介護サービスの効率化
職員の募集面接では、「学ばせていただきたい」「勉強させていただきたい」という求職者がとても多くいます。
これらは一見すると謙虚で向上意欲のあるように見えますが、経営者の視点で考えてみると……。
勉強熱心で向上意欲のある人は、どの会社でも必要です。弊社でも必要です。そこで、
「状態にもよりますが、特別な医療的処置の必要がない人に訪問介護を一人で行けるようになるためには、どれほどの期間の同行が必要でしょうか?」
と質問します。すると大体「6、7回」という答えが返ってきます。その理由を尋ねると、
「利用者様のために失礼がないようにするためです」
辻川――6、7回同行すれば、失礼がなくなるのですか? 2回では難しいでしょうか。
「2回では正確に覚えられないと思います。利用者様にとって失礼になると思います」
辻川――では、1回で行けるヘルパーとあなたの違いは何ですか? 資格は同じ介護福祉士ですが。
「経験の差だと思います」
辻川――わかりました。それでは、3回同行したあと、4回目に同行予定の管理者が急遽体調不良で同行できない場合は、一人で行っていただかなくてはいけません。失礼にあたるからキャンセルしなくてはいけませんか?
「そのときは一人で行きます」
この人はとても一生懸命だと思います。その希望を叶えたい気持ちはどの管理者にもあるでしょう。しかし、何か違和感を感じる時があるのです。「自己の自信のなさ」「自分本位」が感じられるのです。
逆に、何度も同行することが利用者に失礼になることもあります。利用者を自己の勉強のための経験にしてはいけないと思います。皆さんも、勉強のための題材にしている場合はありませんか。自分や自分の家族が勉強の材料にされたら、私は嫌です。もちろん、サービスの内容、介護度、身体状況にかかわらず、利用者の状況によっては何度も同行が必要で大切な場合もあります。
同時に、経費を考えてみてください。
たとえば身体介護が1時間で約4000円とします。社員の給与が月額21万円、賞与年間60万円だと、年収は312万円になります。
職員に支払うのはこの312万円ですが、保険、退職金積み立てを含むと、360万円前後になります。これは、日給だと1万5000円、時給では約1875円です。職員2人だと3750円です。
4000円-3750円=250円
これが単純に250円の利益です。これでは利益とはいえません。生活援助では1時間約2000円です。事務経費、光熱費などを考慮すると赤字です。そうなると、月給を下げて賞与をカットするしかありません。
事業そのものの継続性が危なくなり、事業の衰退=利用者へのサービスの低下にもつながります。これはデイサービス等でも同様です。
介護報酬は一律です。決められた中で行うことが必要なのです。
それでは、介護報酬を上げることが重要なのでしょうか。私は違うと思います。
国は介護業界だけに税金を投入するわけではありません。介護業界に投入した資金の影響は他に出ます。介護保険料も当然上がります。業務の効率化を考えることが大切です。
皆さんも、洗濯機などを購入して設置してもらうために、業者に来てもらった経験があると思います。その時、何人もの人に来てもらいたいですか? できれば少人数で早く済ませてほしい、自宅に他人が入ることには少なからず緊張しますよね。
低賃金を嘆く前に、現在の業務の効率を考え、無駄を省く工夫をしていきましょう。自分で今日は何件訪問介護に入ったのか考えれば、自分の売上がわかります。デイサービスではさらにわかりやすいです。
なかには「私はお金で福祉をしているんじゃない」という人もいるでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。
生活していくためにお金は必要です。福祉業界でも、一人ひとりがコスト意識、業務の効率化に意識を向けることで、よい方向に向かうのではないでしょうか。
自分が考えても無駄!
そう思うことが無駄です。
利用者のことを考えるように、自分の所属している組織のことを考えてみましょう。困難ケースの利用者を憎みますか? どうにかして受け入れてもらえるように考えますよね。それでも難しい場合は、アプローチの方法を変えますよね。
同じように、自分の視点を変えていくことが大切です。
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