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辻川泰史の「介護事業所運営のコツ、教えます」

「してあげている」から「させていただいている」へ

 9月18日から11月27日まで、4回にわたって行った「介護事業リーダー研修2010」が終了しました。
 参加者の中には、介護職でなく、在宅で親の介護をされている人も参加されていました。研修最後のフィードバックの時にお話しされたことが、介護サービスを利用されている家族の想いを代表して表わしていたと思います。

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 その参加者は、11月9日に開催した「介護業界活性化フォーラム2010」に参加する際、親をショートステイに預けたそうです。その時、施設で骨折してしまい、現在は入院されているとのこと。その際、すぐに骨折に気づかず、対応が遅れたそうです。また謝罪もなく、悔しい思いをしたとのことでした。
 他の業界であれば、一度でもお客さまにこういった失態をしてしまった場合、最悪の場合は業務停止、倒産になってしまうこともありえます。これはひどい施設だと思いますが、近いサービスをされている法人も少なからず存在するのではないでしょうか。
 この業界の問題点としては、家族が高齢で判断できない、身寄りがない、施設から出されてしまったら? 受け入れてもらえなくなったら?という不安が家族にあり、事故などが表面化しないケースがあるのかもしれません。
 前述の「介護業界活性化フォーラム2010」で東京都の猪瀬副知事が言われた「利用者を待たせていても平気。福祉業界は社会主義的な一面もある」という言葉が当てはまるケースがあると思います。
 介護保険が施行され、介護はサービス業になったと認識すべきです。当たり前ですが、そう言い切れない、言いがたい、言ってしまうのが怖いと感じてしまう業界の特色があります。
 介護サービスでは、金銭のやりとりを目にすることがほとんどありません。法人の経理・事務が、料金の9割を国保連に、1割負担を利用者や家族に請求します。振込の場合も多く、実際に料金をいただいているということが見えないのです。現場では、実際に利用者から料金をいただいていることがわからない場合もあります。そういった状況では「してあげている意識」が強くなってしまうのも無理がないのかもしれません。
 ですから、自分たちの意識を変えていくことが必要です。自分の祖父母、両親、夫、妻が介護が必要になり、「○○ちゃん」などと下の名前で呼ばれて食事介護を受けている姿は見たくないと思います。人によってはニックネームで呼ばれることを望む場合もありますが、使い分ける配慮が大切です。
 「してあげている」から「させていただいている」へ。
 今の利用者は戦争を経験された人などが多く、忍耐強い世代だと思います。私たちのなかには、サービス業という認識、呼び方に抵抗がある人もいるでしょう。しかし、10年後はどうでしょうか。介護サービスの利用者の世代は変わります。利用者家族の世代も変わります。サービスを利用する権利意識は強くなり、利用者として、顧客としての意識が高まり、変わってきます。
 このこと自体は、業界としてありがたいことです。介護業界の活性化のためには、利用者の声、要望が必至です。
 「こんなサービスは利用したくない」「もっとこういったサービスが必要だ」
 そうした声が上がってくることが必要です。そのニーズに応じられるような取り組みを今から準備しておきましょう。
 介護職として他業界に学ぶこと、他業界から取り入れることを考えるのも、業界の活性化には必要だと感じます。


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プロフィール
辻川 泰史
(つじかわ やすし)
1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/
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