とします。保険料や交通費などを入れると、約20万円の人件費です。この20万円という経費を賄うことが厳しい場合もあります。そこで開設当初などは、アウトソーシングすることで経費を抑えることが可能です。
 請求件数も、小規模事業所であれば30名から40名前後の利用者への請求です。1名につき1000円としても4万円前後で行うことができ、業務の確実性も増します。ただし、ある程度の稼働率を達成したら、自社内で行う体制を構築することが大切です。

別の視点をもつ
 少人数のスタッフで行うことは、連携がしやすいという強みがあります。スタッフ同士の意思疎通も行いやすいでしょう。その反面、レクリエーションやサービス、業務方法などがスタッフ任せになることも考えられます。スタッフが少ないと、ケアの方向性や考え方が一方通行になりがちなのです。
 視野が狭くなると「当たり前」に行っていることに実は問題があることがあります。そうした事態を回避するためには、別の視点が必要になります。
 たとえば、地域のケアマネジャーや利用者家族に意見を求めること。同業者同士でスタッフの交流会等を開催し、情報交換をすることも大切です。可能であれば、地域が離れた同じ規模の事業所と連携し、交流をもつことをおすすめします。相互にスタッフの見学を受け入れたり、会議を開催することで、新たな気づきが得られるでしょう。
 情報の漏洩を危惧する必要性があるので、法人同士で連携する場合はNDA(秘密保持契約)を締結することも必要です。同時に。スタッフに対して目的等を説明しておかないと、単なる雑談会や見学会になってしまいます。

一人ひとりのスタッフのスキルを上げる
 業務では各人がそれぞれの業務に専念できる環境づくりが大切です。しかし、小規模事業所では売上にも限界があり、余暇人員を抱える余裕がないのが実情です。
 そこで、一人ひとりのスタッフのスキルを上げる必要があります。業務の負担が大きくなることを望む管理者、スタッフはいません。「負担が増える」というとらえ方ではなく、行う業務の幅が広がるという認識をスタッフに感じてもらうことが必要です。そこでは、「なぜそうすべきなのか」という理由と実行する意味、スタッフへのメリットを伝えることが必要です。何回も伝えて評価をしっかりと行うことが重要です。評価は当然、給与に還元すること。そして感謝することが大切です。

スタッフに孤独を感じさせない
 10人、20人のスタッフがいれば、スタッフ同士の交流もあり、社内の関係もできて楽しいこともあります。しかし小規模の事業所はスタッフも少人数です。そうなると、孤独を感じたり孤軍奮闘していると感じることがあります。少しでもこうした不安や孤独感を緩和させる工夫が必要です。
 たとえば、定期的に面談を行ったり会食をすることも、大切なコミュニケーションの時間です。また、定期的に法人の方向性を話し、自分の考えや想い、感謝の気持ちを伝えていくことも必要です。
 先が見えないことは不安につながります。時に愚痴を言いたくなるのも人間です。そういったことも聞ける、言ってもらえる関係づくりを日頃から心がけていきましょう。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
辻川 泰史
(つじかわ やすし)
1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/
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