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辻川泰史の「介護事業所運営のコツ、教えます」

スタッフの増員の良し悪し

 介護保険事業所を運営していく上で、人件費率は大きな比重を占めます。役職や職務によっては、賃料よりもコストがかかります。人員はそれなりに揃っているけれど業務が多忙な場合、人材不足に原因を求めて人材を確保することで補おうとすると、経営は成り立たなくなります。

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 月に20万円の費用が生じる物品の購入やリースを躊躇する事業所は多いでしょう。その一方で、業務改善にそれほど尽力せずに、月に20万円かけて新たな人材を雇用し、マンパワーで補おうとする事業所は多くあります。
 しかしこれでは、その場しのぎの事業所経営・運営になってしまいます。既存スタッフも、人材が増えることで業務の負担が減ります。しかし小規模の事業所では、売上に上限があり、利益もある程度決まっています。その限られた利益の中で、少しでもスタッフに還元しなくてはなりません。人件費率が高くなると、そのスタッフへの還元が少なくなったり、できなくなることがなります。
 そうなると、給与面での待遇改善が行えないため、スタッフの不満が募り、定着率が低くなるという悪循環を招くことにもつながりかねません。

 このように、単に人材を増員するだけでは具体的な解決策にはなりません。私がコンサルティング先で少人数での運営を勧めると、現場のスタッフから下に示すような意見が多く出ます。ここでご紹介する意見は、多くの事業所で現場の意見として出ることがあるでしょう。

少人数による弊害
(1)電話の対応ができない
 どのような電話の対応ができないのか? ケアを行いながら電話に対応すると気持ちにゆとりがもてないことは理解できます。忙しく感じてしまうこともあるでしょう。しかし、電話の時間を計ってみると、長くて5分間前後です。営業等の電話などを省いて、対応が必要な電話も、1日で多くて10回程度です。その1時間のために人員を1名増加するメリットがあるかどうかを考えましょう。

(2)見学者が来た場合の対応ができない
 週に何名の見学者が来てくれるのか? 突発的な見学なのか? 見学者の対応には常勤スタッフや管理者が対応することでしょう。事前に日時を決めて来る見学者であれば、準備ができます。しかし、入浴介助や送迎などで、突発的な見学には対応できないこともあります。その場合、誰でもある程度対応・説明できる事業所の説明パンフレットや写真アルバムなどを用意しておくことで対処できるでしょう。

(3)利用者への対応が満足にできない
 例えば利用者が10名いるとします。自立度の高い人が10名いる場合や、認知症やまひなどの人が3名いる場合などは、スタッフの増員が必要になることもあります。しかし、利用者への満足の対応というのは介護業務的な部分だけではなく、サービスの充実を図ることで改善できることもあります。

(4)多忙になることで利用者に目が行き届かなくて危険
 どういったタイミングで危惧すべき危険が生じるかを社内で検討し、対処する方法を構築し、利用者へ目が届くように配慮します。

(5)スタッフが病気になった際に対応できない
 普段からの心がけが大切です。そうならないように、スタッフが健康管理の意識をもつことです。当然、体調が悪くなる時もあります。事業所によっては非常勤スタッフのシフトを固定にしている場合もあるでしょう。欠勤時も迅速に対応できるように、非常勤スタッフに固定曜日以外も対応してもらえる必要があります。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
辻川 泰史
(つじかわ やすし)
1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/
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