「福島」から日本のこれからを考える
今週は、打ち合わせや取材、新刊の原稿執筆のために、東京にいることが多い高室です。
普段は、東京で参加したいタイムリーな研修会があっても、当方が在京していないために参加できないことが多いのですが、昨夜はNPO法人「構想日本」が月1回開いているJ.Iフォーラムに参加することができました。テーマは、「福島から日本を考えよう~『将来を見据えた復興』は他人ごとではない~」というものでした。
顔ぶれは、福島県飯館村から菅野典雄村長、みずほ総合研究所の岡田豊さん、南相馬市でバリアフリーシアターを主宰する武藤琴美さんの3人です。
岡田さんは、北海道奥尻町の震災から復興、そして現在の姿を通して、防潮堤や箱モノをやたら作ることでない産業復興の在り方を、パワポを使って話されました。私も奥尻町には3回行っているので、とても実感をもって聞くことができました。
今回、特に圧巻だったのが菅野典雄村長の話です。
菅野さんとは30年前にお会いしています。ある農業雑誌の企画で、ユニークな酪農家紹介ということで、菅野さんを取材したことがありました。その後、50歳で村長に当選した後に偶然お会いし、そしてまた今回となります。
3.11の時、国は飯館村全村避難を求めましたが、それを頑として聞き入れず、「生き残るためにここを動かない」と押し通しました。さまざまな非難がありましたが、数カ月後、避難した隣市の人々で失意のうちに亡くなる方が続出し、菅野村長の英断の適切さが証明されました。
菅野村長の印象的な言葉を紹介します。
「成長だけが生き残る道ではないことが明らかになってきています。福島原発事故は、何十倍も重い被害です。これは人災です。風のいたずらで放射能に汚された土地に私たちは住んでいます。心が煮えくり返る思いです」
「岩手・宮城の津波は大変な被害です。私の知り合いも家族を亡くされました。しかし天災は、皆頑張ろうと心は結束します。しかし、この人災では村民の心は結束しません。心が分断されるばかりです」
この後、補償金などの優劣が、どれほど村民の心と人間関係を壊しているかを話されました。
「私が村長になった時に、飯館村のキャッチフレーズを考えようとなりました。当時、流行っていたスローライフにしようか、と話すと、村民から『ただでさえ役所は仕事が遅いのに、まだ遅くすんのか?』と言われたのでやめました(笑)。考えた末に、『までぃらいふ』にしました。漢字では、こう書きます。両手・もろ手で支えるという意味で、ていねいに物事を行うことをいいます」
この後、いかに「おたがいさま」の土壌が大切か、そして、これからの地方は、ないものを中央から持ってくるのでなく「あるもの探し・あるもの活かし」をしなければいけないと強調されました。
さらに、「言葉にも世界遺産がある」という話の流れで…
「スペインには、多く欲しがる人は貧しい人、という言葉があります。そしてオランダには、年寄りが犯した罪のために、その子どもたちが罰を受ける、という諺があります」
まさに今の大量生産・大量消費・大量廃棄する現代人への警告であり、3.11福島原発事故の50年先~100年先の子どもたちに強いてしまった「過ち」への贖罪を話されているのだと思いました。
福島から「日本」を考えるとき、熱しやすく冷めやすい、未だ成長神話に酔いしれている、権利ばかりを主張して義務を果たさない、日本的なるものが浮かび上がってきた2時間でした。
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【研修会場・写メ日記】
石川県野々市市 地域ケア会議活動推進事業
民生委員・福祉推進員合同研修「地域包括ケアシステムと民生員の役割」
石川県野々市市 地域ケア会議活動推進事業
ケアマネジャー&介護サービス事業所対象「支援困難ケース対応と地域ケア会議」研修
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